国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)は旧厚生省によって1962年に創設された国立がん研究センター中央病院に次ぎ、第2の国立のがん専門医療機関として設立された病院です。千葉県・埼玉県・茨城県などの近隣の方が安心してがん医療を受けられる体制を万全に整えると共に、日本全国の患者さんに最先端医療を提供しています。今回は、国立がん研究センター東病院 病院長の大津敦先生に病院の沿革と現在実施している最先端医療についてお話しいただきました。
1962年に国立高度専門医療研究センターの6法人(いわゆるナショナルセンター、現在の国立研究開発法人)の中で初めて開設された病院が国立がん研究センター中央病院(東京都中央区築地)です。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)はがん患者さんの将来的な増加を見込んで、旧国立松戸療養所および旧国立柏病院が統廃合され、国立がん研究センター中央病院に続く日本で2番目のがん専門医療機関として1992年に開院しました。
【国立がん研究センター東病院が提供する診療体制】
・ 先端的放射線・内視鏡診断
・ 機能温存・低侵襲外科治療
・ 薬物療法・新薬開発と個別化治療
・ 高精度放射線治療・陽子線治療
・ 医療連携とサポーティブケア
病床数は425、年間あたりの新しい患者さんの数は約8,000人です。千葉県・埼玉県・茨城県の県境に位置しているのでこの3県からいらっしゃる方が多く、全体の7割程度を占めますが、残りの3割は全国から患者さんが来院されます。また、2017年時点では日本最先端の陽子線治療を導入していることもあり、海外(特に中国)から訪れる患者さんの数も増えております。
国立がん研究センター東病院は、世界最先端の医療を提供する施設を目指しています。国内の患者さんを受け入れられるキャパシティを保ちながら、中国に限らず諸外国からの患者さんにとっても魅力的な施設を創り上げることが目標です。
国立がん研究センター東病院は、築地にある国立がん研究センター中央病院に不足している診療部門を補うことが設計の目的とされており、開発当初はそこではできなかった難治がんの治療を積極的に行う施設という位置づけがなされていました。このため、日本初となる陽子線治療機器の導入が実現したり、緩和ケア病棟が国内で初めて作られたりするなど、設立当初から時代の最先端の技術を駆使したがん医療に励んできました。なお、緩和ケア病棟は2017年現在では多くの病院で設置されるようになっています。
1962年に設置された国立がん研究センター中央病院は本邦のがん医療の拠点として悪性腫瘍治療を長らく牽引してきました。そのため、1992年に千葉県柏市という都心からやや離れた地域に当院が作られることについて「そもそもがんセンターが2施設も必要なのか?」という議論は後を絶ちませんでした。そこで、両院の機能分担をより明確にするために、国立がん研究センター東病院では主に開発領域、すなわち「より新しいもの」を手掛けることを最大の使命としました
国立がん研究センター東病院では、2017年5月に次世代外科・内視鏡治療開発センターを開設し、手術室や内視鏡室などの拡充とともに医療機器開発センターを設置して医療機器の開発にも本格的に着手しました。ここでは企業の方々や大学等の工学の専門家が常駐し、現場に密着しながら患者さんにとって最良の医療機器を作っています。
こうした研究開発を進めていくことで、日本各地に新しい医療技術や機器を広めることを目的としています。
たとえば、内視鏡機器に関しては東病院が中心となって開発したNarrow band imaging(狭帯域光観察)は頭頸部・食道表在がんを発見可能にした画期的な検査器具です。さらに、腹腔鏡(腹部を大きく切開せず切開孔からカメラを挿入して手術を行う)の手術数は全国的にも群を抜いており、当院の専門性の高い内視鏡外科技術認定医の数は全国一となっています。
最先端医療を提供していく中で、国立がん研究センター東病院には陽子線治療だけでなく諸外国から手術を希望される患者さんも集います。手術手技という意味でも当院には圧倒的な技術に長けた外科医が多数勤務しております。
また、2017年現在、100〜200の遺伝子を自動測定できるパネルが開発され、これまでひとつひとつ手で遺伝子を診断していた即製の仕組みが、技術進歩によって1回に100以上の遺伝子診断が可能になってきました。現在はそれに合わせて、オーダーメイドの治療を提供していく時代となってきており。これがまさにプレジション・メディシン(患者さん一人一人の病態や体調に最も適した薬を選択・提供すること)です。
当院が中心となってスクラムジャパンという全国的な組織を構築し、プレシジョン・メディシンの日本での普及に大きく貢献し、患者さんが最も納得いただける形での医療を実現するように努めています。スクラムジャパンでのプレジション・メディシンの実施数は世界トップレベルといえます。
当院にはサポーティブケアセンターが設置され、患者さんは初診時からあらゆる面でサポートチームとかかわりを持ち、身体的ながん治療のみならず精神的な不安や、入浴、排せつ、運動、家族のことなど、日常生活的なことをサポートしてもらうことができます。また、当院で経験を積まれた方が日本全国でサポーディブケアをやってくれています。
国立がん研究センター東病院のある柏地区は、在宅での看取りにとても協力的な施設が多いことも大きな特徴です。そのため、当院は在宅医療の診療所や在宅緩和ケア提供施設と連携し、患者さんをスムーズに引き継ぎできるように努めています。
当院にはレジデント制度があり、全国から優秀な若い医師が集まる環境も整っています(実際に多彩な大学の出身者が揃っています)。たとえば、内視鏡外科技術認定医を取得するためには実績を持つ指導医のもとで学ばなければなりません。国立がん研究センター東病院には多くのは内視鏡外科技術認定医、指導医が所属しています。高い志を持つ若い医師が日々鍛錬しています。また、内科系医師や薬剤師では世界最先端の薬物療法や新しい薬剤の開発なども学ぶことができ、がん薬物療法専門医・薬剤師も毎年多数の方が合格しています。
国立がん研究センター東病院では臨床・研究・教育、さらには開発も含めてすべてにおいてトップレベルを目指すことができる環境が整っています。また、当院は新しいがん医療を作っていく病院ですので、若手医師・スタッフの発想をとても大切にしています。若い先生方には国立がん研究センター東病院で一緒にがん医療の未来を作っていければと考えています。
国立がん研究センター東病院 病院長
国立がん研究センター東病院 病院長
1983年に東北大学医学部を卒業。1992年に博士号を取得、以降、1997年に米国MDアンダーソンキャンサーセンターへ留学した期間を除き、国立がん研究センター東病院の消化管腫瘍内科医師として勤務。2012年より、早期・探索臨床研究センター(現:先端医療開発センター)センター長として、がん新薬のFirst-in-Human(FIH)試験、医師主導治験とTR研究を行う体制整備を進めてきた。また、2015-2017年には日本医療研究開発機構(AMED)の科学技術顧問としても活躍、2016年より現職である、国立がん研究センター東病院長に就任した。これまでに、NEJM, the Lancet, Journal of Clinical Oncology, Lancet Oncology, the Journal of the National Cancer Institute.など300編以上の英文論文を発表。また、日本臨床腫瘍学会理事(兼 国際委員会委員長)・日本癌学会理事等の学会活動に加え、PMDA、厚生労働省、文部科学省の各委員会専門委員や評価委員としても活躍している。
大津 敦 先生の所属医療機関
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。