新潟県新潟市に立地する新潟大学医歯学総合病院は、県内唯一の特定機能病院・医育機関病院として多くの取り組みを地域の病院や行政とともに行っています。その取り組みのなかでも、特に若手医師の育成や同大学の歯科との連携に尽力し、新潟県の医療提供に貢献しています。
新潟大学医歯学総合病院 病院長 冨田善彦先生に、同院の取り組みや特色についてお話を伺いました。
新潟大学医歯学総合病院は、県内唯一の大学病院です。新潟大学は多くの学部学科を有しており、医学部や歯学部もそのひとつです。当院では、地域のみならず県内のみなさまの医療に尽力しており、また、若手医師の育成も大学病院に課せられた重要な使命だと考え注力しています。
現在、地域で医療を完結させることが、全国的にも重要な課題と位置づけられています。多くの関連医療機関と連携しており、新潟県は広大な面積を有しているにもかかわらず、他県に先駆け、地域完結型の医療が実現できていると考えています。そのため、急性期の治療が終わった患者さんが、安心して地域に戻れる体制が構築されており、これは県として誇らしいことだと考えています。
当院は県内唯一の特定機能病院であり医育機関である病院として、新潟県の医療の最後の砦であると認識しています。その役割を果たすには、各診療科が高い水準での医療提供が行えるのはもちろんのこと、そのレベルを維持し、ブラッシュアップしていく必要があります。その実現のため、当院では下記の取り組みを実施しています。
新潟県全体で多くの優れた若手医師を育成するために「良医育成新潟県コンソーシアム」を設立しました。
新潟県の臨床研修をどうしたらよりよくできるのか、初期研修医が充実していると思える研修はどのようなものなのかを課題に考え、それを解決する場として、2007年に県内全ての基幹型臨床研修病院と当院で同コンソーシアムを立ち上げました。新潟県の行政も尽力してくださり、県全体で医師の育成体制に力を入れることができるようになったと思います。
2015年6月に南魚沼市に開院した魚沼基幹病院に当院の一部門である魚沼地域医療教育センターを設置しました。このセンターは新潟大学医学部の学生が、より地域に近い場所で実習を行えるようにと考え設置されました。同センターは、患者さんの症状を総合的に診療する総合診療の実習の場として使用しています。全国的に高齢化が進むなかで、総合的に診療を行うことができる医師は地域にとって重要な存在です。
同センターには特任教員を配置し、魚沼基幹病院の医師と協力して学生の実習を担っています。また、学生は実習中センター内に併設してある宿泊施設で宿泊しながら実習を受けることができます。これは、地域に近いところで実際の在宅医療や訪問診療を体験してもらうという狙いがあります。
私は、総合診療医は大学病院だけでは育成できないと考えています。大学として、医学の基礎知識を教育することはできても、大学内では地域医療の現場を教えることが難しいからです。
そのため、臨床実習で地域医療を体験することで、学生が総合診療医の将来像をみることができると考えています。総合診療医の育成には、地域の病院や行政が協力していかなくてはならないといえるでしょう。
がんの治療や、多くの検査で使用される放射線医学は日々進化しています。放射線治療の際に精密な計測・計画を行うことで、放射線を照射したい部分だけに照射することが可能になります。医学物理士は、その計測などを行うことができます。当院では、幅広い放射線治療を行うために、医学物理士の養成が必要だと考え、医学物理士レジデントコースを設置しました。
2014年8月に医師だけでなく、医療に携わる医療人を育成するための新潟医療人育成センターを新潟県の支援のもと、当院のある本学旭町キャンパスに設置しました。
同センターではセミナー室や模擬手術室、シミュレーション室などを整備しています。そのなかでもシミュレーション室は、多数の高機能シミュレータを導入し、学生や研修医が楽しく学べる空間になっていると思います。たとえば、血管内治療トレーニングシミュレータは、リアルな血管造影画像をみながら血管内治療の手技を学ぶことができます。
実際に血管造影を行うためにはX線が必要になりますが、このシミュレータではX線を使用しなくても血管造影や血管内治療のシミュレーションができます。
必要とされるシミュレータを各診療科に確認し、実際に診療に役立つ技術を学べるものを取り入れました。
新潟県は新潟大学医歯学総合病院をドクターヘリ基地病院として、2012年にドクターヘリの運行を開始しました。新潟県の地形はたてに長く、また佐渡ヶ島を有していることから、地域によっては三次救急(重症)の患者さんを救命救急センターへ受け入れるのに時間がかかるという課題がありました。
県内の医療を守るためには、この現状を何とかしなくてはなりません。そこで、当院が基地病院となりドクターヘリを導入することで、県内の救急患者さんの対応を迅速に行うことができるようになったと考えています。
新潟大学では、全国でも珍しく医学部棟と歯学部棟が隣接しています。当院は、病院名にもあるように医歯学が連携することで総合的な診療を目指しています。
当院の外来診療棟の4階フロアはすべて歯科が診療にあたっており、病院の同じ建物に歯科があることで、院内の医科と歯科が患者さんの口腔ケアなどで連携を取ることができています。
また、入院前から退院後まで患者さんをサポートする患者総合サポートセンターにも歯科医師を配置しました。サポートセンターは、以前まで各診療科が行っていた入院予定の患者さんへの説明やオリエンテーションなどを一括して担い、入院治療が円滑に進むためにさまざまなサポートを行っています。
同サポートセンターでは、看護師や医療ソーシャルワーカー、事務職員が常駐しているほか、医師や歯科医師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士なども出向き、患者さんに必要なサポートを行っています。
当院は、新潟県の医療の「最後の砦」として、地域の医療ニーズに対応するという重要な使命があります。そのためには、どの診療科でも東京などの都会と同じ質の医療を提供していく必要があります。新潟県で医療が受けられないからと、県外に向かうことは患者さんやご家族にとっても負担になってしまいます。どの地域の方でも、新潟県内で医療が完結するように、当院ではさまざまなサポートを行い、新潟県民のみなさまへの医療提供に尽力してまいります。
また、大学病院として若手医師を育成していくことも当院の使命のひとつだと考えています。そのために、学生や研修医が新潟県で医師としてのキャリアを積んでいきたいと思えるような研修プログラムを県内の病院だけでなく、行政とも協力して構築していきたいと考えています。
大学病院として若手医師の育成に尽力するとともに、新潟県の最後の砦として最善の医療を担えるように、職員一同が一丸となって取り組んでまいります。
新潟大学医歯学総合病院 泌尿器科 副学長・病院長・教授
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