山梨県笛吹市において地域の急性期医療を担う笛吹中央病院は、地域の救急患者さんの受け入れを積極的に行っています。一次救急から二次救急、ドクターヘリの受け入れなど、幅広く対応しています。同院で行っている救急患者さんの受け入れや、診療、将来の若手医療従事者の教育などについて、笛吹中央病院 院長 尾崎由基男先生にお話を伺いました。
笛吹中央病院は、前身である市立峡東病院を引き継ぎ約60年間に渡り地域医療の提供に尽力してきました。その後、建物の老朽化に伴い上尾中央医科グループ支援のもと新病院として現在の笛吹市石和町に新築移転しました。
当院は、2002年に「地域に信頼される病院」を理念に掲げ、新たなスタートを切りました。地域の方々に今まで以上に信頼されるため、地域医療の提供に尽力するほか、職員の技術向上のために研修や交流会などさまざまな取り組みを行ってきました。
現在は笛吹市や地域の急性期医療を担うために救急患者さんの受け入れを強化しているほか、山梨県の土地柄を考慮した医療ニーズに対応すべく体制強化も図っています。
たとえば、山梨県は山岳が多く登山をしていた方の遭難事故などがみられます。山岳地帯で救急車の要請が困難な場合にはドクターヘリで搬送されてくる患者さんも多くいます。そのため、当院でも救急車の受け入れだけでなく、ドクターヘリからの受け入れ体制も整備されています。また、地域への医療提供も重要なため、地域の救急患者さんの受け入れも積極的に行っています。以下の項目では、当院の急性期医療の提供についてお話しいたします。
笛吹中央病院は、地域において急性期医療の提供に尽力しています。特に救急患者さんの受け入れに関しては、輪番制救急指定病院に指定され、同じく指定されている施設と協力して行っています。救急における輪番制とは、いくつかの病院で救急患者さんを受け入れる曜日を決め、対応することです。その一週間のなかで決められた曜日に、担当が決まっている病院へ救急隊から受け入れ要請が入るシステムです。当該施設は、要請があれば必ず救急患者さんを受け入れ、対応にあたります。
当院は笛吹市の救急輪番を月曜日から日曜日まで、ほとんどの曜日を担当しています。また、非当番であっても当番施設では対応が難しいと判断された患者については、当院へ搬送していただくこともあり、病病連携も密に行っています。
笛吹中央病院では、毎週月曜日から木曜日の夜間に地域の開業医の先生が常駐し、一次救急の患者さんの対応をしています。地域の先生方が一次救急の対応をしているときには、看護師や事務スタッフも協力し、対応にあたります。また、一次救急の処置では対応が難しい場合でも当院の医師が控えていますので、二次救急として迅速に処置することができます。さらに、医局員がほかの患者さんの対応などで救急患者さんの対応ができないときには、医局長や副院長、院長である私も救急患者さんの治療を積極的に行います。立場にとらわれず、救急患者さんを受け入れ、処置することで地域の二次救急を守ります。
また、当院でも対応が難しい三次救急の患者さんは可能な限り処置をしてから三次救急の受け入れをしている病院へ搬送しています。
このように、地域の病院や先生方と協力し笛吹市の救急患者さんの受け入れに尽力しています。救急患者さんの受け入れでは、互いに協力し合って対応していくことがとても重要だと感じています。
外科・消化器外科では、内視鏡を用いた腹腔鏡下手術を積極的に行っています。内視鏡を用いた手術は傷口が小さく、患者さんへの侵襲が低いため早期社会復帰が期待されています。また、当院では鼠径(そけい)ヘルニア外来を開設しており、鼠径ヘルニアに対する診療にも力をいれています。鼠径ヘルニア外来を担当している医師と山梨大学医学部とのタイアップで若手医師へのスキルアップを図る機会を設けることが決まっています。
当院では毎年大規模災害を想定した災害訓練を行っています。日本赤十字社や山梨県の職員なども見学に来ています。
災害訓練では、スタッフの半数が参加しトリアージ*1訓練などを行います。また、被災された患者さん役をやったり、なかには赤ちゃんを亡くしたお母さんの役など、実際に考えられるであろう患者さんの役をしたりするスタッフもいました。特に、赤ちゃんやお子さんを亡くしたお母さんへの精神的なケアはとても重要になると考えています。こうした訓練を定期的に実施することで、実際に大規模災害に直面しても、当院でしっかりと対応していくことが可能になるでしょう。
また、当院ではDMAT(ディーマット)*2を2隊編成しています。実際に2014年に発生した御嶽山噴火ではDMAT隊が現地へ出動しました。。
1トリアージ……大事故や災害が発生した際に治療が優先して必要な方を見極める
2DMAT……災害派遣医療チーム
院内の働き方改革を実施したことで、ライフスタイルの変化に対応した働き方を提示できるようになったと考えています。たとえば、入職後に結婚し、妊娠・出産などのライフスタイルの変化があった際には時短勤務などで対応しています。
現在の看護部長が尽力し、市内の中学生や高校生に向けた講座を開催するなど、将来の地域医療を担う方々へ向けた取り組みを行っています。医療の道に進むか悩んでいる学生に対して、実際の医療現場の大変さややりがいを知ってもらう機会になっています。
また、山梨大学医学部の学生には院内見学を毎年2名受け入れる里親制度を行っています。診療や病棟での患者さんとの接し方などを見てもらい、卒業後の研修に備えてほしいと思います。
当院が所属する上尾中央医科グループでは、グループ全体で研修会を設けるなどスタッフのスキル向上にも注力しています。研修会は医師や看護師だけでなく、リハビリテーションスタッフや検査技師など多職種がさまざまな研修を受けています。
それぞれの部門で、目標や進捗状況を把握できる仕組みを取り入れ、目標や向かうべき方向性がきちんと明示されており、スタッフが自分の成長を実感できるように工夫がされています。
笛吹中央病院は、地域に愛される病院を目指しています。そのためには、地域のニーズをくみ取り、応えられるようにしていかなくてはなりません。地域の方々の声が聞こえるように受付などに意見箱を設置しました。患者さんやそのご家族一人ひとりの要望や、意見をくみ取り病院づくりに反映させていくためです。地域のみなさまに愛される病院を目指すうえではそういった取り組みは重要になると考えています。
また、総合受付には相談員やボランティアの方を配置していますので、院内で困ったことがあったら気軽に聞いてほしいと思います。地域医療に貢献できるように、スタッフが一丸となって尽力してまいります。
笛吹中央病院 病院長
尾﨑 由基男 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。