インタビュー

歌舞伎症候群の経過と生活上のサポート

歌舞伎症候群の経過と生活上のサポート
大橋 博文 先生

埼玉県立小児医療センター 遺伝科 科長

大橋 博文 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年07月31日です。

歌舞伎症候群は、発達の遅れを特徴とする指定難病のひとつです。病院と連携して定期的な健康診断を受ける、支援制度や交流の機会を利用するなど、お子さんの成長に応じてしっかりとサポートしていくことが大切です。

今回は、歌舞伎症候群の経過と生活上のサポートについて、埼玉県立小児医療センター 大橋博文先生にお伺いしました。

歌舞伎症候群の患者さんの多くは、元気に成人期を過ごされています。平均寿命などのデータについてはまだ報告がなく、長期的にみた経過については不明ですが、少なくとも歌舞伎症候群の患者さんが短命ということはありません。

歌舞伎症候群のお子さんは、ほとんどの方が歩いたり話したりすることができるようになります。歩き始める時期は生後15か月~30か月の範囲です。周りのお子さんよりも少し成長が遅いと感じる場合でも、平均して生後20か月頃には歩き始めることができます。また、単語が出始める時期は生後10か月~30か月の範囲で、平均すると生後21か月頃です。

コミュニケーションについては、流暢な会話をすることは難しいという方が多くみられますが、言いたいことは相手に伝えられるようになってきます。

埼玉県立小児医療センターで基準としている通院頻度は、年齢により異なります。生まれてから1歳になるまでは毎月1回の通院を基本としています。1歳からは3か月ごと、3歳からは半年ごと、学校に行くようになったら1年に1回の通院が基本です。

お子さんの変調や病気に早く気付くためには、経過を継続的にみることが大事です。今のところ特に心配な合併症がなくても、定期的な健診を小児科等で受けましょう。たとえば、身長や体重の成長の記録を継続的につけていく(成長曲線といいます)ことで、肥満・甲状腺機能異常思春期早発症などの合併症を早期に発見しやすくなります。

甲状腺機能異常…甲状腺ホルモンの分泌が乱れて多彩な症状を引き起こす病気。

思春期早発症…通常よりも早い段階で思春期が始まってしまう病気。

保育園や幼稚園への入園、学校に通うこと、就労はもちろん可能です。就学にあたっては、お子さんの知的発達に応じた学校を選択することが大切です。就労に関しては、特別支援学校の高等部での実習などを通して、本人の適正にあった職場を考えていくことが大切です。

就労を含めた成人期の生活においては、福祉医療や社会保障の制度の狭間という課題があります。歌舞伎症候群を持つ方のなかには、知的障害があまり目立たない(軽度である)方もいます。そこで、重度の知的障害があるわけではないために支援は受けられないが、一般就労も難しい状態となる場合があるからです。今後は、適切な就労の受け入れが社会に広がることが期待されます。

学校の先生や役所の職員などの関係者に対してお子さんの病気を伝えるときは、支援に役立たせることが目的となります。そのために、まずはお子さん本人の状態を理解してもらうことが大切です。

お話しされるときは、具体的に注意してもらいたい合併症や、発達の遅れがどれくらいなのか、どういう風に気を付けてほしいのかといったことを中心に伝えましょう。また、お子さんの様子をよくみてもらい、実際の状態を把握してもらうという気持ちでお話しされるとよいでしょう。

お子さんの状態の背景として「歌舞伎症候群」という病名を伝えることも大事です。しかし、この病気を知らない方は多く、病名を伝えるだけではお子さんの実際の状態に注目してもらいにくくなる恐れがあります。そこで、実際の状態を把握してもらったあとで補助的に病名を伝えたり、信頼できるWEBサイトの情報などを活用して正確に理解していただいたりするとよいでしょう。

埼玉県立小児医療センターでは、先天異常症候群(生まれつき複数の臓器に異常を認める病気)をもつお子さんとご家族に集まっていただく取り組みを実施しています。基本的には毎月2つの病気を対象に、講義形式で情報提供を行ったり、座談会形式で情報交換会や交流会を行ったりしています。年間の予定については、埼玉県立小児医療センターのWEBサイトにて掲載しています。

先に述べたように、歌舞伎症候群では健康管理の考え方が重要です。それに加えて、トータルケアとして支援を利用していくとよいでしょう。特に、以下の2つについて連携することが大切です。

  • 療育…発達を促すトレーニングやケア。
  • 社会福祉資源…民間、公的な保険やサービス組織など。

相談窓口としては、

  • 保健所・保健センター
  • 児童相談所
  • 市町村担当課・福祉事務所
  • 教育委員会
  • 障害者就労・生活支援センター・社会福祉協議会(成年後見サポートセンター)

などがあります。まずは、通院している医療機関の相談室(医療ソーシャルワーカー)に相談してみるとよいでしょう。

大橋先生

歌舞伎症候群などの先天異常症候群をもつお子さんを育てていくなかで、健常な部分がある通常のお子さんとしての捉え方を大事にしていきましょう。

病気の合併症をリストで見ると、「こんなにたくさんの合併症がある」と思い、お子さんのすべてが病気であるかのように感じられるかもしれません。しかし、合併症は必ず起こるものではなく、歌舞伎症候群のお子さんには健常な部分が多くあります。健常な部分を見忘れないようにすることが大切です。

歌舞伎症候群のように希少疾患をもつお子さんとご家族は、情報が少ないことによる不安や、同じ病気をもつ家族と知り合うことのできない孤独などを感じている状況があるかと思います。そこで、埼玉県立小児医療センターでは、情報提供や交流会を行っています。

同センターに通院している方を対象としているので、参加を希望される方はまずは遺伝科の初診を受診してください。また、おかかりの病院から紹介受診していただければ、その場合も参加可能です。別の病院にかかっていて参加を希望される方は、かかりつけの医師にご相談ください。

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  • 埼玉県立小児医療センター 遺伝科 科長

    大橋 博文 先生

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