院長インタビュー

徳島県南部の医療を支え続ける徳島県立海部病院

徳島県南部の医療を支え続ける徳島県立海部病院
坂東 弘康 先生

徳島県立海部病院 院長

坂東 弘康 先生

この記事の最終更新は2018年07月10日です。

徳島県立海部(かいふ)病院は「県民に支えられた病院として県民医療の最後の砦となる」という基本理念のもと活躍する、急性期医療、救命救急医療、へき地医療を手がける医療機関として、徳島県南部地域に欠かせない存在です。2017年5月には新病院への移転が完了しました。

病院が地域に提供する医療、総合診療科の医師を育成するための取り組みなどについて、病院長の坂東弘康先生にお話を伺いました。

病院外観(徳島県立海部病院よりご提供)

常勤医師が中心となり、病気単体でなく患者さんを全人的に診る総合診療を実施しています。関連病院や周辺地域の医療機関とも連携しており、患者さんの症状や病気などを考慮して、糖尿病外来、腎臓専門外来、リウマチ外来、神経内科などの院内専門外来受診をご案内させていただくこともあります。

徳島県立海部病院よりご提供

県から徳島大学病院への寄附講座が開設されたことにより、地域脳神経外科診療部として2011年11月より診療を再開しました。

脳血管内に血栓と呼ばれる血の塊が詰まって発症する脳梗塞は、発症後一定時間内であれば治療方法の選択肢が多く、後遺症発生率や重症度も低く抑えることが可能です。当院では、脳神経外科疾患を急に発症した患者さんを24時間365日受け入れて治療する体制を整備しています。外科治療や集学的治療が必要な場合には、近隣の医療機関をご紹介しています。

ほかにも、高齢化の進行に伴い増加傾向にある認知症を早期発見するため認知症専門外来を開設、「最近、もの忘れをしやすくなった」「さっき聞いたことを何度も繰り返す」といった症状の原因も診療します。

当院は、海部郡(当院の所在地)を含めた徳島県南部と高知県東部の二次救急医療を支える病院として、救急車を積極的に受け入れています。

2017年に開設した新病院の屋上には、ドクターヘリの離発着場所となるヘリポートを設置して、病院遠隔地やへき地の患者さんを受け入れ早期に治療を開始できるような体制も強化しました。

徳島県立海部病院よりご提供

地域にお住まいの患者さんが持つ「住み慣れた自宅で安心して生活したい」という願いを叶えるため、2009年から訪問診療と訪問看護を実施しています。医師や看護師だけでなく、理学療法士や医療ソーシャルワーカーが患者さんのもとを訪問して、患者さんの生活を医療面からサポートしています。

また当院は、地域包括ケアシステムの一環を担う病院として最長60日間の入院が可能な地域包括ケア病床を10床有しています。これは、入院中の患者さんが時間をかけて退院準備をしていただくための病床で、歩行や階段昇降、排泄といった日常生活に欠かせない動作のリハビリテーションを行います。

病院外観(徳島県立海部病院よりご提供)

当院のある徳島県南部地域は海に接しているエリアが多いため、地震や津波など自然災害発生時を想定した災害医療体制の構築も重要課題のひとつです。南海トラフ巨大地震による津波被害を想定して、徳島県立海部病院では西へ約500m離れた高台に、新病棟を建設しました。

新病院は鉄筋コンクリート造6階建ての免震構造で、太陽光発電設備とヘリポートを屋上に設置しました。併設している立体駐車場の屋上にも災害時用のヘリポートを設置することで、救急医療体制の強化、災害時の負傷者や物資輸送のためのルートを確保しています。被災された患者さんを受け入れ診療する災害病棟や災害時ICUの機能も充実しており、災害時でも十分な診療機能を発揮可能な「先端災害医療拠点」としての機能を有しています。

当院では、地域のみなさんと私たち医療機関との関係づくりを進めてきました。

「地域医療を守る会」では、地域にお住まいの有志の方に中心となっていただき、医師確保や採用、働きやすい環境をつくるための意見交換をつうじて地域医療を盛り上げています。

また当院のOB・OGによって結成された「ボランティアさくらの会」には、環境整備活動、玄関ホールでの受付や案内などをお願いしており、当院を受診してくださった患者さんやご家族に喜んでいただけるような環境づくりを進めています。

診療科にとらわれず患者さんを全人的に診療できる総合診療科の医師育成が、急務とされています。

徳島県立海部病院は、2012年より総合診療科を標榜しており、救急医療も手がける当院は臨床研修病院(協力型)であり、2008年から徳島大学と提携して地域医療実習を実施、毎年100名以上の医学生を受け入れています。新病院には研修施設や宿泊施設を有する「地域医療研究センター」も併設、当院を研修先として選択された医学生や若手医師を手厚くサポートしています。

ほかにも、日本プライマリ・ケア連合学会による認定を受けた「南阿波総合医・家庭医養成プログラム」も展開しています。これは、当院が中心となって運営しているプログラムで、日常生活で直面しやすい健康問題に対する診療スキル習得を目的としています。

私たち徳島県立海部病院は、総合診療科を有していることに加え、急性期医療から回復期、慢性期、在宅医療など異なる性質の医療を実践している病院です。また呼吸器、呼吸器内視鏡、緩和ケア、感染症、それぞれの基幹型研修病院にも指定されております。さらに内科、整形外科の研修関連病院として研修教育にも病院を挙げて取り組んでいるため、より臨床に即した知識と技術を体得できる環境が整っています。

私たち徳島県立海部病院は、救急車の受け入れなどを行う救命救急医療、各診療科による患者さんと正面から向き合う専門診療、ご自宅で療養される方を支えるための訪問診療や訪問看護をつうじて、みなさんの安心・安全を医療面からサポートします。

今後も、地域に寄り添い信頼される病院として、そしてみなさんの命と健康を守るため、気持ちも新たに取り組んでまいります。

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