院長インタビュー

患者さんのニーズをくみ取り、即行動につなげる病院経営-佐藤病院の考える病院のあり方とは

患者さんのニーズをくみ取り、即行動につなげる病院経営-佐藤病院の考える病院のあり方とは
河合 泰博 先生

佐藤病院 院長

河合 泰博 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年10月31日です。

社会医療法人 美杉会 佐藤病院は、1979年に大阪府枚方市に10床の有床診療所として開設されました。開院以来、地域住民の方々のニーズに応える形で徐々に規模を拡大し、現在は120床の病床数を有するまでとなりました。同法人グループには2か所の病院や透析施設、福祉施設などさまざまな機能を備えています。

そんな同院の取り組みや理想とする病院像とはどのようなものであるか、院長である河合泰博先生にお話を伺いました。

当院は、29の診療科と最新の設備をそろえ、社会医療法人美杉会の中心的な病院として高度な医療を提供しています。

高齢化が進む地域のなかで、住民の方々のニーズは多岐にわたります。それに応えるべく、在宅医療や訪問看護、リハビリテーション、各種福祉施設を展開し、配食サービスも行う、非常に充実したサービス体制を整えています。

当院は救急搬送を可能な限り断らない方針です。救急搬送数は、年間約2,000件にのぼり、枚方市全体の約10%を占めます。当院で受け入れが困難な場合は、同グループ病院の男山病院に搬送を行います。また、男山病院が救急搬送の受け入れが困難な際には、当院が搬送を受け入れています。

もし救急を断るような状況があれば、その症例について会議で報告し、職員全員で原因を考えています。当院の診療能力を超える治療が必要な場合は、他院をご案内することも、もちろんあります。しかし、基本的には地域の患者さんは、地域で治療するという姿勢です。 

当院は大阪府がん診療拠点病院に指定されており、各診療科でレベルの高いがん治療を提供しています。

腹腔鏡や胸腔鏡は積極的に取り入れており、鏡視下率は80%以上です。虫垂や胆のう、胃や大腸、食道、肝臓の治療も鏡視下で行っており、術後の回復がはやいのがメリットです。治療成績も良いため患者さんからも信頼されています。

呼吸器系は、胸腔鏡を使った手術の先駆けでもある医師が在籍しています。患者さんからの認知度も上がり、受診数も増えました。

前立腺がんの治療を行う専門医チームは非常にレベルが高く、3Dカメラシステムを使って精度の高い縫合が可能であるのが強みです。傷が少なく、術後の尿漏れも発生しづらいという結果も出ています。

乳がんの治療は、整容性にこだわって行っています。乳房は、腫瘍を切除すると形が崩れてしまうため、細心の注意を払い、縫合や切除も含めて手術計画を立てています。

手術以外の治療についても、外来で化学療法や放射線治療が可能な設備を整えています。特に放射線治療については、夜間診療も行っていることが特徴です。化学療法に関しましても、午後からも治療を行えるため、お勤めの患者さんも治療できます。

当院を含む美杉会グループには、さまざまな医療施設や福祉施設があります。これらはすべて、患者さんのニーズに対応する形で生まれてきました。

在宅医療や訪問リハビリテーションは患者さんの希望の声のもと、この地域では非常に早い時期の、1990年から行なっています。老健施設の運営や配食サービスも、始めたきっかけは患者さんの声でした。また、2000年には透析クリニックを開設しました。今では5か所に透析施設を設けており、患者さんは300名以上にのぼります。

開院当初、当院は急性期の診療を行っていました。しかし、慢性期の患者さんはすぐに自宅療養に移ることが難しく、それに対応するための病床もつくりました。そのほかにも、経営が厳しくなった病院の経営を引き継いで慢性期の患者さんに対応するなど、地域の方の医療をさまざまな側面から守っています。

当院は、患者さんの視点で診療を行うことをモットーとしています。患者さんのライフステージに合わせたさまざまな施設が法人内にあるため、その時々に応じた治療環境・療養環境をスムーズに選択することが可能です。

当院の会議は、始業前に行われます。日中に行うと、出席できないスタッフも多いため、朝のうちに顔合わせと業務連絡、症例発表など、情報共有をしています。

この会議には、幹部クラスの職員が出席するため、決めるべきことをその場で即決できます。決定事項はそのまま各部署に伝えるため、情報共有も迅速にできます。

こういったスピード感があるところに、「いま、すぐに」という当院の理念が生きています。

当院では、使い勝手のよい病院をスタッフと患者さんみんなでつくっています。その取り組みのひとつが月に1回行われるモニター会で、地域の患者さん8名ほどにお越しいただいて実施しています。この目的は、法人の幹部がさまざまな話題を提供したり、患者さんからのご意見を伺ったりすることです。投書なども、もちろん受け付けており、朝の会議で検討しています。

当院では、地域連携の職員を早期から配置しています。そのため、大規模な病院だけでなく近隣の開業医の先生とも密に連携が取れる体制が整っています。

たとえば、近隣の開業医の先生からCT検査の依頼を受け、当院の医師がコメントをつけて、地域連携の職員が結果を届けるというシステムもあります。
また、ICTという枚方市のネットワークに加入していて、契約した他医療施設は当院の電子カルテの情報を閲覧できるようになっています。

そのほか、定期的に他院を訪問したり、当院の地域医療懇親会にお越しいただいたりという取り組みも行っています。地域医療懇親会では、紹介していただいた患者さんの症例紹介や報告、治験などの情報提供を行っています。

当院では地域開業医の先生からご紹介してもらった患者さんには、また紹介元の病院に通っていただけるようにしています。また、当院に通院している患者さんを診察してもらうこともあります。患者さんにとって必要であるのならば当院をいつでも頼ってもらいたい、という気持ちで地域の医療機関と連携をしています。

当院では医師をはじめとしたスタッフが働きやすいよう、さまざまな工夫をしています。診察室には早い段階からクラークを配置し、医師の業務負担を減らしてきました。子育て世代の方が働きやすい環境も、もちろん整えています。育児中で短時間勤務をしている女性職員もおりますし、病児保育ができる院内保育所も利用可能です。

研修や学会発表も積極的に行えるよう、病院としても予算をとって補助しています。看護師の方の認定看護師資格取得も勧めており、待遇面での援助などを行っています。

当院の課題としては、若手医師への指導教育制度が挙げられます。

これまでは、ある程度の知識やスキルを持った臨床経験豊富な医師に来てもらい、その力量を発揮してもらっていました。しかし今後は、教育的な観点も必要ではないかと考えています。

現在、当院に研修医はおりません。しかし、大阪における外科医の専門医研修プログラムである「大阪スペシャルミックス」に当院も参入しています。そのプログラムのなかで、当院でも後期研修や専門医研修を行う予定です。

医療保険・介護保険のシステムを担う法人は、地域の機能のひとつです。当院は、地域のなかにしっかり根付いた病院でありたいと思っています。

病気が発生したら、最先端の方法で素早く治療し、後遺症や障害が残る心配があれば、法人内の必要な施設で対応するという体制を整えてまいります。

地域の方々が、もっとも安らげる場所で過ごせるようにサポートできる病院でありたいと思っています。

河合泰博先生

患者さんはご高齢になるほど、複数の疾患をあわせもつことが多くなります。そのような状況に対応するためには、専門性を持つと同時に幅広く診療ができる能力が必要です。そういった能力をぜひ身につけてほしいです。

実際にさまざまな経験を重ね、わからないところは教わり、最終的には自分のなかで深い技術や知識につなげていってほしいと考えています。

当院は、地域のみなさまの体調に変化があれば、いつでも診察いたします。高度な医療が提供できる体制も整えているので、いつでも安心してお越しいただきたいと思っています。

もちろん、病気以外のことに対応する窓口もご用意しております。法人全体で医療福祉を担う役割を担っていると考えています。
当院は患者さんがその人の人生を生きていくうえで、何が必要かということを考えながら対応していくことをモットーとしています。

可能な限り早く、患者さんの苦痛を取り除くために、早期対応を基本とした全人的な医療を提供してまいります。当院でお力になれることがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
 

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