院長インタビュー

地域の総合的な医療を担うJCHO札幌北辰病院

地域の総合的な医療を担うJCHO札幌北辰病院
髙橋 昌宏 先生

独立行政法人地域医療機能推進機構 札幌北辰病院 院長

髙橋 昌宏 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年12月07日です。

JCHO札幌北辰病院は、関場不二彦氏が1893年10月に開設した「関場医院」を始祖としています。その後、政府への移管や現在地への移転などの変遷を経て、2014年4月より、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)札幌北辰病院として再スタートを切りました。

JCHO札幌北辰病院の取り組みについて、院長である髙橋昌宏先生にお話しいただきました。

JCHO札幌北辰病院 全景

かつて当院は札幌市の中心部に位置する病院として長く地域の方々に親しまれていましたが、1990年6月、建物の老朽化などに伴い、現在地である副都心の新札幌へ移転しました。当院の創立者である関場不二彦氏をはじめ、近年では前任の佐々木文章先生や、故秦温信先生らが当院の院長を務めてこられました。

なかでも秦先生は、北海道大学第一外科の准教授を担われた方で、創立者の関場不二彦氏の実績を詳細にまとめた書籍を出版するなど、関場氏が北海道の医療界にもたらした功績を熱心に研究されていました。当院に赴任しその書籍を読了した際は、関場氏が北海道で成し得たことに感銘を受け、またその流れを組む病院を運営していることを誇りに思われていた秦先生の想いに自分も応えていかなければならないと意思を固めました。

外科腹腔鏡下手術の様子

当院は地域医療を支える病院として22の診療科を有しています(2018年12月時点)。厚別区は札幌市内でも特に高齢化が進んでいる地域ですので、高齢者に多い糖尿病心疾患・眼科疾患・泌尿器疾患など複数疾患への対応が求められます。そのような中にあって各科は相互に連携しながら複数疾患の治療にあたります。総合的な医療を提供できることが当院の強みのひとつだと思っています。

近年、総合医が活躍する場が増えておりますが、JCHOでは機構全体の取り組みとして総合医の育成を行っております。当院では院内標榜として総合診療科を設置し、現診療部長である若林医師が赴任してからは、救急の受入体制の強化や、総合医の増員、訪問診療の開始などに取り組み、総合診療科に力を注いでいます。

当院の外科には、日本肝胆膵外科学会の高度技能指導医や、日本内視鏡外科学会の技術認定医が在籍しています。札幌市内には消化器系の疾患に強みをもつ病院が多いのですが、当院でも症例数を年々重ねており、経験を積んだ術者による医療を提供しております。

当院では、2006年10月に「地域医療支援病院」に承認されたことをはじめ、各種認定・指定を受け、よりよい医療の提供に努めています。私も院長に就任して早速、北海道がん診療連携指定病院の承認に向けて取り組んできました。その結果、2018年4月より指定を受けることができました。指定を受けることで当院がどのような診療を行っているのかを、根拠をもって患者さんにお示しできると考えています。

JCHO札幌北辰病院 ロビー

当院の医師は、北海道大学と札幌医科大学の医局から派遣されてきていますが、病院にとって医師の採用は喫緊の課題であると言えます。地域の方々に充実した医療を提供するため、特に総合医の方に来ていただきたいと考えております。

また、若い医師に充実した教育を行い、地域で活躍できる優秀な医師を輩出することも当院の使命と捉えておりますので、臨床研修医の受入や学生教育にも力を入れています。

医療従事者のモチベーション維持のためには、知的好奇心を刺激するような活動が適していると考え、当院の職員へは学会参加を推奨しております。当院の医師が発表を行う学会では、参加した看護師や若い医師が一所懸命に聴取する様子が見られます。また、発表者は抄録の作成や資料収集などの準備をしっかりと行い、次世代にも同等の取り組みを促せるような流れを継続していくことが重要だと考えています。

先ほども申し上げたように、厚別区は高齢化が著しい地域です。当院の患者さんも高齢の方が多く、その中には認知症を患っている方もいらっしゃいます。私が専門とする外科の診療では、がんの手術が必要なことを認知症の患者さんへ説明しても、うまく伝えられないという問題があります。自分が健康な時に「がんになったら手術してほしい」、「がんが再発したら抗がん剤は投与しなくてよい」といった意思表示をご家族等にしておくことが大切ではないでしょうか。

認知症の高齢者の介護をしている方や看護師は、認知症による暴言・暴力、毎日の排泄介助などのため、肉体的にも精神的にも疲弊し、追い詰められてしまうことがあります。私は、認知症の治療にはベストはなく、どうすればベターな医療ができるのかと考えています。難しいことですが、答えは出ないけれども常に考え続けること、日々のカンファレンスやご家族とお会いしたときなどに話し合うことを心がけています。

私が外科の医師になった頃は開腹手術が基本でした。現在は内視鏡手術が普及し、モニターを通じて手術の様子が共有できるようになりましたが、当時は術者が目を離した隙に術野を覗き込んで解剖の勉強をしていました。一時たりとも休む暇はなく、時間を無駄にしたくないという思いがありました。

内視鏡手術の普及により、解剖が理解しやすくなったとはいえ、最初はひたすらに手術を見て覚えたり、一つの事例をとことん勉強したりすることは重要です。担当の患者さん一人ひとりを集中して診療し、その経験が積み重なっていけば、ひとつの病気のことしか知らなかった状態から、次第に総論的なことも分かるようになってくると思います。

私は外科医として自分の持つ知識や技術の100%を患者さんに提供することは当然のことだと思います。しかし、精一杯自分の技量を尽くしても治すことができない患者さんもいらっしゃいます。その時に初めて、患者さんと一対一の、人としての付き合いが始まるのではないかと思います。40年外科医をやってきましたが、患者さんとしっかり対峙できたかは正直なところわかりません。只、若い時に一生懸命に医学の知識を深め、手術の技量を磨くことは必ずや将来、役に立ってくれると確信しています。

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