院長インタビュー

肩の力を抜いて来院できる病院にするために―耳鼻咽喉科麻生北見病院がたどり着いた答え

肩の力を抜いて来院できる病院にするために―耳鼻咽喉科麻生北見病院がたどり着いた答え
平塚 仁志 先生

社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生病院 法人医局統括顧問、社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生北見病院 元院長

平塚 仁志 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年01月15日です。

北海道北見市にある耳鼻咽喉科麻生北見病院は、札幌にある耳鼻咽喉科麻生病院が提供する医療を道内の他地域にも届けたいという思いが原動力となって、1997年6月に開院しました。

以来、耳鼻咽喉科と1999年4月に開設した歯科口腔外領域の2本柱により、風邪など日常的な不調から手術などの対応が必要な患者さんまで幅広く対応できる「お医者さん」と「歯医者さん」がいる病院として、北見市だけでなく周辺地域の住民からも広く親しまれています。

同院が開院するまでの経緯、診療体制、病院づくりで心がけていること、目指す将来像について、病院長の平塚仁志先生にお話を伺いました。

病院外観(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)
病院外観(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)

かつて、北見市と周辺地域には耳鼻咽喉科診療を手がける医療機関が少なく、患者さんは診療を受けるため待合室で長時間待たされたり、ときに旭川や札幌などへ移動したりするのが当たり前だった時代がありました。

北見市や周辺地域を含めたオホーツク地域の医療体制を支える拠点を作ろうという機運が高まり、札幌にある耳鼻咽喉科麻生病院の成長が軌道に乗り始めたことも後押しとなって、当院は1997年6月に耳鼻咽喉科診療を手がける病院としてオープンしました。

北見がそうだったように、僻地などでは受けられる医療の選択肢が制限されてしまうことがあります。

新病院を開設するからには、地域に必要とされる医療を提供して医療格差の是正に貢献したいと考えました。そのためには全職員が一丸となって医療に取り組まなければなりません。開院にあたり当院では「札幌と変わらない質の医療を」という目標を立てて、職員全員で病院を盛り上げていこうと約束を交わしました。

この一言は、当時診療に明け暮れていた職員の心を支えてくれただけでなく、今でも全ての職員の心に息づいていると感じています。

カンファランス風景(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)
カンファランス風景(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)

当院では、複数名の専門性のそれぞれ異なる医師が多角的な視点で患者さんを診療するグループ診療システムを導入しています。このシステムは、たとえばめまい難聴のように原因が複数考えられる症状を診る際の誤診防止のほか、患者さんの状態に合わせて担当医の交代をしやすいなどのメリットがあるとされています。

また札幌の耳鼻咽喉科麻生病院に所属する医師が応援ドクターというかたちをとって、当院で診療を行うことも多いです。

カンファランス風景(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)
カンファランス風景(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)

耳鼻咽喉科が扱う鼻・耳・喉と歯科口腔外科が扱う歯や口腔内は、深く関係し合っています。そのため、耳鼻咽喉科領域の病気かもしれないと思っていたものが実は口腔内のトラブルに起因するものだった、口腔内の治療を進めたら鼻・耳・喉の症状が改善された、というケースもよく見られます。

特に1999年4月より歯科口腔外科診療を開始したことにより頭頸部全体を診療可能な体制が整ったため、診療の幅が広がったと感じています。

「病院は病気になったら行くところ」というイメージが根付いて久しいです。特に地方になるほど病院に行くこと自体が大変になるため、その傾向が強くなると感じています。

従来からのイメージを刷新するため、2015年の病院リニューアルを機に「病気を抱えていなくても、ちょっとしたときに気軽に立ち寄れる」、よい意味で病院らしくない空間づくりを進めました。

アートホスピタル

アートインホスピタルとは、病院を利用する全ての方に向けて癒やしや安らぎを届けることをメインコンセプトにしたアート展示です。海外では、アートが精神に与える影響力を認めており、医療現場に積極的に導入していることを知ったのがきっかけであり、病院でアートを観る非日常体験を提供してもよいのではないかと考えて、アートインホスピタルを進めました。

プロのコーディネーター指導のもと、院内のいたるところが絵画や人形、ドールハウス風のミニチュアなど、さまざまな作品で彩られています。特に、無機質になりがちな手術室の入り口は森林をイメージしたデザインにして、手術に臨む前の緊張を和らげるようにしました。

子供のための工夫
検査機器に取り付けた人形(耳鼻咽喉科麻生北見病院よりご提供)

子どもの目の届くところにキャラクターグッズやクッションを置いたり、明るく優しく接したりなど、一見普通のことを丁寧に積み上げていくことで、医療機関特有の無機質な雰囲気が苦手な子どもでも、楽しく過ごせるような外来診察室づくりをしました。

平塚先生

地域に必要とされる医療を提供するために誕生して、地域のためにより開かれた病院づくりを進めてきた当院ですが、これから解決しなければならない課題もあります。なかでも若手医師の採用と彼等への技術継承は、特に重要なものの1つといえるでしょう。

臨床研修体制などが変化したこともあり、若手医師の多くは大病院や都会での研修を希望するようになりました。もちろん、そうした環境の中で切磋琢磨し合うのも十分な刺激となります。しかし、地方だから症例が全く集まらないということはなく、むしろ医療機関の数が限られているため、若手でもあらゆることに挑戦できる環境が整っていることが多いです。

そのため若手医師に当院のことをご紹介するときには、たくさんの症例が経験できることに加えて、先輩医師からのノウハウを学びやすいため、医師として一回りも二回りも大きく成長できる環境が整っていることをお伝えしています。

仕事中は診療で忙しい分オフはしっかりリフレッシュしてもらえるよう、院内やグループ全体でさまざまなイベントを行っています。

たとえば当院では、栄養科の職員と一緒に食事を作って終業後に会議室でビュッフェ方式の懇親会や、北見市が焼肉の街として有名なことに引っ掛けて玄関で厳寒焼き肉大会を開催したりしています。私が、料理が趣味ということもあるのですが、お腹いっぱい食べることで「また明日からがんばろう」と思ってもらうほか、食事をつうじたコミュニケーションでお互いのことを知るきっかけづくりの場としても役立ててもらっています。

患者さんも職員も大切にすることが、地域に愛される病院づくりの秘訣だと考えています。

医療の力で地域の皆さんを笑顔にする、そして地域の人にも職員にも愛され親しまれる病院でありつづけるため、全職員で知恵を出しあっていきたいと考えています。

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  • 社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生病院 法人医局統括顧問、社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生北見病院 元院長

    平塚 仁志 先生

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