夜間や休日などに子どもが発熱したとき、救急を受診するべきか、自宅で様子をみるべきか迷ったことのある親御さんは多いのではないでしょうか。生後3か月以上の子どもの場合、熱を出していても元気があれば自宅で様子をみても問題ありません。引き続き記事2では、自宅で子どもの様子をみるときの注意点について説明します。横須賀市立うわまち病院副管理者・小児医療センター長の宮本朋幸先生に、自宅で子どもをみるときの観察のポイント、体温調節、食事、薬の飲ませ方などをご解説いただきました。
自宅で子どもの様子をみるときは、体温の推移ではなく、全身状態をこまめに観察することが大事です。具体的には、以下の点に注意して経過を観察してください。
体温上昇中は悪寒を伴うので、子どもは寒さを訴えることが多いです。子どもが寒がっているときは、衣服や毛布などを追加して保温し、子どもがなるべく寒さを感じないように調節します。体温が上がり切ったときには薄着にさせ、熱を発散させましょう。高熱をきたしているときに厚着をさせたままだと、うつ熱(体の熱の放散が妨げられて体内にこもることで体温上昇をきたした状態)に至る可能性があります。
子どもが寒そうな場合と暑そうな場合に応じて適宜衣服と外気温を調節し、本人が過ごしやすい環境をつくってあげることが大切です。
入浴で体の清潔を保つことは大切です。特に夏場など、汗を大量にかく時期であれば、汗ばんだ体をきれいにしてあげることを推奨します。
ただし、長時間の入浴は体力を激しく消耗するので、発熱時の入浴は軽いシャワーや清拭程度にしましょう。入浴すると、体温が大きく変動するので、体が一気に冷えてしまわないように注意が必要です。
通常の発熱の場合、食事に制限はありません。食欲のないときに無理に食べさせる必要はありませんが、食欲がある場合は、本人が食べられる量を与えます。子どもが食べたいというものを食べさせても構いませんし、ほかの家族と同じ食事を与えても構いません。
胃腸炎を発症している場合は、医師の指示に従いましょう。
薬は、子どもを抱き抱えた状態、または子どもが上体を起こした状態で服用させます。
粉薬は、下図のようにあらかじめ水で練っておき、甘い食べ物などと混ぜて与えると、子どもが飲みやすくなります。
薬の調整を行う場合は、作り置きはせず、1回分ごとに新しく作ります。
子どもが薬を飲み込んでからすぐに吐き出してしまった場合は、同量をもう一度飲ませます。30分~1時間たった後に吐いた場合は、薬はほとんど体内に吸収されていることが多いので、もう一度飲ませる必要はありません。
市販薬や常用薬など、ほかの薬を併用したい、または服用している場合は、事前に医師に相談してください。
解熱剤は、体温のセットポイントを下げる効果がありますが、病気そのものを治す力はありません。しかし、高熱によって体がつらい、食欲がない、寝つきが悪いなどの場合には、熱による苦痛を軽減するために解熱剤の使用が可能です。熱が高いときに解熱剤を服用して、体温が1℃下がるだけでも、つらさが和らぐことがあります。
医師によって解熱剤の使用方針は異なるので、かかりつけ医に相談して、解熱剤の使い方について話し合うことが大切です。
2015年に日本小児神経学会が公開した熱性けいれん診療ガイドラインによれば、解熱剤の服用と熱性けいれん*の発症リスクの関係性を表す明確な根拠はみつかっていません(2019年5月時点)。解熱剤を使用することで熱性けいれんを起こしやすくなるという根拠はなく、反対に、解熱剤を使用しなければ熱性けいれんを起こさないということもありません。解熱剤の使用の際に一度かかりつけ医に相談したうえで、子どもの容体に応じて適宜使うことを推奨します。
熱性けいれんを起こしたときの対処法については、「記事3」をご覧ください。
*熱性けいれん……通常38℃以上の発熱時に起きるけいれん発作。生後6か月から5歳までに起こることが多い。
発熱時、抗生剤を処方されることがあります。抗生剤は細菌に作用して、細菌を殺したり増殖を抑えたりするはたらきがあります。一般的な「風邪」のほとんどはウイルス感染によって起こり、抗生剤が本当に必要なケースは少ないとされています。発熱の一部のみが、抗生剤が必要になる細菌感染症が原因であるとされています。医師は、一人ひとりの子どもの状態をみて、抗生剤が必要かどうかを都度判断します。医師から抗生剤を処方された場合は、医師の指示に従って正しく服用しましょう。
小児科医はよく、内服薬を4日分処方します。これは、この期間服用しても症状が軽減しない場合には、薬がなくなる4日目に、病院を再受診していただきたいということでもあります。薬の服用前後で子どもの容体の変化をきちんとみるためにも、同じ病院をもう一度受診することが望ましいです。
なお、処方された抗生剤を飲み切らずに保存しておき、次に熱が出たときに備えることは推奨しません。
横須賀市立うわまち病院 副管理者・小児医療センター長
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