成人先天性心疾患とは、先天性心疾患の患者さんが手術などの治療を行い、成人に成長した場合を指します。現在は、先天性心疾患の患者さんの約90%が成人を迎えており、その患者数は年間約9,000人です。
今回は、横須賀市立うわまち病院小児医療センター長の宮本朋幸先生に、成人先天性心疾患の種類や後天性心疾患との違い、妊娠・出産は可能なのか、成人になっても病院での管理は必要なのかといった疑問点などについてお話を伺います。
成人先天性心疾患とは、先天性心疾患を抱えた患者さんが15歳、または18歳を迎え成人になることをいいます。
先天性心疾患とは、生まれたときから、心臓や血管のかたちが正常とは異なる疾患の総称です。
以下は、先天性心疾患の種類の一部です。
上記のなかで、最も患者数が多い疾患は、心室中隔欠損症です。心室中隔欠損症とは、右心室と左心室を隔てる筋肉の壁に穴が開いている疾患です。
また、先天性心疾患のなかでチアノーゼが出現する疾患で1番多いものは、Fallot(ファロー)四徴症です。Fallot四徴症とは、以下の4つの特徴を持っています。
Fallot(ファロー)四徴症
後天性心疾患とは、生まれた後に心臓に異常が現れる疾患です。一方、先天性心疾患とは、生まれたときから心臓に異常がある疾患です。小児の後天性心疾患では、心筋炎*や川崎病*になる冠状動脈後遺症などの種類があります。
心筋炎……心臓の筋肉に炎症が起こる疾患。
川崎病…ウイルスや細菌感染を防ぐために免疫反応が起こり、全身の血管に炎症がでる疾患。冠状動脈の血管壁がこの反応により壊され、もろくなった箇所が瘤(こぶ)となってしまった場合を川崎病による冠状動脈後遺症という。
先天性心疾患の発症頻度は年間約1万人です。そして、医療技術の進歩などにより、1万人のなかの約90%以上の患者さんが成人を迎えることが可能となっています。そのため、年間約9,000人以上の成人先天性心疾患の患者さんが増加していくと予想されています。
成人先天性心疾患の患者さんが、糖尿病などの疾患を患った場合は、成人先天性心疾患との合併となります。症状は一般の生活習慣病の患者さんと、さほど違いはありません。しかし、先天性心疾患の患者さんは、心臓が単心室になっていたり、右心室が左心室の状態となっていたりします。そのため、治療には一般の患者さんとは異なった特別な配慮を要するケースもあります。成人先天性心疾患と新しい疾患の両方をしっかりと管理していかなければなりません。
近年、医療の発展などにより、成人先天性心疾患の患者さんでも妊娠・出産が可能になってきています。しかし、妊娠をすると、いわば2人分の血液の循環を1人で行わなければならず、母体に心負荷がかかります。そのため、成人先天性心疾患の患者さんが妊娠・出産を行う場合は、水分や心不全の管理など、出産に向けての事前準備が必要となります。
医療技術の進歩などにより治療の予後はよくなっています。そのため、特に異変がない限り、成人以降も通院を続ける方は少数でした。また、小児のころは小児科に診てもらっていたものの、成人後はどこの科で診てもらえばよいのかわからないという状況でした。
しかし、幼いときにFallot(ファロー)四徴症の手術をうけ、長い年月のあいだ、病院に行かず元気に過ごしてきた方が、ある日突然、不整脈の発作を起こし、亡くなってしまうケースもまれにあります。以前は成人後に特別なケアを行っていませんでしたが、現在では成人後でも定期的なケアが必要なのです。
上記のように、幼いころに先天性心疾患の治療をうけ、元気に生活をしている成人先天性心疾患の方でも、一般の方に比べると不整脈などが生じるリスクは高くなります。また、生活習慣病などを発症した場合は、心疾患と新しい疾患の双方の管理が必要となり、妊娠、出産を考える場合は健康な方よりも特別な準備やケアが必要です。
このような理由から、成人先天性心疾患の患者さんを専門的にサポートしていく施設が求められています。そして、成人先天性心疾患を診る施設では、成人の循環器についての知識・技術がある医師と、成人の疾患の専門の医師、先天性心疾患について知識のある小児科の医師が密に連携して診療することが理想的です。
しかし、多くの病院では、もう成人なのだからといった理由から、成人の循環器の専門家だけが診療を行っている施設が目立ちます。そこで、横須賀市立うわまち病院では、成人先天性心疾患の方々の今後の生活をサポートしていくために、成人循環器・小児循環器どちらの専門家もそろった、成人先天性心疾患センターを2013年12月に設立しました。
記事2『成人先天性心疾患の患者さんを病院全体でサポートする うわまち病院成人先天性心疾患センター』では、横須賀市立うわまち病院が設立した、成人先天性心疾患センターの特徴について詳しくご説明します。
横須賀市立うわまち病院 副管理者・小児医療センター長
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