JA愛知厚生連 海南病院(以下、海南病院)は、2018年に創立80周年を迎えました。1938年の開院時は、地域住民の皆さんのための組合病院として20床でスタート。その後、歴代の病院長のもとで増床を重ね、現在は540床となりました(2020年1月現在)。“コンパクト・高機能・次世代型”をキーワードに、愛知県弥富市・愛西市・蟹江町・飛島村など4市2町1村から成る海部医療圏において、救急医療や高度急性期医療を中心に担っています。
同院の診療体制や、地域との関わり、同院が目指す将来像などについて、病院長の奥村 明彦先生にお話を伺いました。
当院は2013年に救命救急センターの指定を受けており、医療圏内はもとより名古屋市中川区、稲沢市、三重県の桑名市、木曽岬町など、広範囲の救急患者さんに対応しています。指定以前から救急医療においては地域の最後の砦となるべく力を入れていましたが、大規模改築を行ったことで、より柔軟に患者さんの受け入れが行えるようになりました。
たとえば、救命救急センターの初療室から、扉1枚でCT撮影室に移動することが可能です。内視鏡センターや手術室も近くにあり、入院となればセンターを出てすぐのエレベーターで直上階の救急病棟へ患者さんを運ぶことができます。また、四肢骨盤外傷センターを備えているので、整形外科外傷に迅速に対応できる体制を整えています。
救急医療だけでなく、がん診療にも注力しています。当院は2005年に地域がん診療連携拠点病院の指定を受けており、地域の医療機関との診療連携や支援を推進しています。最新の医療設備の導入に努めており、手術支援ロボット“ダヴィンチSi”の導入がそのひとつです(2020年3月時点)。“ダヴィンチSi”は体に開けた穴に手術器具を挿入し、医師がハイビジョンカメラを見ながら手術を行う装置。機器の性能に加えて、医師を始め、看護師や臨床工学技士などから成る多職種チームを結成するなどして、より安全な手術を目指して治療にあたっています。
また、ライナックによる外照射治療や、IMRT(強度変調放射線治療)などの放射線治療も行っています。
小児がんについても、名古屋市立大学病院と連携体制ができており、患者さんの診療情報のやり取りをしています。
当院の強みは、幅広くさまざまな領域の病気に対応できるということです。内科系、外科系とも、臓器や病気によって診療科は細分化されています。当院ではそれぞれの領域を専門とする医師がそろっており、診療を行っています。
診療科が臓器や病気によって細かく分かれていることは強みである一方で、症状が複数の科にまたがっていると、患者さんはどの科にかかればよいのか分からないということがあります。こうした問題に対応するため、2019年4月に常勤医師を配して、総合内科での診療を開始しました。総合内科では内科初診を担当し、日常的な病気や生活習慣病の診療を行いながら、必要に応じて各診療科と連携を取っています。総合内科が介在することでほかの診療科への相談や応援要請がしやすくなり、結果的にスムーズな診療につながっていると考えています。
当院は、災害時におけるさまざまな状況を想定し、それらを乗り越えていける病院を目指しています。建物が海抜0mの地域にあり、1959年の伊勢湾台風の際には大きな被害を受けた経験があること、地域中核災害拠点病院の指定を受けていることから、災害時の医療態勢を整えなくてはならないという強い思いがあります。
当院の理念は、“私たちは医の倫理をしっかり見据え、質の高い、安全で安心な医療提供をとおして、地域を守り、地域から信頼される病院を築きます”というものです。この理念のもと、地域の皆さんを対象としたオープンホスピタルを2018年に開催しました。このオープンホスピタルでは、普段は入ることができない院内の施設を案内したり、中高生を対象に内視鏡検査や針と糸を使った縫合の体験をしたりしていただきました。当院をもっと知ってもらいたいという思いもありましたが、この中から将来、地域に根をはって医療を行っていく人材が出てきてくれればという期待もしていました。
また、患者さん向けの『海南NEWS』という病院広報紙や、連携医療機関向けには『地域医療連携センターだより』を発行して、当院への導線を増やせるよう取り組んでいます。加えて、ホームページの制作にも注力。実際にインターネットで検索して来院される患者さんも増えていますし、紹介患者さんが直接当院に連絡して予約日時を決められるシステムを作ったことで、よりアクセスしやすくなっているのではないかと思います。
もちろん職員募集など見てもらいたい部分をアピールできるということもありますが、誰でも“すぐ見られる”媒体を用意することが重要と考え、力を入れています。
医師国家試験に合格すると、2年間の臨床研修が義務づけられています。当院は臨床研修指定病院となっており、複数の診療科で幅広い領域の臨床能力を学ぶための教育体制を整えています。
初期臨床研修を修了した後の専門研修もスムーズに行えるよう大学医局と連携を密にとりながらさまざまな研修プログラムを用意していますので、そのまま当院で研修を続ける医師も少なくありません。その間に、医師としての技量や知識以外に、年齢の上下に関係なくできた医師同士のつながりが病院内のスムーズな連携にも役立っています。
当院は地域医療支援病院でもあることから、急性期から回復期、維持期まで、患者さんに切れ目なく医療を提供する地域完結型医療の中心的役割を担っています。
がんを例に挙げると、当院での初期治療が終了した後は、患者さんの希望に応じて連携先となるかかりつけ医を決めます。日常の診療や投薬、検査はそちらで行い、半年または1年の定期的な診療は当院が担当するという形です。
地域医療連携センターを設け、地域のクリニックの先生方との研究会や勉強会、情報交換などを行っているのも、こうした体制を整え、協力しながら診療を進めていくのに大切だと考えているからです。
私自身のキャリアを振り返っても、初期研修からの数年間は医師としての考え方が固まっていく非常に重要な時期です。“こんな医師になりたい”というロールモデルとなるような医師にめぐり会い、ぜひ有意義な研修を受けてもらいたいと思っています。
これからは患者さんが2人の主治医を持つ必要があると考えています。1人は、困ったときにすぐに診てもらえる身近な医師、いわゆる“かかりつけ医”です。そこから紹介を受けて、より詳しい診療や検査、手術などを行う“2人目の主治医、病院”として、当院をご活用いただければ幸いです。
JA愛知厚生連 海南病院 病院長
奥村 明彦 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。