院長インタビュー

地域の皆さんの健康寿命を延ばすために——“医科歯科連携”に取り組む福岡歯科大学医科歯科総合病院

地域の皆さんの健康寿命を延ばすために——“医科歯科連携”に取り組む福岡歯科大学医科歯科総合病院
阿南 壽 先生

福岡歯科大学医科歯科総合病院 病院長

阿南 壽 先生

目次
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福岡歯科大学医科歯科総合病院は、歯科大学に附属する病院でありながら、歯科診療部門とともに医科診療部門を設けています。地域の患者さんがいつまでも健康に過ごすことができるよう、医科と歯科の連携体制を築いているのです。その活動は、診療にとどまりません。医療者への教育、研究、地域の方への啓発活動など、さまざまな取り組みを行っています。

同院の病院長である阿南(あなん) (ひさし)先生に、福岡歯科大学医科歯科総合病院の診療体制の特徴や取り組みについてお話を伺いました。

当院は、1973年に福岡歯科大学附属病院として開設されました。その後さまざまな変遷を経て、2005年に福岡歯科大学医科歯科総合病院として生まれ変わり、現在では歯科診療部門とともに医科診療部門を設けています(2020年5月時点)。噛むことから、要介護阻止へ、口腔の健康から、誤嚥(ごえん)性肺炎ゼロに”を目標に、医科と歯科の連携体制を実現しながら診療・教育・研究に取り組んでいます。

また現在、新病院を建設中です。新病院は、現在の病院の約1.5倍の延べ床面積となる予定で、2020年秋の開院に向けて工事が行われています(2020年5月時点)。

新病院 完成予想図 外観
新病院 完成予想図 外観

当院の医科診療部門には、内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、小児科、神経小児科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、心療内科、形成外科、美容外科など23の診療科を設け、主に急性期の治療を行っています(2020年5月時点)。

歯科診療部門には、総合歯科、高齢者歯科、保存(むし歯)科、歯周病科、補綴(ほてつ)入れ歯)科、口腔インプラント科、障害者歯科、矯正歯科、小児歯科、口腔外科などを設け、さまざまな状態の患者さんの治療に対応しています。

新病院 完成予想図 内観
新病院 完成予想図 内観

口腔内の状態はさまざまな病気と密接に関連しています。たとえば、口腔疾患のひとつである歯周病は、心臓病や糖尿病などの全身疾患にも影響を及ぼすことが分かっています。また、高齢の方に多い誤嚥性肺炎は、口腔内が清潔に保たれず細菌が増殖してしまうことが一因となり発症することがあるため、予防のためには口腔ケアが重要です。

当院では、患者さんの健康寿命を延ばすため、多職種による“医科歯科連携”に力を入れています。医科と歯科が協力しながら診療にあたることが、患者さんの全身の健康につながると考えているからです。たとえば高齢者歯科では、医科診療部門と連携しながら、口腔内の汚れと誤嚥性肺炎の関連について分かりやすい説明を行う取り組みを実施しています。耳鼻咽喉科では、2019年に開設された摂食嚥下・言語センターの中核として、歯科診療部門と連携しながら“嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を基にした食事指導、リハビリテーション、手術法の選択”に取り組んでいます。

地域医療への貢献を目的として、2017年には訪問歯科センターを再編するとともに内視鏡センターを開設しました。

訪問歯科センターでは、医科診療部門を含むさまざまな診療科の医師が協力しながら往診による歯科治療や周術期の口腔ケアなどの口腔管理を行っています。また、福岡県歯科医師会、福岡市歯科医師会と協力し、病院・施設・在宅への訪問歯科診療連携を強化しており、離島(小呂島)への歯科訪問診療にも参加しています。内視鏡センターでは、内視鏡検査に加えて、内視鏡治療と内視鏡手術を行っています。

これらのセンターでは、歯科および医科それぞれの診療科が協力して全身的、総合的医療を展開するとともに、大学の臨床教育の場として全身疾患を広く学ぶ環境を整えています。

当院は、介護保険施設の関連病院でもあります。介護老人保健施設(サンシャインシティ)、特別養護老人ホーム(サンシャインプラザ)、特別養護老人ホーム(サンシャインセンター)の関連病院として、施設の入居者の皆さんに対して医科診療と歯科診療を行っています。

当院では、スタッフが常に研鑽を積むことができる体制を築いています。講習会を開催し知識や技術の向上に努めるとともに、多職種によるカンファレンスも活発に行っています。

また、福岡歯科大学、福岡看護大学、福岡医療短期大学の関連病院として、歯科大学生や看護大学生、医療短期大学生(歯科衛生士)の臨床実習にも対応しています。

福岡歯科大学では、文部科学省に選定された“高齢者ヘルスプロモーションと地域包括ケアへの口腔医学の展開~要介護化阻止と誤嚥性肺炎ゼロを目指して~”というブランディング事業を実施しました。

このブランディング事業の一環として、当院では医療スタッフに向けて口腔ケアの重要性を知っていただくために、病気別の口腔ケアマニュアルを作成しました。多職種のスタッフを対象に、いかに口腔ケアが重要か、さらに病気によってどのような口腔内の変化が起こるかといった指標を作らせていただきました。また、福岡歯科大学・福岡看護大学・福岡医療短期大学 口腔医学研究センターでは再生医療の実践を目指した研究にも取り組んでいます。

当院では、出前講座(公開講座)を開催しています。出前講座では、当院が用意した37のテーマの中からお好きなものを選んでご依頼いただく体制を築いており、その内容に適したスタッフを講師として派遣させていただきます。ご用意しているテーマはさまざまです。たとえば、高齢の方の歯科に関する“高齢者のお口の病気”“食べこぼし・むせ(オーラルフレイル)を防ぐ”というものや、お子さんの歯科に関する“子どもの歯と口の病気について”などのテーマをご用意しています。

なお、出前講座は必ずしも講演会方式でなくても構いません。ご相談によっては、対話方式や健康体操教室方式などを共同企画させていただくことも可能です。

先生

繰り返しになりますが、口腔内の状態は全身の健康と深く関わっており、病気の予防のためにも口腔ケアは重要な役割を果たします。当院では、地域の皆さんが生涯にわたって口から食べて豊かな生活を送ることができるよう医科歯科連携による口腔医学の実践で、“介護のいらない高齢者”が元気に暮らすことのできる地域づくりに努めています。

私たちは豊かな人間性を備えた有能な医療人を育成するとともに、安全で質の高い思いやりのある病院を目指しています。全身疾患をお持ちの方や高齢の方にも安心して診療を受けていただける体制を築きながら、“噛むことから、要介護阻止へ、口腔の健康から、誤嚥性肺炎ゼロに”を目標に、地域の皆さんに信頼され、地域に貢献できる病院を目指す所存です。

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  • 福岡歯科大学医科歯科総合病院 病院長

    阿南 壽 先生

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