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子どもの言葉の問題と小児リハビリテーションについて

子どもの言葉の問題と小児リハビリテーションについて
倉本 浩史 先生

熊本機能病院 小児科 部長

倉本 浩史 先生

目次
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子どもの言葉の問題には、言葉が遅れている、正しい発音ができない、なめらかに話せない、などがあります。原因や言葉の問題の特徴に応じて、一人ひとりに合った小児リハビリテーションや周囲の方のサポートにより改善が期待できます。本記事では子どもの言葉の問題について、熊本機能病院 小児科部長の倉本 浩史くらもと ひろふみ)先生にお話を伺いました。

子どもの言葉の発達には個人差がみられますが、年齢ごとに目安となる発達の段階があります(言葉の発達段階)。おおむね、0歳から1歳頃では「あー」「うー」などの意味のない声(喃語(なんご))を出し、1歳から1歳6か月頃では「ママ」「ブーブー」などの意味のある単語を使って一語文を話し始め、1歳6か月から2歳頃で「ワンワン、かわいい」などの二語文を話せるようになることが一般的な発達段階です。会話が成立するようになるのは3歳以降だといわれています。6~7歳頃には日本語の50音が全て正しく発音できるようになり、さらに小学校に入って読み書きや計算を習得していきます。

しかし、発達段階で次のような問題が生じることがあります。

  • 発音がはっきりしない、異なる音に置き換わる(機能性構音障害)
  • 言葉がどもる、流ちょうに話すことができない(吃音(きつおん)
  • 読み書きや計算が苦手(限局性学習症)
  • 言語能力が年齢に対して期待されるものより低い(言語発達遅滞)
  • 唇や口蓋(口の天井部分)に生まれつき裂がある状態(口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)

まずは医療機関などで専門的な検査を行って、その原因や問題の特徴、程度を明らかにすることが大切です。その後、小児リハビリテーションなどによって、発音や語彙力など“言葉”の育ちをサポートしていきます。

それでは、主だった言葉の問題の特徴、必要となるサポートについて説明します。

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提供:PIXTA

構音とは、一般には発音と同義です。私たちは、唇・舌などの器官を使って母音や子音を発音し、言葉を作っています。

唇・舌などの器官の運動に異常がなく、聴覚障害や知的発達の遅れがないにもかかわらず、年齢的に獲得されているはずの音が正しく発音できない状態を機能性構音障害といいます。誤りに一貫性があり、子どもの発達途上にみられる音の置き換えや省略のほか、通常の発達途上にはみられない音の歪みや、構音操作の誤りから生じる異常構音(日本語の語音の中にない歪んだ音)が含まれます。

  • 音の置き換え……「かめ」→「ため」、「うさぎ」→「うたぎ」
  • 音の歪み……「ケーキ」「りんご」(音が歪んで聞こえる、発音の際に口を横に引く)

など

言語聴覚士(ST)により発音の状態を評価します。自然改善が見込めずに練習の必要があると判断した場合は、集中的な発音の練習を行います。具体的には、獲得すべき音と誤り音の聞き分け練習、獲得すべき音の舌の構えや呼気の出し方の練習、ほかの音から誘導(移行)する方法や、鍵となる音を利用する方法などの構音指導を行ったりします。

吃音は、話し言葉がなめらかに出ない発話障害の1つです。

吃音の9割は幼児期(2~5歳)に発症する場合がほとんどの“発達性吃音”というタイプです。体質的な特徴、体や言語の発達が著しい時期の影響などが考えられていますが、発症の根本的な原因は不明です。環境や生活上の出来事が影響して、症状に波が生じる場合があります。

吃音の特徴的な症状には、次の3つがあります。

  • 音の繰り返し(連発)……「か、か、からす」
  • 引き伸ばし(伸発)……「かーーらす」
  • 言葉を出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)……「……からす」

これらの症状以外にも、「えーと」「あのー」などの言葉を挿入する、語を言い換える、発話の際に顔に力が入る、などの症状が伴う場合もあります。

言語聴覚士(ST)により症状を評価します。また一人ひとりの症状に合わせて、家庭や保育園・学校・職場などでの環境調整(症状や心理的ストレスを軽減するために必要な配慮や適切な関わりを行うこと)や、話し方の練習などを行います。

全般的な知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算に著しい困難さを持つ状態です。勉強不足が原因ではなく脳機能の問題といわれています。

限局性学習症の特徴的な症状には、次のようなものがあります。

  • 文字を一つひとつ拾って読む(逐次読(ちくじよ)み)
  • 単語あるいは文節の途中で区切ってしまう
  • 読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む
  • 文字間や単語間が狭いとき読み誤りが増える
  • 文末などを適当に変えて読んでしまう
  • 拗音(ようおん)(「ちょうちょ」の「ょ」)、促音(そくおん)(「がっこう」の「っ」)など特殊音節の誤り
  • 助詞「は」と「わ」など同じ音の表記の誤り
  • 「め」と「ぬ」など形態的に似ている文字の誤り

など

言語聴覚士(ST)により読み書き・計算の能力や知的能力を評価し、必要な場合は個人に合った練習を行います。また、ご家族や学校の先生など周囲の方々の関わり方や、学習の方法についてアドバイスします。

定型的発達段階に比べて実際の言語能力が低い状態のことをいいます。さまざまな原因や症状の方がいらっしゃって一様ではありません。当院では知的発達の遅れや聴覚障害などの原因がなく、周囲の人への関心やコミュニケーションの意志を持つものの言語発達の遅れがみられる方を中心に対応しています。

言語発達遅滞では、次のような特徴がみられることがあります。

  • 2~3歳を超えても意味のある言葉が出ない、言葉の数が増えない
  • 5~6歳になっても“文”の長さで話すのが苦手

など

言語聴覚士(ST)により、子どもの言語能力や発達全般を評価します。また、言葉の成長のために必要な関わり方のアドバイスや練習を行います。

口唇口蓋裂とは、唇の割れ(口唇裂)や、口の中の天井部分の割れ(口蓋裂)などが発生する生まれつきの病気のことです。この病気に対する手術を受けたお子さんについては、当院では手術の後に言語聴覚士(ST)による言葉の評価や練習を行っています(詳しくは『チーム医療と親御さんのサポート体制を充実させる熊本機能病院 国際唇裂口蓋裂センター』をご覧ください)。

当院の小児科では、主に15歳未満の言葉に苦手さを持つお子さんに対して、言語聴覚士(ST)と協力して言葉の問題の評価やリハビリテーションを行っています。発音や語彙力など”言葉”の育ちを幅広くサポートしますので、気になることやお悩みがあれば遠慮なくご相談ください。

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