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高齢になるほど発症しやすくなるパーキンソン病──自宅でも体操でリハビリを

高齢になるほど発症しやすくなるパーキンソン病──自宅でも体操でリハビリを
德永 誠 先生

熊本機能病院 副院長、総合リハビリテーションセンター 副センター長

德永 誠 先生

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高齢化に伴い患者数が増えている病気の1つにパーキンソン病があります。パーキンソン病は、手足のふるえなどの運動症状から始まり、次第に全身に症状が現れていく進行性の病気です。高齢になるほど発症しやすいといわれています。

熊本機能病院 副院長・総合リハビリテーションセンター 副センター長の德永 誠(とくなが まこと)先生は「体の動きを保つためには自宅で体操を続けることも大切」といいます。パーキンソン病の症状や治療法についてお話を伺いました。

パーキンソン病は、脳からの運動の指令が筋肉へスムーズに伝達されず、動作がぎこちなくなる病気です。神経伝達物質のドパミンをつくる脳の領域(中脳の黒質)内の細胞が減少することによって発症します。細胞が減少する原因には遺伝や環境要因があるとされていますが、詳しいメカニズムは明らかになっていません。

国内の有病率は人口10万人あたり100~180人で、約20万人の患者さんがいると推計されています。高齢になるほど発症しやすく、60歳以上では10万人あたり1,000人まで上昇するといわれています。まれに50歳以下で発症する場合があり、若年性パーキンソン病と呼ばれています。若年で発症する場合は遺伝要因が大きいと考えられています。

パーキンソン病は手足のふるえなどの運動症状から始まり、次第に症状が増え、さらに重くなっていきます。

自律神経など全身の神経に影響が出るため、気分が落ち込む“うつ症状”や、不眠や昼間の眠気などを生じる“睡眠障害”などの非運動症状も合併しやすく、全身に病気の影響が出てしまうという特徴があります。これらの症状により患者さんの生活の質(QOL)が低下してしまうのも病気が引き起こす大きな問題といえるでしょう。

パーキンソン病を確実に診断できる検査法は現時点では確立しておらず、症状に基づいて診断します(2022年12月時点)。主に問診と診察によって診断を行いますが、ほかの病気と鑑別するために、頭部MRI検査やアイソトープ検査(放射性医薬品を投与して臓器などから放出されるガンマ線を撮影する検査)を実施することがあります。

以下の症状は運動症状の3 大症状と呼ばれ、診断の際に非常に重要といえます。

  • 体の動きが少なく、遅くなる“無動(むどう)”または“運動緩慢(うんどうかんまん)
  • 体の動きを止めているときに手足などの筋肉がふるえる“振戦(しんせん)
  • 筋肉がこわばり、関節の動きが固くなる“筋強剛(きんきょうごう)

これらの症状は体の左右で程度が違うことが多く、同じ側で起こりやすいのが特徴です。

ほかにも、以下を加えて6大症状とすることもあります。

  • バランスの維持が難しくなり、押された方向に倒れる“姿勢保持障害”(病気が進行してから現れることが多い)
  • 歩き始めや方向転換時に足が前に出ない“すくみ現象”
  • 立つときや歩くときに体幹を前屈させる独特の姿勢をとる“前傾姿勢”

飲み込みの障害である“嚥下障害(えんげしょうがい)”が現れ、進行すると窒息誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)(気管に唾液や食べ物が入ることで起こる肺炎)を起こしてしまうこともあります。

全身の神経に影響が出るため、ほとんどの患者さんに以下のような運動症状以外の症状が現れます。薬の服用によって起こったり、ひどくなったりするものもあるため注意が必要です。

  • 感覚障害(嗅覚障害など)
  • 睡眠障害(レム睡眠時の行動障害など)
  • 自律神経障害(起立性低血圧、頻尿、便秘など)
  • 気分障害(うつ、不安など)
  • 幻覚、妄想
  • 認知機能障害
  • 体重変化
  • 疲労

など

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提供:PIXTA

パーキンソン病は、何年もかけてゆっくりと進む進行性の病気です。進行を抑制する治療法は確立されていませんが、現在は効果的な治療薬が複数開発されており、発症しても生活には大きな影響がない状態を保つことができます。早い段階からきちんと治療を始めることが、予後悪化を防ぐために大切です。

パーキンソン病の治療は、減少したドパミンを補う薬による対症療法が中心です。ドパミンの原料となるL-ドパは代表的な治療薬で、脳の中でドパミンに変換され不足を補います。病気を発症してから数年(3~5年)は薬がよく効きます。このように治療によって症状をコントロールできる初期の期間は“ハネムーン期”と呼ばれるものの、それ以降は効果が乏しくなります。

進行期の患者さんでは、手術で脳に電極を埋め込み刺激を与える脳深部刺激療法などの手術も選択肢になります。

パーキンソン病を発症すると、意識して体を使うようにしなければ、普段の何気ない動作が小さくなってしまいます。運動量が減ると筋肉量も減り、日常生活で疲れやすさを感じやすくなります。リハビリテーションは、筋力や身体機能の予防と回復、歩行速度の改善、QOL向上に有効と認められています。

体の動きを保つためには自宅で体操を続けることも大切です。座っていたり寝転がっていたりしてもできる体操もありますので、無理のない範囲で体を動かすことを意識して生活しましょう。体操や運動の種類によって効果が異なるので、どのようなものから始めればよいか、主治医や理学療法士に相談されることをおすすめします。ここでは自宅でもできる体操の一部をご紹介しますので、参考にしていただければと思います。

MN

PIXTA
以下を参考に作成:
山永裕明, 野尻晋一『図説 パーキンソン病の理解とリハビリテーション』三輪書店, 2010

当院には、県内外から約400人のパーキンソン病の患者さんが通われています(2022年12月時点)。内服薬調整とリハビリテーション目的で2022年4~9月に当院に入院された患者さんは40人でした。多くの患者さんは投薬などの治療によって病状が落ち着き、ADL(日常生活に必要な基本的動作)の改善がみられます。

パーキンソン病の患者さんをサポートするためには、医師や理学療法士だけでなく、支援制度に詳しいソーシャルワーカーや在宅支援スタッフも大切です。当院にはパーキンソン病を専門とする医師計8人のほか、支援制度に詳しいソーシャルワーカー、在宅支援スタッフ、リハビリを担当する理学療法士や作業療法士などの施設スタッフが在籍しています(2022年12月時点)。保険・福祉の面からも患者さんをきめ細かく支える体制を築いていますので、安心して受診してほしいと思います。

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