院長インタビュー

救命救急・精神科救急医療において高度な専門性を発揮する千葉県総合救急災害医療センター

救命救急・精神科救急医療において高度な専門性を発揮する千葉県総合救急災害医療センター
宮田 昭宏 先生

千葉県総合救急災害医療センター 病院長

宮田 昭宏 先生

目次
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千葉市美浜区にある2つの医療機関が統合され、2023年に誕生した千葉県総合救急災害医療センター。三次救急医療施設として精神科救急にも対応し、災害拠点病院として被災地支援にも取り組む同センターの役割や今後について、病院長である宮田 昭宏(みやた あきひろ)先生に伺いました。

外観
千葉県総合救急災害医療センター外観(提供:千葉県総合救急災害医療センター)

当センターは、美浜区にあった千葉県救急医療センターと千葉県精神科医療センターを統合する形で2023年に誕生しました。千葉県救急医療センターは1980年の開設以来、三次救急医療施設として県内全域から重症患者さんを受け入れ、高度救命救急センターとしての役割を担ってきました。一方、1985年に開設された千葉県精神科医療センターは、千葉県精神科救急医療システムにおける中核医療施設として、県内の精神科救急を支えてきました。両者が統合した当センターは、体の病気やけがに加えて精神疾患にも対応できることが強みです。また病院名に“災害”とあるとおり、災害発生時の拠点となる医療機関であることも広く知っていただきたいと考えています。

内観
千葉県総合救急災害医療センター内観(提供:千葉県総合救急災害医療センター)

美浜区、中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、緑区からなる千葉医療圏には、97万人を超える方がお住まいになっています(2020年時点)。新築移転先の候補先として東京湾に面した“美浜区豊砂”が選定されたのは、将来的な夜間におけるヘリ搬送の受け入れなどを想定してのことでした。

近隣にはZOZOマリンスタジアムや東京ディズニーランドなど多くの人が集まる人気スポットもありますので、県民の皆さまの命を守るとともに、局所災害などにもしっかりと対応していきたいと考えています。

ヘリポート
屋上ヘリポート(提供:千葉県総合救急災害医療センター)

当センターは国内で唯一、三次救急を対象とした医療機関です。県内全域から短時間で救急患者さんが搬送されて来ることを想定した屋上にあるヘリポートに加えて、災害時などには駐車場をヘリポートとして活用するなど機能を拡張できる体制を整えています。三次救急とは、一次・二次救急では対応が難しい重症例のことを指し、脳や心臓など命に関わる病気を発症したり、腕や足を切断なさったりした患者さんの治療にあたります。高齢化が進む昨今は、急性期の病気やけがのほかに基礎疾患をお持ちの患者さんも多いため、当センターでは医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、放射線技師、管理栄養士などが多職種連携の強化や、重症患者を24時間体制で見守る“集中治療科”を重点的に配置し、初期診療から手術、術後のサポートまでシームレスな治療を行っています。

ハイブリットER
ハイブリッドER

初期診療において力を発揮するのが、診断と治療を同時に行うことができる“ハイブリッドER”です。これまでは、たとえ重症患者さんであってもストレッチャーで検査室まで移動して検査をする必要があったため、適切な治療が開始されるまでに一定の時間がかかり、患者さんへの身体的負担も少なくありませんでした。これに対してハイブリッドERはCTで全身状態を確認しながらカテーテル治療などを行えるため、患者さんと医療者の双方にさまざまなメリットをもたらすことが期待されています。

千葉県精神科医療センターの流れをくむ当センターでは、全国的に見ても珍しい精神科救急に対応しています。精神科単科病院との大きな違いは、全身の状態を確認したうえで、心身両面の包括的な医療を提供できることです。急性期の症状に対して短期間の入院で適切な治療を行い、退院後もリハビリテーションに通っていただきながら患者さんの暮らしを見守ります。

こうした取り組みは統合前と変わりはありませんが、2023年の新築に伴って精神科病棟の雰囲気はガラリと変わりました。鉄格子などをなくし、全室個室のお部屋は窓を大きくとって開放感のある療養環境を実現しました。きっと患者さんみなさんに心穏やかにお過ごしいただけると思います。

当センターは千葉県より災害拠点病院に指定されており、被災地へのDMAT(災害派遣医療チーム)派遣はもちろん、精神科部門の強みをいかしてDPAT(災害派遣精神医療チーム)の派遣も行っています。敷地内にある2か所のヘリポートで被災者を受け入れる体制が整っているほか、防炎棟や備蓄倉庫なども備えています。

特に災害時においては、精神科医療に対応できる私たちの強みが発揮される場面が少なくありません。精神疾患のある方は、避難所でほかの方たちと生活を送るのが難しいことも多く、救急・精神・災害の3本柱を掲げる当センターの役割は大きいと感じます。自然災害だけでなく、近隣の大規模施設における局所災害にも対応できるよう日々訓練を積み、有事に備えたいと思います。

心筋梗塞(しんきんこうそく)脳梗塞といった命に関わる病気は、どれだけ早く治療できるかが重要なポイントです。治療ではできるだけ早く血栓を取り除く必要があり、1分、1秒が患者さんのその後の人生を大きく左右します。そのため当センターでは血栓を取り除くカテーテル治療を行える医師を24時間常駐させて、急性心筋梗塞や脳梗塞に対する緊急カテーテル治療を行える体制を整えています。また、心房細動に対するカテーテルアブレーションにも積極的に取り組んでいます。

今後はさらにこの分野を強化すべく人材育成に力を注ぐとともに、疑わしい症状のある患者さんを積極的に受け入れられるよう、救急隊員の方々への周知徹底に努めています。“命の危険がある方は必ず受ける”という信念のもとに、三次救急医療施設としての役割を果たしてまいります。

“千葉県総合救急災害医療センター”という名前どおり、当センターは公立の医療機関として、時代の変化や市民の皆さまのニーズに合った医療をご提供する役割があります。しかしながら当センターは一般的な医療機関とは少々異なり、救急・精神・災害の3つに特化した医療を行っています。精神科では外来診療にも対応しておりますが、市民の皆さまにとっては馴染みの薄い医療機関と言えるかもしれません。

私たちがどのような形で地域医療に貢献できるのかは、今後も議論を重ねなければならないでしょう。しかし当センターの一般病床100床は常に満床の状態が続き、病床数50床の精神科でも幅広く患者さんを受け入れ診療を行っています。当センターが“県内救急医療における最後の砦”をしっかり守っておりますので、皆さまにはぜひ毎日安心してお過ごしいただければと思います。

*病床数や診療体制、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年3月時点のものです。

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