神戸医療センターは、前身である神戸市立屯田療養所が開設された1918年以来、須磨区・垂水区エリアの基幹病院としての役割を担ってきました。独立行政法人国立病院機構の一員として公益性を保ちつつ、地域の医療ニーズに対応する同センターの役割や今後について、院長である味木 徹夫先生に伺いました。
当センターは1918(大正7)年に神戸市立屯田療養所として発足し、2004年に独立行政法人となって“国立病院機構 神戸医療センター”へと名称を改めました。創立から100年以上が経った現在も変わらず“すべての人の立場にたった医療サービスを提供”という理念を掲げ、公共性と公益性を重視しつつ、地域にお住まいの方々の健康を支えています。
神戸市の西部に位置する須磨区において当センターは唯一の公立病院です。30の診療科と304床の病床を有する須磨・垂水地区の基幹病院として、二次救急の受け入れなども積極的に行っています。他の地方都市と同様にこの地域も人口減少と高齢化が進んでおり、地域の特性に合った医療の提供が求められるようになりました。当センターも地域の医療機関との連携強化を進めることにより、医療提供体制の充実に努めてまいります。
前院長(宇野 耕吉先生)の時代から、当センターでは側弯症に対する専門的な診療を行っています。背骨(脊柱)が左右に弯曲した状態を指す側弯症は、主に小児期によくみられる病気です。側弯症の診療を行う医療機関は限られるため、当センターには全国から患者さんが訪れています。側弯症をはじめとした脊柱変性疾患に対して専門性の高い治療をご提供できることは、当センターの強みと言えるでしょう。
宇野先生は、現在も引き続き外来診療を担当してくださっており、“脊椎側弯センター”にて脊髄モニタリング、自己血液貯蔵、ナビゲーションシステムによる専門的な治療を行っています。このほか整形外科では外傷・骨折の治療や人工関節置換術をはじめとした手術も積極的に行っています。さらにリウマチ治療などにも対応することにより、急性期から慢性期におけるQOL(生活の質)向上に努めております。
当センターは病床数300床ほどの中規模医療機関ではありますが、医療資源を最大限に活用して積極的に手術を行っています。私自身は肝臓・胆嚢・膵臓をはじめとした消化器の病気を専門にしており、消化器がんをはじめとしたがんの手術件数は増加傾向にあります。
当センターは兵庫県指定のがん診療連携拠点病院になっており、消化器・婦人科系を中心にさまざまながんの治療に尽力しています。手術のほかに放射線治療や抗がん剤治療などを組み合わせることにより、オーダーメイドのがん治療をご提供することが可能です。患者さんの理解と同意のもとに治療を進めるインフォームドコンセントを徹底しつつ、医師や看護師をはじめとしたチーム医療で患者さんやご家族を支えています。
当センターでは1987年より二次救急の受け入れを開始し、夜間診療や緊急手術を積極的に行っています。救急車から受け入れ要請があった際の受け入れ率のことを応需率と言いますが、当センターは常に8割台という高いレベルを維持しています。
救急科や救命救急センターなどの専門窓口がなく、救急を専門とする医師がいないにもかかわらず、応需率8割台を維持できていることについては、当センターに在籍する医師の多くが常勤医であることが大きいと考えます。また、“地域医療に貢献したい”という高い志を持った職員の理解と協力があるからこそ、地域に暮らす方々の命と健康を支えることができているのだと思います。
須磨・垂水地区は少子高齢化が進み、お産の数も減少傾向にあります。この現状にメスを入れようと、行政主導で進められているのが“リノベーション・神戸”の取り組みです。このエリアにおいても大規模分譲マンションの建設が予定されていたり、ショッピングモールがリニューアルされたりするなど、地域全体の若返りが期待されています。
当センターは須磨・垂水地区の基幹病院であり、安全安心なお産をサポートすることはもちろん、子どもたちの健やかな成長を見守っていくこともできます。そんな当センターの存在を広く知っていただきたいとの思いから、最近では市営バスに広告を出したり、SNSを始めたりと積極的に情報発信を行っています。
町のクリニックなどに比べると少々敷居の高いイメージがあるかもしれませんが、当センターはあくまでも地域の皆さんのための医療機関です。2009年にはWHO(世界保健機構)とユニセフによる“Baby Friendly Hospital(赤ちゃんにやさしい病院)”にも認定され、母乳育児にも積極的に取り組んでおります。妊娠・出産・子育てにまつわる不安や悩みがおありでしたら、お気軽にご相談いただければと思います。
当センターで診療する医師の多くは神戸大学から派遣されており、私自身も神戸大学の出身です。かつては国産手術支援ロボット・hinotoriの開発を担った医療機関で仕事をしていた時期もあり、私としては最先端の医療にも魅力を感じるものの、地域医療に情熱を注げる今のほうがより性に合っているように思います。
当センターは須磨・垂水地区の基幹病院として、この地域の医療を支えていく責任があります。地域に向けて積極的に情報発信をすると同時に、医師会やかかりつけの先生方との連携を密にすることで、地域の皆さんにいっそうご満足いただける医療の提供を目指します。必要以上に背伸びすることなく、しっかりと地に足をつけて、この地域に寄り添いながら診療を続けてまいりたいと考えています。
*病床数、診療科、医師や提供する医療の内容等の情報については全て、2024年5月時点のものです。
神戸医療センター 病院長、神戸大学医学部 名誉教授
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