院長インタビュー

患者ファーストの文化が根付く静岡で日赤らしさを発揮する静岡赤十字病院

患者ファーストの文化が根付く静岡で日赤らしさを発揮する静岡赤十字病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

静岡市の静岡赤十字病院は、その名の通り日本赤十字社を経営母体とする総合病院です。高度急性期医療および三次救急の機能を担い、地元の葵区や近隣の駿河区、清水区を中心に、県内全域から患者を受け入れています。

得意とする脳神経内科、脳神経外科、整形外科をはじめ、全28科・センターからなる診療体制を支えるのは、若手からベテランまでが揃う医師たちをはじめ、看護師その他、患者にとことん寄り添う赤十字魂を持った職員たち。その先頭に立つ院長の小川潤(おがわ じゅん)先生に、同院のお話を伺いました。

当院は日本赤十字社静岡支部病院として1933(昭和8)年に創立し、2023(令和5)年に90周年を迎えました。1943(昭和18)年に静岡赤十字病院へ改称後、戦前からの建物に増改築を加えながら近年まで使用していましたが、老朽化による耐震性能の不足や、現在必要とされる医療の環境として手狭になったことから、2011(平成23)年より新本館・新別館の増改築工事を開始し、2015(平成27)年までに1〜3号館が完成して今日に至っています。

その間、ピーク時に560床近くを数えた病床数は、段階的なダウンサイジングを経て現在465床となっていますが、一方で診療科は徐々に増え、現在28科の広きにわたっています。

静岡市の駿府城公園からほど近い位置に立つ当院は、静岡日赤の通称で知られ、JR静岡駅から徒歩15分、バスなら約5分とアクセスもよいことから、近隣の皆さんに広く親しまれています。同じ葵区には市立静岡病院、静岡厚生病院、最も規模が大きく特定機能病院に位置付けられた県立総合病院があります。高度急性期病院の機能は、当院と静岡病院、お隣の駿河区にある静岡済生会総合病院の3院が、回復期病院の機能は、静岡厚生病院や清水区のJCHO清水さくら病院(注:24年12月までの名称はJCHO桜ヶ丘病院)、市立清水病院などが担っています。

静岡エリアの総合病院はそれぞれ得意とする診療分野が分かれており、がんは県立総合病院、循環器系では市立静岡病院が目立つなか、当院の場合、あえて絞るとするなら、脳神経内科と脳神経外科、脊椎の治療を含む整形外科の3つに強みがあると考えています。このうち整形外科については、全国の日赤病院を比べても非常に高い水準にあると自負しています。

無論そのほかの診療科も日々レベルアップに努めているところです。例えば、近年の眼科の充実ぶりには目覚ましいものがあります。内科系も細分化が進むなか、血液内科は県内でトップシェアを誇るほか、消化器内科も浜松医科大学から複数名の医師派遣を受け、リウマチ内科などと共に、大学病院と比べても遜色ない医療を提供しています。

あらためて先に挙げた3つの診療科をご紹介しましょう。まず整形外科は、特に症例の多い脊椎脊髄疾患の診療を強化するため、2011(平成23)年に脊椎センターを開設しています。現在4人の脊椎専門医(脊椎脊髄病医)が在籍し、治療成績が評価されて県内全域から患者さんのご紹介を受けています。

脳神経外科は、手術の難しさに比例して高いスキルを要求されることから、一般に医師不足が指摘されている分野ですが、当院では浜松医大の先生らが腕を振るっています。開頭手術や血管内治療などバランスよく対応しており、合併症の少ない治療を実現しています。

脳神経内科は、脳卒中の治療が得意な医師を10人ほど擁し、正式に脳卒中センターと謳ってはいませんが、それにふさわしいだけの機能があると言って差し支えないでしょう。私からお願いして、患者さんを24時間365日受け入れられる体制を整えてもらっています。

設備の面に目を向けると、近年のトピックスとしては、内視鏡下手術支援ロボットであるダヴィンチと、脊椎手術のための術中CTナビゲーションシステムの導入が挙げられます。

ダヴィンチに関しては、現在の医療界において、大学の医局から医師を派遣する条件として、ロボット手術の実施を求める例が増えていました。こうした人材確保にかかわる背景に加え、当院が先進的な医療での実績をさらに積んでいくための投資として、ダヴィンチの導入は大きな一歩となると考えています。現在、機器周辺の環境整備を進めていて、準備が整い次第、泌尿器科や消化器外科を中心にロボット手術を実施していきます。

一方、術中CTナビゲーションシステムは、全国でも数台しか導入例がない機器です。現在、当院では脊椎手術を年間600件程度行っていますが、同システムの稼働により、さらに多くの手術に対応できるものと期待しています。

当院は1992(平成4)年に救命救急センターを開設し、地域の第三次救急医療機関としての役割を果たしてきました。昨今の救急医療に関しては受け入れ困難事案、いわゆる630問題の解決が大きな課題となっています。しかし、こと静岡の医療圏に限れば、先ほど紹介した県立総合病院を頂点とする各病院が、救急搬送の患者さんをお待たせすることなく受け入れる体制が確立しており、たらい回しはほぼありません。患者さんをいつでも気持ちよく受け入れることは、静岡エリアの気風、一つの文化と言ってもいいかもしれません。

また、災害時の医療者派遣にも積極的です。能登半島地震に際しては、当日にDMATの派遣依頼を受け、翌1月2日には被害の大きかった輪島市、珠洲市、能登町に向けて救護班や医療災害コーディネーターを派遣しました。

診療科とは別の角度から当院の強みに触れるとすると、一番に思い当たるのは看護師教育です。看護師それぞれのレベルに合わせ、上の者が下の者を引っぱり上げていくキャリア開発ラダーという教育プログラムが定着していて、院外からも見学者が多数訪れます。これに加え、私たちが共有している赤十字魂、患者さんに寄り添って気持ちよく退院してもらおうと懸命に努力するハートの部分も、毎日の教育を通じて受け継いでいきたいと考えています。

人材教育としては、研修医の受け入れも活発です。毎年13〜15人の募集枠に対して60〜70人もの応募があり、その理由は優れた教育システムにあると考えています。主治医になれる医師の輩出をキャッチフレーズに掲げ、やや荒い表現ですが、ほとんど遊ぶ暇もないぐらいにしごいているので、やる気のある人にとっては成長につながるよい環境ではないでしょうか。一方で給料は安いのですが、私としては、お金目当ての研修医は当院に来てくれなくて結構と申し上げたい。それぐらい本気で次代を担う医師の育成に取り組んでいます。

もう1つ付け加えたいのは、女性の医師が働きやすい病院を目指していることです。ジェンダー平等が望まれるのは当然ですが、現実として、育児中の女性には家庭内で一人何役もの負担がのしかかるため、当直に入ってもらうのは難しく、時短勤務が避けられません。しかし、嘱託や非常勤だと規則上どうしても給料や社会保障が削られてしまいます。そこで、時短勤務であっても正職員として雇用できるように私たち経営側が努力することで、少しでも働きやすい職場になればと思っています。

私は1986(昭和61)年に医師としてのスタートを切り、専門である整形外科の領域でたくさんのすばらしい先達に教えを受けながら今日まで歩んできました。当院に整形外科部長として着任したのは2009(平成21)年のことで、2021(令和3)年に院長を拝命してからは、なお一層責任の大きさを感じながら毎日を過ごしています。

当院は市内一等地の恵まれた場所にありますが、医療界を取り巻く環境の厳しさはここにも及んでいて、経営は決して楽ではありません。ですが、経験豊富な医師たちのエネルギッシュな活躍と、看護師など職員全体の優れたチームワーク、組織としての風通しの良さがプラスに働いて、地域の皆さんから厚い信頼を頂けていると感じています。

これからも赤十字魂の名に恥じない、患者さんに寄り添い続ける医療の提供を実践してまいります。どうぞよろしくお願いします。

この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

メディカルノートをアプリで使おう

iPhone版

App Storeからダウンロード"
Qr iphone

Android版

Google PLayで手に入れよう
Qr android
Img app