概要
スキルス胃がんとは胃がんの浸潤形態の1つで、4型胃がんともいいます。
目立った潰瘍や隆起がなく、胃の壁を硬く厚くさせながら進行する悪性度の高いがんです。胃がんの10%ほどを占めるとされているもので、内視鏡検査などでも診断が難しく、予後が悪い傾向にあるがんとして知られています。
スキルス胃がんはほかの胃がんに比べて女性や若い人にみられることが多く、また初期の段階では症状がはっきりしないため診断が遅れてしまうこともあります。
原因
一般的に胃がんの原因には、ピロリ菌の感染による炎症や喫煙習慣、食生活の問題などが挙げられます。
一方、スキルス胃がんは、さまざまな因子が関わることで生じると考えられていますが、最近の研究で遺伝子異常が発症に関与していることが判明しています。具体的には、Eカドヘリンやp53と呼ばれる遺伝子などに異常が生じることが、病気の発症に関わるといわれています。
症状
スキルス胃がんをはじめとした胃がんでは、初期の自覚症状がほとんどなく、進行しても無症状なこともありますが、場合によっては以下のように胃炎とよく似た症状が現れることがあります。
スキルス胃がんではがん細胞が胃の壁を通り抜け、腹腔内に広がること(腹膜播種)がほかのタイプの胃がんよりも多くあります。これによって腹水がたまり、腹痛や腹部の膨満感につながる場合もあります。
このほか、がん細胞が骨に転移することもあり、骨の痛みが生じることもあります。
検査・診断
スキルス胃がんを診断するためには、胃の内視鏡検査(胃カメラ)や、造影剤(バリウム)を使った胃X線造影検査が行われます。
スキルス胃がんは、胃の壁に沿ってがん細胞が広がることから胃が全体的に硬くなるという特徴的な所見を示します。そのため、この状態を内視鏡やX線検査で認めた場合にはスキルス胃がんを強く疑います。がん細胞の存在を確認するために、組織の一部を採取する生検検査を行う必要があります。
また、別の臓器への転移がないか確認するために、CT検査やMRI検査、審査腹腔鏡検査などが適宜行われます。
治療
スキルス胃がんの治療はほかの胃がんの治療と同じく、手術、薬物療法を行います。どの治療を選択するかは、ほかの臓器やリンパ節への転移の有無、がんの広がりや深さ、年齢などさまざまな要素を踏まえて、医師と話し合って決めます。
内視鏡治療
内視鏡治療は、主に早期のがんを切除する際に行われます。胃がんの治療には太さ1cmほどの内視鏡を口から挿入し、映し出された画像を見ながら、胃の内側からがんを切除します。
高周波ナイフでがん周辺の粘膜を切開して剥がし取る“内視鏡的粘膜下層剥離術”も一般的に行われます。
対象は細かく規定されていますが、内視鏡治療は主に粘膜にとどまる胃がんが対象になります。
手術
離れた臓器への転移がない場合には、根治目的の手術療法が選択されます。また、症状緩和を目的として対症療法的に手術が選択されることもあります。
手術では、胃(一部または全て)とがん細胞が転移している可能性があるリンパ節を切除します。切除後は食事を取れるように、胃と小腸などをつなぎ合わせる消化管再建を行います。
薬物療法
手術でがんを切除するのが難しい場合や、がんが再発した場合、手術後の再発予防として薬物療法が選択されます。また、近年では進行した胃がんに術前化学療法を行うこともあります。
胃がんに使用される薬には主に以下の種類があり、病状などに合わせて組み合わせることがあります。
- 細胞障害性抗がん薬……がん細胞の増殖を抑える
- 分子標的薬……がん細胞の増殖に関わる分子を狙って攻撃する
- 免疫チェックポイント阻害薬……がん細胞を攻撃する免疫細胞を活性化させる
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