概要
ニーマンピック病C型とは、発達の遅れや肝臓・脾臓の腫大、歩行障害などの症状が現れるまれな遺伝性の病気です。日本での発症頻度は、12万人に1人と推定されています。
NPC1遺伝子またはNPC2遺伝子の変異により、細胞内に遊離型コレステロールなどの物質が過剰に蓄積することが原因と考えられています。
新生児から成人までいずれの時期でも発症することがあり、発症時期によって症状は大きく異なります。日本人では幼児期で発症する場合が多く、手足を使う動作に支障が出る、発音が難しくなる、食べ物を飲み込みづらくなるなどの症状が現れます。また、笑う、怒るなど感情の高ぶりによって力が抜ける発作(カタプレキシー)や、眼球が上下方向に動かないといった特徴的な症状もみられます。
治療では、症状の改善にミグルスタットと呼ばれる内服薬による薬物療法と対症療法が行われます。
原因
細胞内のコレステロールを輸送するはたらきがあるNPCというタンパク質を作るNPC1遺伝子またはNPC2遺伝子に変異があることで、遊離型コレステロールやガングリオシドと呼ばれる脂質が細胞内に過剰に蓄積することが原因と考えられています。
ニーマンピック病C型は、常染色体潜性遺伝という形式で遺伝することが分かっています。この遺伝形式では、両親が共に変異した遺伝子を持つ保因者*の場合、その子どもは50%の確率で保因者となり、25%の確率で病気を発症します。
*保因者:変異した遺伝子を持つが、病気を発症していない人のこと。
症状
ニーマンピック病C型の主な症状は、発症する時期により大きく異なります。
周産期型(2か月未満の発症)
胎児では、胸やお腹に水が異常にたまる症状(胎児水腫)などが現れます。また新生児では、肝臓や脾臓の肥大、胆汁の流れが悪くなることで起こる黄疸といった肝臓に起因する症状がみられます。
乳幼児早期型(2か月~2歳未満)
肝臓の症状に加え、発達の遅れや筋緊張低下(体が柔らかい)、哺乳障害などの症状が現れます。
幼児後期型(2~6歳未満)
手足や体をスムーズに動かすことに難しさが出てくる(失調症状)ため、不器用さがみられる、転びやすいなどの症状が現れます。発音が難しくなる、食べ物を飲み込みづらくなる(嚥下障害)、知能が低下するなどの症状も現れます。また、カタプレキシーや、眼球が上下方向に動かない現象などニーマンピック病C型に特徴的な症状が現れます。
若年型(6~15歳未満)
これまでできていたことができにくくなる(退行)や学業不振、集中不良や多動衝動性などの発達障害(神経発達症)に似た症状がみられ、転びやすさや不器用さも目立ちます。嚥下障害や、発音がうまくできない構音障害もみられます。病気の進行は、乳児期よりも緩やかです。
思春期/成人型(15歳以上)
若年型とほぼ同様の症状で、進行はさらに緩やかです。幻覚や妄想といった精神症状や認知症が現れる場合もあります。
検査・診断
ニーマンピック病C型の診断は、診察による症状の確認に加え、血液や尿を用いて、この病気に特徴的な物質が含まれていないかをスクリーニングします(研究段階)。
スクリーニング検査で陽性となった場合や、症状から病気が疑われる場合には、確定診断のためNPC1遺伝子、NPC2遺伝子の変異を確認する遺伝子検査が行われます。
また、必要に応じて皮膚などを採取し、それらの細胞にコレステロールが過剰に蓄積していないか特殊染色(Filipin染色)を行い確認します。
治療
ニーマンピック病C型の治療薬としては、ミグルスタットと呼ばれる薬剤が承認されています。この薬剤は、細胞内に蓄積するガングリオシドなどの合成を抑える作用があります。このはたらきにより、飲み込みにくさや歩行の障害、眼球運動の障害、認知機能などの改善や進行の抑制が期待できるといわれています。
また、それぞれの症状に応じた対症療法も行われます。嚥下障害では誤嚥を防ぐために気道を確保し、必要な栄養を確保するための治療が重要とされています。カタプレキシーの治療には、クロミプラミンなどの抗うつ薬が用いられます。また、研究段階ですが、新たな治療選択肢としてシクロデキストリンと呼ばれる薬剤が注目されており、今後の臨床応用が期待されています。
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