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乳がん手術の後に必要なことは? 乳房再建手術の方法や術後のアフターフォローについて解説

乳がん手術の後に必要なことは? 乳房再建手術の方法や術後のアフターフォローについて解説
小宮 貴子 先生

東京医科大学病院 形成外科 准教授

小宮 貴子 先生

目次
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この記事の最終更新は2016年12月01日です。

乳がん手術のあと、胸のふくらみを取り戻すために“乳房再建手術”を受ける患者さんが増えてきています。この乳房再建にはいくつか方法があり、どの方法を選ぶかによって胸の仕上がりやアフターフォローが変わってきます。本記事では、乳房再建の“治療方法”や“術後のアフターフォロー”について、東京医科大学病院 形成外科の小宮貴子先生に解説いただきました。

乳房の再建にはどのようなメリットがあるのでしょうか。乳房再建の対象となる患者さんは“これから乳房を切除する方”と“すでに乳房を切除した方”です。

これから切除される方は、やはり“悲しい”といった気持ちを強くもっていらっしゃいます。患者さんは“乳がんの告知”と“大切な乳房を失ってしまう”という、双方からのダメージを受けています。そのような状況のなか、たとえ手術で乳房を全摘出しても、再び胸のふくらみが取り戻せることは、患者さんにとって大きな希望です。

一方、すでに乳房を全摘出した患者さんがもっとも多く感じることは、乳房がないことによる“不便さ”です。「乳房を切除したままだと洋服がきれいに着こなせない」「パッドがわずらわしい」といったさまざまな声を耳にします。「手術前にある程度想像していたとしても、乳房を失ってからその不便を強く実感する」と患者さんはおっしゃいます。また、「温泉やプールに行きにくい」「鏡を見たときに切なくなる」といった声も多く聞かれます。

このような患者さんにとって、乳房再建でふくらみを維持する・取り戻すことは“自信”をもってその後の人生を送ることにもつながります。下着を選ぶ楽しみができる、人目を気にせず行動ができる、といった当たり前の生活を送れることが、患者さんの自信や楽しみにつながってくるのです。

一方で、乳房再建を希望しない患者さんもいらっしゃいます。よく耳にするのは「入院期間が長くなるのが嫌」という意見です。また「あえて胸のふくらみをつくらなくてもいい」「ふくらみがなくてもあまり気にしない」という方もいらっしゃいます。乳房再建の必要性は、患者さんの価値観に大きく左右されるといえるでしょう。

乳房再建を行うかどうかは患者さんの状態・ライフスタイル・価値観などで変わります。「今後、自分がどう生きたいか」という、人生を左右する大きな選択になるため、信頼できる医師に相談しながら乳房再建をするかしないか、乳房再建をするのであればどの方法を選ぶのかを考えることが重要でしょう。

 

小宮貴子先生

乳房の再建には“乳房(乳がん)を切除する”“乳房を再建する”という2つのステップを踏む必要があります。この2つのステップをどのように進めていくかによって、4通りの再建パターンがあります。各パターンの内容と、メリット・デメリットをまとめました。

乳がん 表

表:東京医科大学病院 形成外科 乳房再建外来 ホームページより

乳がんの手術で乳房を切除したあと、引き続き再建手術を行います。

乳がんの手術を行う際、エキスパンダー(胸の形を維持しておくもの)をあらかじめ挿入し、後日再建手術を行います。

一度、乳がん手術は完了させ、後日1回の手術で再建します。

“乳がん手術”“エキスパンダーの挿入”“入れ替え手術”と3段階で進めていきます。

次に、乳房再建の2つの方法と、それぞれの方法のメリット・デメリットやアフターフォローについて紹介します。

自家組織による再建とは、患者さんのお腹や背中の組織を胸に持ってくる方法です。

この方法でつくられる乳房は自分の組織であるため、あたたかくて柔らかい、術後のケアが比較的安易というメリットがあります。

一方で、組織を採ってきた部分に傷が残ってしまうということがデメリットとして挙げられます。

自家組織による再建については、大きな負担になるケアが必要になることは少ないです。注意点としては“半年間は胸を圧迫しない・きつすぎる下着はつけない”“着物など胸部を強く締め付ける服はなるべく避ける”などが挙げられます。

自家組織による乳房の再建

図:東京医科大学病院 形成外科 乳房再建外来 ホームページより

人工物による再建とは、人工乳房(シリコンブレストインプラント)を使って胸のふくらみをつくる方法です。この方法は自家組織による再建とは異なり、他の部位から組織を持ってくる必要がないため、乳房以外に傷がつかない、手術時間が短いといったメリットがあります。

胸の形は人それぞれですが、インプラントの形は限られています。そのためインプラントの大きさや形が自分に合うか合わないかで仕上がりが変わります。自然な仕上がりを考えたときには、これがデメリットになることがあります。

自家組織による再建と比較すると、人工物による再建は“体への負担が少ない手術”である一方、“術後の繊細なケアが必要”といわれています。

手術後にリンパ液が溜まると赤みが出ることもあり、その場合には病院でケアが必要です。溜まったまま放置すると、感染源になりますので、特に術後は患者さん自身で再建乳房に異常がないか毎日のチェックが大切です。

そして、保険適用のシリコンブレストインプラントは、2年に1回は画像検査をして破損がないことを確認する必要があります。現在のところインプラントに破損がなければ積極的な交換は必要とされていませんが、挿入されているインプラントの種類によっては、数年後、交換のために再手術をうける必要がありますので、手術前に医師と相談するとよいでしょう。

人工物による乳房再建

図:東京医科大学病院 形成外科 乳房再建外来 ホームページより

乳がんの手術や乳房再建の手術方法は患者さんの希望や価値観、ライフスタイルを考慮して検討することで、その方にとってより快適な治療を選ぶことができます。どの手術がもっとも適切かを考えるうえで、多くの観点が必要となるため検討事項も多くありますが、信頼のできる医師と相談を重ねながら、よりよい治療法を選んでいきましょう。
 

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