インタビュー

肩関節周囲炎(五十肩)の症状と検査

肩関節周囲炎(五十肩)の症状と検査
中川 泰彰 先生

日本バプテスト病院 整形外科 主任部長、 京都大学 臨床教授

中川 泰彰 先生

この記事の最終更新は2015年07月18日です。

一般的に「五十肩」という名前で知られる、「肩関節周囲炎」という肩が痛くなる症状があります。この多くは自然に治ります。しかし、「たかが五十肩」と決めつけて診断を受けないのは危険です。なぜなら1週間以上の肩の痛みが続いている場合には腱板断裂など治療が必要な病気が隠れている可能性などもあり、一度整形外科でレントゲン検査などを受けて正確な診断をつけるべきだからです。

この記事では、肩関節周囲炎の症状と検査について、関節外科医として多くの学会で評議員を務められていらっしゃる、国立病院機構京都医療センター整形外科診療部長・京都大学臨床教授の中川泰彰先生にお話をお聞きしました。

医学的に肩関節周囲炎では、症状を三期に分類しています。
発症から約2週間を「急性期」、その後の約6ヶ月の期間を「慢性期」、それ以降を「回復期」といいます。

  • 急性期(発症から約2週間)

運動時の痛みだけでなく、安静時の痛みや夜間痛も出現します。しかし、強い痛みがつらいからと肩を動かさないでいると、肩の動く範囲が徐々に狭くなってしまいます。

  • 慢性期(急性期を経た後の約6ヶ月間)

痛みは徐々に軽減されてきますが、この時期はまだ肩の動く範囲が狭いままです。

  • 回復期(さらにその後)

関節の痛みや動きが徐々に軽快してきます。
痛みや肩の動く範囲がほぼ元の状態に回復するには、通常約1年前後かかると言われています。しかし、治療内容によっては数年経って同様の症状が再発したり、反対側に同様の症状が出たりすることもあります。

肩関節周囲炎は特別の治療をしなくても自然に治ることもありますが、動かさずに放置していると肩の関節が癒着(くっつくこと)して固まったり、無理に動かすと腱板(肩関節を安定させ動かすために重要な組織)などが損傷することがあります。そうなる前に整形外科を早く受診し、適切な治療をすることが大切です。

肩関節周囲炎は、通常片側の肩にのみ起こります。そして、一度治ったあとには再発もしにくいです。そのため、強い肩の痛みが繰り返し起きてしまうときや両側の痛みが出る場合には、ほかの病気が隠れている可能性も考えなくてはいけません。具体的には腱板断裂・変形性肩関節症・石灰性腱炎・頚椎の病気・骨腫瘍・内臓が原因の関連痛などが考えられます。

1週間以上の肩の痛みが続く場合には、整形外科を受診して診察を受けるべきです。
まず受けるべき検査として必須なのはレントゲン検査です。これは、肩関節周囲炎の確定診断をするためではありません。肩関節周囲炎はレントゲン写真では特に異常がないのがひとつの特徴だからです。レントゲン検査をする真の意味は、骨腫瘍・石灰沈着性腱板炎などの全く違う疾患を否定できるということ(除外診断といいます)にあります。大切なことは肩関節周囲炎以外の病気をきちんと見逃さないことにあるのです。
その後はMRI、超音波検査など、必要に応じた検査を行います。

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