せんてんせいすいとうしょう

先天性水頭症

最終更新日:
2024年05月29日
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2024/05/29
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2024/05/10
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2020/02/18
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概要

先天性水頭症とは、先天的な脳や脊髄(せきずい)の異常によって胎生期、または生後間もない頃に発症する水頭症のことを指します。日本では出生1万人あたり3人程度が発症するとされています。水頭症とは、脳や脊髄の表面を循環する脳脊髄液の流れが悪くなったり、血液中への脳脊髄液の吸収が正常に行われなくなったりすることで、脳脊髄液が過度に貯留する病気です。

脳や脊髄の表面は、“くも膜”と呼ばれる薄い膜で覆われており、くも膜と脳や脊髄の表面の隙間には“くも膜下腔”という空間があります。くも膜下腔内は脳脊髄液という液体で満たされており、脳や脊髄を外部の衝撃から守る重要な役割を果たしています。脳脊髄液は、脳の中にある脳室という空間で作られ、脳室の狭い通路を通ってくも膜下腔へ流れ込みます。そして、脳や脊髄の表面を循環すると、毛細血管に吸収されていきます。通常、成人では約150ml、小児では約100mlの脳脊髄液が循環し、脳室では1日に約500mlもの脳脊髄液が新たに作られ、古くなった脳脊髄液は次々と新しいものに入れ替わります。

このため、脳脊髄液が循環する過程のどこかに何らかの異常があると脳脊髄液が滞って溜まり続け、脳室と頭囲が拡大します。

先天性水頭症の原因は、生まれつきの脳の病気や奇形によるものもありますが、原因がはっきりしないケースも珍しくなく、近年では特定の遺伝子が発症に関与していることも分かっています。

原因

先天性水頭症の主な原因は3つあり、脳脊髄液の“過剰産生”、“流れの悪化”、“吸収の低下”であると考えられています。

なかでも特に多いのが、脳脊髄液の流れの悪化を引き起こす中脳水道狭窄症です。脳脊髄液は脳室にある脈絡叢(みゃくらくそう)で産生されます。ヒトには4つの脳室があり、脳脊髄液は左右の大脳半球内に対になって存在する“側脳室”と呼ばれる部位で産生されます。側脳室で作られた脳脊髄液は、“モンロー孔”と呼ばれる狭い通路を経て“第3脳室”へ移動し、さら“中脳水道”を経て“第4脳室”へ、そして“ルシュカ孔”や“マジェンディ孔”を経てくも膜下腔へ流れ込みます。中脳水道は非常に狭い通路であるため、この部位が生まれつき狭窄していると、側脳室や第3脳室に過剰な脳脊髄液が溜まって水頭症を引き起こします。

また、そのほかにも二分脊髄や脊髄髄膜瘤、全前脳胞症、キアリ奇形など脳や脊髄の奇形も脳脊髄液の循環に異常をきたすことがあり、先天性水頭症の原因となる場合があります。さらに、母体内で何らかのウイルスや細菌に感染することで、脳にダメージが加わった場合も、先天性水頭症を発症することがあるとされています。

一方で、先天性水頭症ははっきりとした原因が分からないことも少なくありません。近年では先天性水頭症に遺伝が関与するケースがあることは分かっており、X染色体上の“L1CAM”など原因遺伝子の特定も進んでいます。

症状

先天性水頭症は、脳室が拡大するとともに頭囲が拡大します。これは、胎生期や乳児期は頭蓋骨を構成する骨同士がしっかりとくっついていないため、脳室の拡大に伴って頭蓋骨が押し広げられ、頭囲も拡大するためです。このため、脳室が拡大したとしても脳圧(頭蓋骨内部の圧)の上昇は軽度となります。

また、先天性水頭症の7割近くは生後早い段階で手術をすれば症状は改善し、知能や運動機能などに障害を残すことはほとんどありません。しかし、先天性水頭症の原因が脳に重大なダメージを与える病気である場合は、発育の遅れなどが目立つこともあります。

また、緩やかに症状が進むタイプの先天性水頭症では、小児期にはほとんど症状が見られず、成人になって発症することがあります。この場合、頭痛めまい、意識消失などの症状が現れ、脳や脊髄がダメージを受けることで運動機能や感覚機能に障害を引き起こすことも少なくありません。

検査・診断

胎児の状態を観察する超音波検査の進歩に伴い、先天性水頭症は妊娠22週目以降、胎生期に発見されることが増えています。また、胎生期に発見されなかった場合でも、生後間もない頃に頭囲の拡大が指摘されて発見されるケースもあります。

先天性水頭症が疑われるときは次のような検査が行われます。

頭部CT、MRI検査

脳室の拡大を観察するには頭部CT検査やMRI検査がもっとも適しています。しかし、胎生期の場合は、放射線被ばく量の多いCT検査を実施することは望ましくないため、MRI検査を行うのが一般的です。

また、脳の奇形が原因である場合は、生後であってもCT検査だけでなくMRI検査も行う必要があります。

超音波検査

乳児は頭頂部に“大泉門”と呼ばれる頭蓋骨の隙間が存在します。この隙間から超音波検査を行うと脳室の大きさなどを簡易的に調べることができます。超音波検査は短時間で行うことができるため、診断に役立つだけでなく、経過観察を行うために実施されることがあります。

治療

先天性水頭症では、原因や症状に合わせて次のような治療が行われます。

シャント手術

脳室内にたまった脳脊髄液を体のほかの部位へ排出させる経路を作る手術で、一般的に行われるのは“脳室―腹腔シャント(V-Pシャント)”です。この方法では脳室と腹腔(腹膜で囲まれた腹部の空間)を細い管でつなぎ、脳脊髄液を腹腔内に排泄させます。

体重が2,500gを越えるとシャント手術に踏み切る医療機関が多いですが、低出生体重児などでは手術に耐えられる体重に達するまでの期間、脳室に管を通してそこから直接脳脊髄液を定期的に抜き取る治療を行います。

また、先天性水頭症の場合は、身体の成長とともに脳室から腹腔に通した管の長さが足りなくなるため、成長段階に合わせて再手術を行う必要があります。

第3脳室開窓術

頭蓋内に内視鏡を挿入し、第3脳室の一部を拡張することで脳室内の脳脊髄液の流れを改善する治療方法です。主に中脳水道狭窄症などに対して行われる治療で、シャント手術よりも体への負担は少ないとされています。しかし、1歳以下で手術を行った場合の成功率は半数程度であり、シャント手術のタイミングを逃さないよう注意する必要があります。

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