概要
先天性角化異常症とは、生まれつき角質細胞や表皮角化細胞に異常が生じ、さまざまな皮膚症状を引き起こす病気の総称です。遺伝性角化異常症や先天性角化不全症と呼ばれることもあります。
症状の現れ方は病気の種類によって異なりますが、皮膚がガサガサしたり、赤くなったりするといった見た目の変化が生じるほか、皮膚のバリア機能が低下することで感染症のリスクが高くなります。
原因
先天性角化異常症の多くは遺伝子の変異によるものです。代表的な病気と原因遺伝子としては以下が挙げられます。
症状
先天性角化異常症の症状は、原因遺伝子によって大きく異なります。
先天性角化異常症の中でもさまざまな種類がある魚鱗癬は、全身の皮膚が乾燥またはざらざらとした状態になり、皮が剥けやすくなるのが特徴です。同じく先天性角化異常症の1つである掌蹠角化症は、手のひらや足の裏の角質が厚く硬くなるのが特徴です。病型によっては、手のひらや足の裏の発汗過多のほか、精神遅滞や爪の変形、歯肉炎などを合併することもあります。
そのほか、ダリエー病は皮脂が多い部位や腋の下などの皮膚同士が擦れやすい部位に、角化性丘疹と呼ばれるぶつぶつが現れます。特に汗が多くなる時期になると悪化するのが特徴です。さらに、口腔粘膜の丘疹や爪甲の変形、精神遅滞などを伴うことがあります。
検査・診断
先天性角化異常症が疑われる場合は、以下の検査を行います。
病理検査
皮膚の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。先天性角化異常症とそれ以外の病気との鑑別を行うのに適した検査とされています。
遺伝子検査
先天性角化異常症は遺伝子の変異によって生じるため、遺伝子変異の有無を調べる検査を行います。
遺伝子検査は、一般的には採血した血液から遺伝子を取り出して調べます。ただし、症状が一部の皮膚に限定されているようなケースでは、麻酔下で皮膚の一部を採取(皮膚生検)して遺伝子検査を行うこともあります。
血液検査
先天性角化異常症は、病気の種類によっては皮膚の症状以外にも、感染症や低カルシウム血症、低タンパク血症などを引き起こすことがあります。そのため、全身の状態を把握する目的で血液検査を行います。
治療
先天性角化異常症の治療では、症状を緩和させるための薬物療法が行われます。
具体的には、サリチル酸ワセリン、尿素軟膏、活性型ビタミンD3軟膏などの塗り薬やレチノイドの飲み薬などを使って、皮膚の乾燥などの症状を緩和する治療を行います。
また、病気によっては皮膚の感染症や脱水などを起こしやすい場合があるため、内服薬(飲み薬)を用いた治療や点滴による水分補給など、全身の管理が必要になることがあります。
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