変形性膝関節症とは、加齢などにより膝の軟骨がすり減ることで膝に痛みや腫れが生じる病気です。悪化すると膝の曲げ伸ばしがしづらくなり、日常生活にも支障をきたすため、適切なタイミングで適切な治療を受けることが大切です。
今回は変形性膝関節症の症状や治療について、聖路加国際病院 整形外科部長の北村 信人先生にお話を伺いました。
膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)で構成されており、これらの骨が接する部分の表面は軟骨で覆われています。軟骨には膝関節の動きをなめらかにしたり、膝を動かす際の衝撃を和らげたりする役目があります。
変形性膝関節症とは、この軟骨の質が悪くなったり、すり減ったりすることで膝に痛みや腫れなどを引き起こす病気です。軟骨が徐々にすり減り、やがて消失してしまうと膝の変形を伴うこともあります。
国内の研究報告では、40歳以上の方のうち、X線(レントゲン)で膝の変形がみられる方は2,500万人以上いると推定されています。なかでも痛みや腫れなどの自覚症状がある変形性膝関節症の方は約800万人といわれています。なお、女性は男性よりも2倍ほど発症リスクの高いことが明らかになっています。
変形性膝関節症は、明らかな原因を特定できない“一次性”と、病気や骨折などをきっかけに発症する“二次性”に分類されます。
一次性の変形性膝関節症を引き起こす要因として考えられるものは以下のとおりです。当てはまる要因が複数ある方は発症リスクが高いと考えられます。
40歳代以降で発症リスクが高くなることが報告されています。また、加齢とともに進行しやすい病気であることが明らかになっています。
2005年~2007年の調査結果では、変形性膝関節症の患者さんの男女比は1:2ほどとなっており、男性よりも女性の発症リスクが高いことが分かっています。
体重が重いほど膝にかかる負担が大きくなるため、肥満はリスク因子の1つとされています。
O脚(膝が外側に曲がっている病態)やX脚(膝が内側を向いている病態)といった下肢アライメント(骨の配列)の異常は、変形性膝関節症のリスク因子といわれています。
重い荷物を運ぶ仕事や正しい姿勢を邪魔する生活習慣も膝への負担となるため、変形性膝関節症の原因の1つです。
変形性膝関節症の発症には遺伝も関係するといわれています。親御さんが変形性膝関節症の方は、リスク因子がある可能性があります。
二次性の変形性膝関節症の代表的な原因は、半月板(軟骨にかかる負荷を和らげる役割などを担う組織)の損傷です。また、半月板損傷のある方はいずれ変形性膝関節症を発症するリスクが高いといわれています。
変形性膝関節症ではまず痛みが現れるため、受診される患者さんの多くは膝の痛みを訴えて受診されます。なお、病気が進行するにつれて徐々に痛みが強くなり、それに伴い膝が腫れたり、膝の曲げ伸ばしがしづらいといった動きの制限につながったりするため、日常生活にさまざまな支障をきたすようになります。
以下では、初期・中期・末期のそれぞれの時期に現れる症状について解説します。
歩き始めや階段の上り下りなど、動作を始める際に膝に痛みを感じるケースがほとんどです。初期の段階では痛みは出るけれども休むと痛みが取れるといった程度のもので、腫れや関節の動きの制限はほとんどありません。
病気が進行すると、休んでも膝の痛みが取れなかったり、膝が腫れてきたりします。場合によっては膝に水がたまることもあります。水がたまると膝を曲げ伸ばししづらくなるので、正座やしゃがむ姿勢で痛みを強く感じたりすることもあるでしょう。
末期になると、痛みや腫れ、関節の動きの制限といった症状に加えて、見た目に分かるほど脚の変形が進んだ状態になり、O脚(またはX脚)が悪化します。軟骨のすり減っている範囲が広がっている状態ですので、体重がかかるたびに痛みが出たり、膝の曲げ伸ばしができなくなったりします。そのため、歩行はもちろんのこと、トイレやお風呂、家事といった生活動作を今までどおり行うことが難しくなります。
変形性膝関節症は急激に進行する病気ではありませんが、加齢とともに症状が進むため、適切なタイミングで治療を受けることが重要です。また、早期に発見できれば進行しないように生活習慣を改善することもできますから、膝に痛みがある方はできるだけ早く病院を受診することをおすすめします。
膝に痛みや腫れを生じる病気の中には早期治療が必要な病気もあります。新型コロナウイルス感染症の影響で受診を控える方もいらっしゃるかもしれませんが、「膝が痛いのは歳のせい」と自己判断せず、なるべく早く病院で検査を受けましょう。
一般的にX線検査とMRI検査を行い、変形性膝関節症の診断を行います。
膝の痛みで受診された方に対しては、まずX線検査を実施します。X線検査では、骨の変形や脚のアライメントの状態、関節の隙間(関節裂隙)が狭くなっていないかをみていきます。
また、X線検査では広範囲を撮影できるので、O脚やX脚の有無やその程度を確認することも可能です。
X線検査の所見と患者さんの痛みの訴えとが一致しない場合には、早期変形性膝関節症(X線検査では判別できない変化が軟骨や半月板に生じている病態)の可能性もあるので、MRI検査でさらに詳しくみていきます。また、X線検査では変形性膝関節症の所見がほとんどないにもかかわらず強い痛みを訴えている場合には、変形性膝関節症以外の病気が隠れている可能性があるため、積極的にMRI検査を行います。
変形性膝関節症は、発症してしまうと加齢とともに進行していく病気です。治療せずにいると徐々に進行していく病気ですから、適切なタイミングで適切な治療を受けることが重要になります。
特に年齢が若い方は、人工膝関節置換術という手術を受ける時期をできる限り遅らせる必要があります。早期に受診いただければ手術以外の治療で症状を和らげ、病気の進行を遅らせることも可能であると考えられます。膝の痛みを我慢してしまったことで治療選択の幅を狭めてしまうことがないよう、症状がある方は早めに病院を受診してください。
当院を初めて受診される方は、当院宛の紹介状をご用意のうえ、予約センターにご連絡ください。
北村先生に無料で相談
学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 副院長、整形外科部長、スポーツ総合医療センター長、リハビリセンター長
こんなお悩みありませんか?
「変形性膝関節症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。
なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。