たけいこうはん

多形紅斑

最終更新日:
2023年08月29日
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2023/08/29
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2023/08/02
更新しました
2017/04/25
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概要

多形紅斑(EM)とは、皮膚に赤い発疹(ほっしん)や浮腫(むくみ)が複数生じる病気です。多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)と呼ばれることもあります。発疹は1~2cmほどの大きさで、通常の皮膚との境界がはっきりしており、中央が少し盛り上がっていることなどが特徴です。好発部位は手足ですが、進行すると体全体に広がることもあります。

軽症の場合と重症の場合では、治療法や経過が異なります。軽症の多形紅斑は比較的ありふれた病気で、薬物療法によって1~2週間程度で治癒する例がほとんどです。一方、重症の多形紅斑では発熱や関節痛、体のだるさなどの全身症状が現れます。ときに肝機能障害や多臓器不全などの合併症が起こることもあるため、慎重な管理が必要です。特に唇や目に赤みやびらんが生じる例をスティーブンス・ジョンソン症候群*、それ以上に重症な場合を中毒性表皮壊死症(ちゅうどくせいひょうひえししょう)**と呼びます。

日本における重症の多形紅斑の発症頻度は年間で100万人あたり1~10人程度とされています。中でも重症度が高いスティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症を合わせた発生頻度はより細かい数字が報告されており、100万人あたり4.4人程度とされています(厚生労働省研究班による2005~2007年調査)。

*スティーブンス・ジョンソン症候群……皮膚の紅斑、水ぶくれ、びらん、発熱に加え、目や唇、外陰部など皮膚と粘膜の境となる部分に強い粘膜の病変(充血、ただれなど)が生じる。主に医薬品の服用や、マイコプラズマなどのウイルス感染などを原因に発症する。

**中毒性表皮壊死症……広範囲に紅斑が生じ、全身の10%以上に水ぶくれやびらん、皮剥けが現れるほか、高熱が生じ、粘膜にも発疹が生じる。主に医薬品を原因に発症することが分かっている。

原因

多形紅斑の主な原因はウイルスや細菌への感染、治療薬の服用ですが、はっきりと原因が分からない場合もあります。原因不明の多形紅斑は女性に起こりやすく、決まった季節に繰り返しみられるという特徴があります。

ウイルス・細菌感染

原因となりうるウイルス・細菌としては、単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマ細菌、レンサ球菌などが挙げられます。

治療薬の服用

医薬品の服用によって生じる発疹を“薬疹(やくしん)”といいます。多形紅斑を引き起こす治療薬は広範囲にわたりますが、主に抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬、抗けいれん薬、抗悪性腫瘍(しゅよう)薬などが挙げられます。また、画像検査の際に使用されることのある造影剤の投与をきっかけに発症することもあります。

治療薬を原因とする多形紅斑は、服用を開始して数日から2週間程度で発症することが一般的です。ただし、ときに服用から1か月以上経過した後に発症することもあります。

症状

多形紅斑の主な症状は、皮膚に生じるかゆみを伴う赤い発疹です。手足を中心にさまざまな大きさの丸い発疹が複数生じることが一般的で、周辺が盛り上がり、中央は凹んだような形をしています。病気の進行とともに発疹が大きくなり、水ぶくれが生じることもあります。

重症例では、皮膚に生じる赤い発疹が全身に広がり、発疹同士が融合してより大きくなり皮がむけることもあります。また、水ぶくれが破れることもあります。

加えて発熱や体のだるさ、喉の痛み、関節痛などの全身症状が現れるほか、唇や口の中、鼻の中、外陰部、尿道、肛門(こうもん)周辺など粘膜部分にも赤みや水ぶくれ、出血などが見られることがあります。また、目に充血や目やになどの症状が現れたり、内臓に病変が広がったりすることがあります。

重症例では、肝機能障害や多臓器不全敗血症といった合併症がみられるほか、治癒後も視力障害などの後遺症が残る可能性があります。

検査・診断

多形紅斑は皮膚の症状が特徴的であるため、一般的には視診によって診断がつきます。ただし、似たような症状を示すほかの病気も存在するため、より正確な診断を行うために病変部分を採取して病理組織検査を行うこともあります。

治療薬の服用が原因で発症することもあるため、何らかの治療薬を服用している場合には、いつ頃からどんな治療薬を服用しているか、医師や薬剤師に説明できるようにしましょう。

また重症の可能性がある場合は、肝臓など内臓の障害を確認するために血液検査を行うこともあります。

治療

治療薬の服用が原因となっている場合、速やかにその治療薬の服用を中止します。また、具体的な治療方法は軽症例と重症例で大きく異なります。

軽症の場合

軽症の場合は、一般的に薬物療法が検討されます。具体的には、ステロイドの塗り薬や抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬といった飲み薬の処方が挙げられます。

重症の場合

重症の場合は、入院が必要となることが一般的です。治療の中心は薬物療法で、まずステロイドの内服あるいは点滴が検討されます。ステロイドでは効果がみられない場合には、免疫グロブリン製剤の注射や、患者の血液から血漿(けっしょう)のみを分離して関連物質を除去する血漿交換療法(けっしょうこうかんりょうほう)などの併用も検討します。

重症例では合併症や後遺症が起こりやすいため、以上の治療と並行して病変部分の処置や眼科医による厳重な管理・治療、栄養管理、感染防止などへの配慮も必要です。

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