概要
感電とは、外からの大きすぎる電流が体のなかを流れることによって重大な損傷が生じる病気で、医学的には電撃傷または雷撃傷と呼ばれます。家庭内のコンセントからの漏電や、断線した電線などが原因となるものを電撃傷と呼び、落雷の被害に巻き込まれて生じるものを雷撃傷と呼びます。電流とはまさに「電気の流れ」のことですが、電気は電気抵抗(電気の通りにくさ)が低いほど流れやすくなります。ひとの体は一般的には電気抵抗が大きいため、外からの大きな電流は流れにくくなっています。しかし、高電圧の電流がひとの体にかかると、表面の皮膚だけでなく内部の筋肉や心臓、血液などにも損傷が及んでしまい、重大な危険が生じてしまいます。
原因
感電の原因は、高電圧の電線事故などによるものや、落雷によるものなどがあります。体にかかる電流が大きいほど、体のなかの深いところにある臓器に損傷が起こる傾向があります。感電による組織の損傷は、主に電気のエネルギーが熱エネルギーに変換されることで熱傷(やけど)が生じることによるものです。皮膚で熱傷が生じればいわゆる「やけど」になりますが、血液のなかの細胞に損傷が入ると溶血(赤血球という細胞の細胞膜が破裂する)し、筋肉などの組織では細胞が固まって死滅する(凝固壊死)ことになります。
乳幼児では電気コードを口に入れたり、コンセントの差込口に針金をいれてショートさせたりすることにより、受傷することがあります。
症状
感電の症状は、感電による損傷が皮膚に及べば熱傷が生じて、皮膚の痛みや発熱、強い全身の炎症や脱水症状が生じます。筋肉に及べば激しい筋肉の痛みや、筋肉の細胞が壊れることによる横紋筋融解症が生じる場合があります。これは、筋肉などの細胞に融解や壊死が起こることで、大量の筋細胞成分が血液中へ流出し,急性腎不全を起こして命にかかわることもある病気です。腎臓の機能を障害したり電解質異常を招いたりして、危険な状態になりえます。心臓に及べば心室細動や心静止などの危険な不整脈が生じることもあります。
一方で、電流による皮膚のやけどの程度と、臓器の傷害の程度は一致しないこともあります。
検査・診断
感電の診断には、まずどのような状況で電気を受けたのかを把握することです。生命に危険が及ぶ病気ですので、生命を守るための全身管理を迅速に行いながら、全身のどこに感電による損傷が起こっているのかを調べます。血液と尿の検査、心電図、全身のCT検査、意識障害が続く場合には脳MRIの検査を行います。
電撃を受傷した際には、受けたエネルギーによって跳ね飛ばされ、転落や墜落をしていることもあります。そのため、受傷した部位だけではなく、外傷の診療手順に則り、全身をしっかり診察する必要があります。
治療
呼吸や循環などの全身管理を行いながら、それぞれの異常を治療していきます。
熱傷に対しては熱傷の重症度に応じた治療(洗浄、軟膏、壊死した組織を取り除くなど)を行います。横紋筋融解症の危険があるときは、大量の輸液を行いながら必要に応じて血液透析を行うこともあります。心臓への強いダメージがあって危険な不整脈がみられるときには、心臓をサポートするための体外循環装置(PCPS,ECMO)を用いることもあります。中枢神経系の損傷で呼吸が十分にできない場合には、人工呼吸器を用いて呼吸の補助を行いながら、リハビリテーションを行っていきます。
家庭内での事故の場合、再び同じような傷害が発生しないよう、安全対策を実施して予防することが必要です。
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