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絞扼性神経障害とは? 手のしびれや巧緻運動障害の原因になる

絞扼性神経障害とは? 手のしびれや巧緻運動障害の原因になる
寺本 憲市郎 先生

熊本機能病院 院長

寺本 憲市郎 先生

目次
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思い当たる原因がないのに手がしびれる、指の動作がぎこちない・こわばる(巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい))といった違和感はありませんか。こうした症状は、絞扼性神経障害(こうやくせいしんけいしょうがい)によって引き起こされている可能性があります。治療により改善が期待できるため、気になる症状があれば整形外科で相談することが大切です。本記事では、絞扼性神経障害とはどのようなものか述べるとともに、主な症状や治療方法について、熊本機能病院 院長の寺本 憲市郎(てらもと けんいちろう)先生に伺いました。

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私たちの手の感覚や指の運動などをつかさどる神経は、脳から背中を通り手へとつながっています。その途中で何らかの原因によって神経が圧迫(絞扼(こうやく))されると、神経が支配している領域に“手や腕のしびれ・痛み”や“巧緻運動障害(手指の運動のこわばり・ぎこちなさ)”といった症状が起こることがあります。これを、絞扼性神経障害といいます。

絞扼性神経障害の症状の程度は人によってさまざまであり、その原因となる病気も1つではありません。ここでは、絞扼性神経障害をきたす主な病気とその特徴について説明します。

絞扼性神経障害をきたす病気の中でも特に患者さんが多いのは手根管症候群です。手根管症候群とは、手関節にある手根管というトンネル(神経の通り道)が狭くなり、内側を通っている正中神経が圧迫されて、手指のしびれや痛みなどが生じる状態を指します。

しびれや痛みの出る場所は、親指、人差し指、中指、薬指の内側(親指側)です。症状が軽度のときは、人差し指と中指だけがしびれることもあります。病気が進行して親指の付け根の筋肉(母指球筋)が瘦せると、ボタンをかける動作や縫い物など、物をつまむ動作がうまくできなくなります(巧緻運動障害)。

手根管症候群は中年の女性に多く、症状は朝方に強くなって手を振ると少し和らぐことが特徴です。

肘部管症候群は、絞扼性神経障害の原因としては2番目に多くみられる病気です。肘関節の内側にある肘部管というトンネルを通る尺骨神経(しゃっこつしんけい)が圧迫されたり引っ張られたりすることにより、手指のしびれや痛みなどが生じます。

主な症状は、薬指、小指、手のひらや手首の外側(小指側)のしびれ・痛みです。症状が進行すると、手指を動かす筋肉(手内筋(しゅないきん))が麻痺し痩せてきて、物を掴む力が低下します。また箸動作、書字などの指先の細かい動作がうまくできなくなります(巧緻運動障害)。さらに、かぎ爪変形や鷲手変形(わしてへんけい)と呼ばれる薬指と小指の変形が起こります。

肘部管症候群は肘をよく使う方に起こることが多く、肘の骨折やけがなども発症に影響するといわれています。

上述した手根管症候群や肘部管症候群のほかにも、絞扼性神経障害を引き起こす病気の1つとして胸郭出口症候群が挙げられます。

手につながる神経や血管は、首の筋肉、鎖骨、肋骨(ろっこつ)などによってつくられる胸郭出口という狭い通路を通ります。このとき、神経や血管が圧迫されて手にさまざまな症状が出てくる状態が胸郭出口症候群です。

症状としては主に、手の小指側のしびれや、肩や腕の痛み、冷感などが生じます。こうした症状は、重い物を持つ・吊革に掴まる・洗濯物を干すといった腕を上に挙げる動作によって強くなることがあります。また、進行すると握力が低下したり、指先がうまく動かなくなる巧緻運動障害が起こったりします。

胸郭出口症候群は、なで肩の女性や重い物を持つ職業の方、肩こりがある方などに起こりやすいことが特徴です。

MN作成

次のようなチェックを行って各種症状がみられる場合、絞扼性神経障害の可能性が考えられます。

  • 手根管症候群……両手の手首を直角に曲げて手の甲をつけたままにすると、1分間以内にしびれや痛みが悪化する
  • 肘部管症候群……肘の内側を軽く叩くと小指にしびれや痛みが広がる
  • 胸郭出口症候群……座った状態で肩を挙げて胸を大きく張り、肘を90度に曲げて手の開閉(グーパー)を行うと3分間以内にしびれやだるさが生じる

絞扼性神経障害は、専門の医師が問診を行って患者さんの訴えを聞くことで、ある程度は病気の見当がつけられます。そのほか、関節をゴムのハンマー(打腱器)で叩いて反射を調べる検査や、骨や関節に異常がないかを確かめるX線(レントゲン線)検査などが行われます。

なお、手足のしびれや痛みなどの原因には絞扼性神経障害のほかにも、一時的な血行不良、頚椎(けいつい)(くび)の病気、スポーツによるけが、脳腫瘍(のうしゅよう)や脳血管障害などさまざまなものがあります。こうした病気やけがが原因になっていることもありますので、原因をきちんと調べて治療するには専門の医師の診察を受けることが大切です。気になる症状があれば、整形外科などで相談することをおすすめします。

保存療法

手根管症候群の治療では、まずはできるだけ手や指を動かさないよう安静を保つとともに、手首にコルセットなどを装着し固定することで症状が改善することがあります。炎症を抑えるために投薬やステロイド注射を行うこともあります。

手術療法

保存療法を行っても症状が改善せず患者さんのご希望がある場合には、手術療法を検討します。特に、親指の付け根の筋肉(母指球筋)が痩せてきている場合は手術が必要となります。具体的には、正中神経を覆っている手根管を切開して手根管を開放する手術が行われます(手根管開放術)。

保存療法

肘部管症候群の治療では肘関節を安静にすることが第一ですので、日常生活のなかでなるべく肘を曲げないよう注意しましょう。また、痛み止めやビタミン剤の内服、ステロイド注射などが有用です。

手術療法

安静や投薬により症状が改善しない場合や、手指を動かす筋肉(手内筋)が痩せてきている場合は手術療法を検討します。肘関節の内側を切開し、尺骨神経を圧迫している靱帯(じんたい)や筋肉などを取り除きます(肘部管開放術)。

保存療法

胸郭出口症候群の治療においてまず重要なことは、痛みが出やすい姿勢を取らないよう心がけることです。また、重い物を持ち上げる運動や腕を挙げた状態が続く仕事などは避けたほうがよいでしょう。軽症であれば肩甲骨(けんこうこつ)周囲の筋のストレッチや運動を行い、症状が強い場合には薬物療法や神経ブロックという注射を行うこともあります。

手術療法

保存療法では改善しないような強い症状がある場合、手術療法が行われます。病気の状態によって手術方法は異なり、神経や血管を圧迫している筋肉あるいは肋骨を切除する方法などがあります。

当院の整形外科は、手根管症候群をはじめとした絞扼性神経障害の診断や治療を行っています。整形外科は骨や関節、筋肉などさまざまな組織に障害をきたす病気を幅広く扱う診療科ですが、当科には手外科を専門とする医師が在籍し、専門分野を生かして絞扼性神経障害の診断・治療に取り組んでいることが特徴です。特に手根管症候群については、小さな穴を開けて行うため患者さんへの負担が少ない内視鏡下の手術を早期から取り入れ治療しています。また、医師以外の医療スタッフと連携しながら必要に応じてリハビリテーションを提供するなど、治療を終えた患者さんの生活の質(QOL)向上にも努めています。手のしびれや動作のぎこちなさなど、気になる症状があれば遠慮なくご相談ください。

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