しんせいじずいまくえん

新生児髄膜炎

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概要

脳や脊髄(せきずい)は、髄膜(ずいまく)と呼ばれる膜によって保護されており、髄膜と脳・脊髄の間は髄液(ずいえき)という液体で満たされています。新生児髄膜炎(しんせいじずいまくえん)とは、新生児期において髄膜及び髄液に炎症が生じた病気を指します。

新生児髄膜炎の原因は、細菌、ウイルス、真菌、薬剤など多岐に渡ります。そのなかでも、原因の大半を占めるのが細菌です。新生児は出産というイベントを経ていることから、周産期に関連した細菌(B群溶血性連鎖球菌(びーぐんようけつせいれんさきゅうきん)や大腸菌など)が原因となることが多いです。

新生児は免疫機能が未熟であり、髄膜炎を発症すると重篤な経過をたどることもまれではありません。新生児髄膜炎は、積極的な治療介入にもかかわらず神経学的後遺症を残すことも多い病気です。

原因

新生児髄膜炎は、新生児期において髄膜及び髄液に炎症が生じた病気を指します。炎症が生じる原因としては、細菌やウイルス、真菌などの感染症のほかにも、薬剤がきっかけになることもあります。しかし、新生児髄膜炎の大多数は、細菌を原因として引き起こされる「細菌性髄膜炎」になります。細菌性髄膜炎は、新生児敗血症の続発症として発症することもあります。

新生児髄膜炎は、出生後からまもなく発症するものと数週間後に発症するものに分けられます。

出生後まもなく発生する新生児髄膜炎としては、B群溶血性連鎖球菌を代表的な原因として挙げることができます。B群溶血性連鎖球菌は母体の(ちつ)に常在することのある菌であるため、分娩(ぶんべん)時に母体から赤ちゃんへと移行することになります。この菌が赤ちゃんの皮膚(ひふ)に付着することで即新生児髄膜炎を発症する訳ではなく、ごく一部の赤ちゃんにおいて皮膚の傷口などを侵入門戸として、B群溶血性連鎖球菌が血液中に侵入することで、髄膜炎を引き起こすことになります。B群溶血性連鎖球菌は病状の進行が非常に急速であり、出生後短い時間で髄膜炎を引き起こします。ただし、ときには数週間経過したのちに髄膜炎を引き起こすこともあります。

また、出生後まもなく発症する新生児髄膜炎では、大腸菌が原因となる頻度も高いです。大腸菌は、消化管内に常在する菌であり、同じく出産をきっかけとして母体から赤ちゃんへと移行することになります。大腸菌は尿路感染症敗血症を起こすことがあり、大腸菌が血液に侵入することから髄液へと移行し、新生児髄膜炎を引き起こします。

そのほか、リステリアも原因菌となりえます。リステリアは乳製品を中心とした食物から感染することがあり、妊婦さんが感染すると下痢症状を発症することがあります。母体に感染したリステリアは、胎盤を介して胎児並行することがあり、出生後まもなく発症する新生児髄膜炎の原因となる場合がます。

出生から数週間で発症する新生児髄膜炎としては、出生後に暴露される環境中の常在菌が原因となることが多くなります。代表的には黄色ブドウ球菌と呼ばれる菌が原因となり、そのほかインフルエンザ桿菌、肺炎球菌なども原因となる可能性があります。

また、血液中に細菌が存在する敗血症が生じると、血液を介して髄液に細菌が侵入することになり、新生児髄膜炎が発症します。生まれつき髄液が外部の環境と物理的に交通していることもあり、この場合においても新生児髄膜炎を発症することになります。

症状

新生児髄膜炎は、新生児敗血症をきっかけとして発症することも多く、新生児敗血症で見られるような症状を認めます。具体的には、無呼吸もしくは多呼吸、呻吟(しんぎん)(呼吸時にうなる)、鼻翼呼吸(鼻の孔を広げて呼吸する)、陥没(かんぼつ)呼吸(肋骨の間や胸骨の上部がへこむ呼吸)、頻脈や徐脈、末梢の冷感、血圧低下、発熱もしくは低体温、腹部膨満(ぼうまん)黄疸(おうだん)などです。

そのほか、髄膜に炎症が生じていることをより特異的に表現している症状として、嘔吐、傾眠傾向、けいれんなどがあります。健康な状態の赤ちゃんは両親に抱っこされると落ち着くことが多いですが、新生児髄膜炎では刺激性が高まっているため、逆に落ち着きがなくなることもあります。また、炎症に伴い頭蓋(ずがい)内の圧力が高くなっていることを反映して、大泉門(頭頂部の骨と骨がくっついていない部分)が膨隆(ぼうりゅう)します。成人で見るような「項部硬直」といった症状は、新生児においてはあまり見られません。神経症状の一つとして、眼球運動の異常が観察されることもあります。

検査・診断

新生児髄膜炎の診断は、髄液検査をもとにしてなされます。髄液は本来細菌やウイルスが存在しない清潔な領域ですが、感染性の新生児髄膜炎が発症した場合には、髄液にてこうした病原体を認めることになります。

新生児髄膜炎で多い細菌性髄膜炎の場合、髄液中に細菌の混入を認めること以外に、タンパク質の上昇や糖分の低下などの所見も同時に認めます。髄液を用いて顕微鏡的に「グラム染色」と呼ばれる顕微鏡検査が行われることもあり、所見から原因となっている病原体を推察します。また、髄液を培養することで、混入している細菌を同定することも重要です。病原体を同定するのみではなく、効果のある抗生物質を選択する上でも非常に有益な検査です。

新生児髄膜炎では、血液を介して病原体が髄液中に混入します。したがって血液を用いて培養検査を行うことも重要です。

新生児髄膜炎では、髄膜炎から炎症が脳室炎までに波及することがあります。また、経過中に硬膜下水腫(こうまくかすいしゅ)などの合併症を生じることもあります。こうしたことを評価するために、超音波検査やCT、MRIといった画像的な評価を行うこともあります。

治療

新生児髄膜炎の原因の大半は、細菌性髄膜炎であるため、治療の中心は抗生物質の投与です。診断当日からしばらくは、原因となっている細菌が同定されることは少なく、それまでの臨床経過や日齢などをもとにして可能性の高い病原体を推定し、それに対応できるような抗生物質を使用します。

たとえば、生後間もなく発症する新生児髄膜炎ではB群溶血性連鎖球菌や大腸菌やリステリアを原因菌とする可能性があるため、抗生物質を併用して治療します。

培養検査結果が判明すると、薬に対する細菌の感受性も明らかになります。薬剤感受性結果をもとに、より治療効果の高い抗生物質へと治療薬が変更されます。

また、原因菌によっては母体に対しての予防策を講じることが可能な場合もあります。たとえば、母体がB群溶血性連鎖球菌を有しているときには、出産に際して母体にアンピシリチンといった薬が使用されます。

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