概要
新生児高ビリルビン血症とは、新生児の血中ビリルビン濃度が高くなっている状態を指します。ビリルビンとは、赤血球が分解される際にヘモグロビンから作られる物質です。またインターネット上では、新生児黄疸と検索されていることも多いようです。
新生児高ビリルビン血症は、生理的なものと病的なものに分けて捉えることができます。
生理的な新生児高ビリルビン血症
生後数日の赤ちゃんには、生理的黄疸がみられることがあります。生理的黄疸とは、出生を機に胎児期特有の赤血球が分解され、一時的にビリルビンが増える生理的な現象です。生理的黄疸は、通常1~2週間ほどで自然に消えていきます。
病的な新生児高ビリルビン血症
新生児高ビリルビン血症とは、生理的現象の範囲を超えてビリルビンが増える状態です。これにより、病的な黄疸が現れることがあります。
血中のビリルビン濃度が高い状態が続くと、脳性麻痺などを引き起こす核黄疸に繋がることがあるため、早期発見・早期治療を始めることが大切です。
※この記事では、病的黄疸の出現に関係する新生児高ビリルビン血症について解説します。生理的な新生児高ビリルビン血症については、生理的黄疸のページをご覧ください。
原因
ビリルビンが過剰※に作られたり、ビリルビン排泄が低下したりすることで、病的黄疸をきたす新生児高ビリルビン血症が生じます。
※ここでは、生理的な範囲を超えて産生されている場合を「過剰」と記載しています。
ビリルビン産生過剰
以下のような因子により、ビリルビンが過剰に作られることがあります。
ビリルビン排泄の低下
以下のような因子により、ビリルビンが体外へ排泄されにくくなることがあります。
産生過剰と排泄低下
ビリルビンの過剰な産生と排泄の低下の両者により、病的黄疸を来す新生児高ビリルビン血症が引き起こされることがあります。未熟児であることや出生前・出生後の感染などがリスク因子とされています。
症状
新生児高ビリルビン血症では、生理的なものでも病的なものでも、皮膚や白目の部分が黄色くなる黄疸が生じます。
病的な状態ではない生理的黄疸の場合、一般的には生後2~3日頃から生じ、4~6日でピークを迎え、1~2週間で自然に消失します。
一方、生理的黄疸の範囲を超えた病的な黄疸とは、次のような所見がみられるものを指します。
- 生後24時間以内に黄疸が認められる早発黄疸
- 血清総ビリルビン値の上昇速度が正常域を超えて速い
- 血清ビリルビンが正常域を超えて高い値を示している
- 生後2週間以上経っても、黄疸が消えることなく持続している遷延性黄疸
- 血清直接ビリルビン値が正常域を超えて高い値を示している
検査・診断
生理的黄疸と病的黄疸の見極めのために、出生後の入院期間から赤ちゃんに対する経皮的ビリルビン濃度測定法を用い、スクリーニング検査が行われます。
経皮的ビリルビン濃度測定法とは、専用の検査機器を使い、皮膚の上から血中総ビリルビン濃度を測定する方法です。
スクリーニング検査で陽性となった場合や、病的黄疸が疑われる症状・所見がある場合などには、血液検査によりビリルビン濃度を測定します。
病的黄疸を来す新生児高ビリルビン血症の背後には、感染症や甲状腺機能低下症など、何らかの原因となる病気が潜んでいることがあります。そのため、ビリルビンが増加している原因を探索する目的で、赤ちゃんに対する診察やお母さんに対する問診が行われます。
治療
治療が必要な高ビリルビン血症と判断される場合、核黄疸を防ぐために、ビルビリンを排出するための治療が行われます。治療方法には、光線療法と交換輸血があります。
光線療法
光を照射することで、ビリルビンを水に溶けやすい形に変え、胆汁内への排出を促す治療です。新生児高ビリルビン血症の標準治療とされています。
交換輸血
ビリルビン濃度が高くなっている血液を動脈から体外へ出し、同時に静脈へと輸血を行う治療法です。光線療法では対応できない場合などに選択される治療方法です。
ガンマグロブリン療法
血液型不適合による高ビリルビン血症には一定の効果があります。
原因となる病気に対する治療
光線療法や交換輸血によりビリルビンを排出させるだけでなく、新生児高ビリルビン血症の原因となっている病気への治療も行われます。たとえば、感染症が原因となっている場合は、その感染症治療に適した薬剤の投与が行われます。甲状腺機能低下症が原因の場合は、甲状腺ホルモン補充療法が行われます。
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