にほんこうはんねつ

日本紅斑熱

監修:

概要

日本紅斑熱とは、リケッチア・ジャポニカという病原体によって引き起こされる感染症です。この病気は主にマダニに刺されることで感染し、特に関東地方より西の地域で多く発生しています。年間で約300~400例が報告されており、近年では発生が増加傾向にあります。マダニに刺された部位には黒い小さなかさぶたが見られ、これを刺し口と呼びます。刺し口のほか、発疹(ほっしん)(皮疹)や発熱などの症状が現れることが一般的です。

リケッチア・ジャポニカを保有するマダニ類は野山などに生息しており、主な種類にキチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマアラシチマダニなどがいます。咬まれても痛みなどはほとんどなく、日本紅斑熱自体もあまり特徴的な症状がないため、診断が困難なこともあります。

治療では抗菌薬による薬物療法が行われます。治療の開始が遅れると重症化の危険性が高まるため、気になる症状があれば速やかに医療機関を受診することが大切です。

原因

日本紅斑熱の原因は、リケッチア・ジャポニカを保有するマダニ類に咬まれることによって発症します。ヒトからヒトへ感染することはありません。この原因菌を保有するマダニ類は千葉より西側の太平洋沿いを中心に確認されていますが、近年では青森県や新潟県にも拡大しているといわれています。特に4月から10月にかけてマダニの活動が活発になる時期に多く見られます。

リケッチア・ジャポニカはダニからダニへと卵を通じて感染し、広がることが分かっています。ただし、リケッチア・ジャポニカを保有していないマダニ類も存在するため、マダニに咬まれたら必ず日本紅斑熱にかかるというものではありません。

症状

マダニ類に咬まれてリケッチア・ジャポニカに感染すると、2~8日の潜伏期間を経て、発熱や皮疹、倦怠感、頭痛などの症状が現れます。咬まれた部分には“刺し口”と呼ばれる特徴的な黒いかさぶたと、その周辺に赤みが見られます。特に咬まれやすい部位は、(わき)の下、下腹部、太ももの内側など皮膚が柔らかい部分です。

皮疹は赤く、かゆみを伴わないのが特徴で、体幹から手足へと広がります。ツツガムシ病*も似た症状のため区別が難しいですが、日本紅斑熱では手のひらや足の裏などの末端部分にも皮疹が見られることが多いのが特徴です。

マダニに刺されても痛みやかゆみを感じないため、刺されたことに気付かない場合があります。野外で活動した数日後に発熱や皮疹などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

*ツツガムシ病:細菌“つつが虫病リケッチア”を持つツツガムシという特定のダニに咬まれることで発症する感染症。

検査・診断

発熱や全身の皮疹など日本紅斑熱を疑う症状が生じた際には、まず皮疹の状態や刺し口の有無など、全身の状態を確認します。多くの患者はマダニ類に噛まれたという自覚がないため、全身を注意深く観察します。また、最近の野山への立ち入りなどの行動歴も重要な情報となります。

確定診断のためには血液検査を行いCRP値*の上昇、肝酵素(AST・ALT)の上昇、血小板の減少、およびリケッチア・ジャポニカへの感染の有無を確認します。必要に応じて刺し口のかさぶたや皮膚を採取し、リケッチア・ジャポニカの存在を調べる検査を実施します。

*CRP値:体内に炎症や組織障害が起こると血液中に増加するタンパク質。炎症を示す検査値として利用されている。

治療

日本紅斑熱の主な治療方法は抗菌薬による薬物療法です。第1選択薬としてテトラサイクリン系の抗菌薬を使用します。また、ニューキノロン系の抗菌薬の有効性も報告されています。治療が遅れると重症化する可能性があるため、確定診断を待たずに治療を開始することもあります。

予防

日本紅斑熱の予防では、マダニ類に咬まれない対策を行うことが重要です。野山や畑などに入る際は、長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、手袋などを着用して肌の露出を抑え、ダニ忌避薬を使用することが推奨されています。野外活動から戻った後は、速やかに衣服を脱いで入浴し、マダニの付着がないか確認します。皮膚にマダニが付着しているのを発見した際は、マダニが皮膚に深く刺さっていることがあるため、自身で無理に引き抜いたり潰したりせず、医療機関を受診して適切な処置を受けることが重要です。

最終更新日:
2025年05月07日
Icon close
2025/05/07
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

「日本紅斑熱」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

日本紅斑熱

Icon unfold more