概要
水尿管症とは、尿管(腎臓から膀胱につながる管)の下部が狭くなり、尿の流れが滞ることで腎盂*や尿管に尿がたまって拡張した状態を指します。この状態を指して、巨大尿管症や巨大尿管と呼ばれることもあります。
尿管は幅5~7mmの細長い管状で、その長さは成人で30cmほどです。腎臓で作られた尿を膀胱へ運ぶ役割がありますが、何らかの原因で尿管が狭くなると、尿が膀胱へスムーズに流れなくなります。その結果、尿の通り道である腎盂や尿管に尿がたまり、水尿管症を発症します。なお、尿管のみが拡張することはまれで、同時に腎杯**や腎盂も拡張することが一般的です。そのため、水腎、水尿管症と呼ばれています。
また、水尿管症では尿路感染を生じることもあり、重症化すると、感染が全身に及ぶ敗血症などによって命に関わることもあるため注意が必要です。
*腎盂:腎臓の一部で尿管につながる組織。
**腎杯:腎盂に尿を集める組織。
原因
腎臓と膀胱をつなぐ尿管の一部が狭くなることで尿の流れが滞り、水尿管症が起こります。尿管の一部が狭くなる原因には、先天的(生まれつき生じるもの)な尿管の異常と、後天的(生まれてから生じるもの)な病気や病態があります。
先天的な形態異常を原因とする場合
- 生まれつき尿管が狭い
- 尿管の位置の異常により、尿管が血管(下大静脈)に圧迫されている
- 膀胱内で尿管下部がこぶ状に膨らんだ状態(尿管瘤)
- 尿管内にひだが生じている状態(後部尿道弁)
- 左右の腎臓の下側がくっついた状態(馬蹄鉄腎) など
後天的な病気や病態を原因とする場合
症状
水尿管症では、病態によって症状の現れ方が異なります。尿管の狭窄は急激に起こる場合もありますが、先天性の形態異常や、がんが滲み込むように広がること(浸潤)などが原因の水尿管症では、狭窄は徐々に生じます。
尿管の拡張が徐々に進むと自覚症状がほとんどない場合もあり、健診や人間ドックで指摘されることもあります。原因不明の嘔吐や腹痛から、検査を行い発見される場合もあります。
尿管の狭窄が急激に起こった場合は、背中や横腹、下腹部に激烈な痛みを生じる“疝痛発作”が起こることが特徴です。
上記のどちらの場合でも、尿がたまった尿管を体の表面からしこりとして触れられることがあります。また、たまった尿に細菌がたまり尿路感染を起こすことがあり、高熱が出るほか、排尿痛や血尿がみられることがあります。尿の通りが特に滞っている場合では、腎障害や腎盂腎炎、腹痛や嘔吐、さらには尿路結石が生じることもあるため、できる限り早期の発見、治療が重要です。
検査・診断
水尿管症は、画像検査によって尿管の拡張を確認することで診断されます。
先天的な形態異常による水尿管症では多くの場合、胎児の超音波検査や出生後の検診で偶然に発見されます。尿路感染を原因とする発熱や、お腹のしこりや痛み、血尿などの症状をきっかけに発見されることもあり、その場合には主に触診や腹部超音波検査により診断されます。
症状や原因を詳しく調べるために膀胱造影、腹部CT検査、腹部MRI検査などが行われることもあります。
治療
水尿管症の治療では、原因となる病気や病態に対する治療が行われます。
先天的な形態異常による水尿管症
先天的な形態異常による水尿管症、たとえば膀胱尿管逆流症や膀胱尿管移行部狭窄症は、自然に軽快するケースがあります。そのため、年齢や病状(腎臓の機能、尿の流れの状態など)、症状などをみて、手術を行わずに経過観察となることもあります。
正常な尿管を形成するための手術としては、全身麻酔のもとで行う開腹手術や、内視鏡を用いた腹腔鏡手術があります。
後天的な病気に伴う水尿管症
後天的な原因の場合には、その原因となる病気に対する治療が必要です。治療は原因となる病気によって異なりますが、たとえば尿路結石では尿道から細い内視鏡を挿入し、レーザーなどを用いて結石を砕いて取り出します。
なお、症状の進行が速い場合などには、尿の排出や流れの確保を目的とした、以下のような治療が行われることがあります。
- 尿管ステント留置術……尿道から尿管ステント(尿管内に挿入する細いチューブ)を挿入して尿の流れを確保する治療方法
- 腎ろう造設術……背中から腎臓に針を刺し、そこからカテーテルを挿入して尿を体外に排出する治療方法
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