えんしょうせいちょうしっかんかんれんかんせつえん

炎症性腸疾患関連関節炎

最終更新日:
2021年03月15日
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2021/03/15
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概要

炎症性腸疾患関連関節炎は、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)クローン病などの炎症性腸疾患に伴って起こる関節炎です。関節の症状は下肢に生じやすく、手や背骨、仙腸関節(腰にある骨盤の仙骨と腸骨の間の関節)が関節炎を起こす場合もあります。腸の症状が悪化すると、それに伴って関節炎の症状が悪化することがあります。また、人によっては、下痢、血便、腹痛などの腸管症状より先に関節炎が現れる場合もあります。

炎症性腸疾患関連関節炎は、かつて“血清反応陰性脊椎関節症(けっせいはんのういんせいせきついかんせつしょう)”という病気のうちの1つとされていましたが、現在では“脊椎関節炎”と呼ばれるグループに整理されています。治療法はまだ確立されていませんが、炎症性腸疾患そのものの治療をすることで関節炎の症状も改善されることが知られています。

炎症性腸疾患では、5~20%程度に関節炎などの腸管外病変が現れるといわれています。また、海外では、炎症性腸疾患に関節炎を合併する人の50~75%程度がHLA-B27というヒト白血球抗原を持っているという報告がありますが、日本人はもともとHLA-B27を持つ人がとても少なく、日本人でどの程度の影響があるかは明らかにされていません。

原因

炎症性腸疾患関連関節炎は、自分の免疫反応で自分自身を攻撃してしまう“自己免疫”によるものではないかと考えられていますが、明確な原因はまだ明らかにされていません(2020年12月現在)。

発症には遺伝的素因と環境要因の両方が関わっているとされ、HLA-B27というヒト白血球抗原を持っていることが発症リスクの1つであるという報告があります。

症状

炎症性腸疾患として代表的なものは、クローン病潰瘍性大腸炎です。いずれも、下痢や血便が主な症状ですが、5~20%程度の人には腸管以外の症状が現れるといわれています。炎症性腸疾患関連関節炎は、腸管外病変のうち、関節の痛み、腫れ、動かしにくさなどの関節炎症状が現れたものを指します。人によっては、腸の症状より先に関節の症状が現れることもあります。

関節炎には、大きく末梢性関節炎(まっしょうせいかんせつえん)と体軸性関節炎があります。末梢性関節炎は、主に足関節や膝など少数の下肢の大関節に起こる場合(少数関節炎)と、足に加えて手や指の関節にも症状が現れ、合計5か所以上の関節に炎症が生じる場合(多発関節炎)があります。体軸性関節炎では脊椎や仙腸関節に症状が出やすく、腰の痛みは運動すると改善することが特徴です。重症になると、背骨の周りの靱帯(じんたい)が骨化して硬くなり、腰の曲げ伸ばしが難しくなることがあります。

末梢性関節炎の症状はよくなったり悪くなったりすることがあり、腸の症状が悪化するのに伴って関節炎の症状も悪化することがしばしばあります。体軸性関節炎は慢性的に進行することが多いとされていますが、いずれにしても腸の症状をコントロールすることが重要であるといわれています。

検査・診断

炎症性腸疾患関連関節炎を診断するための特別な検査や診断基準はありません。診断のためには、関節炎が発症するまでの経過や、家族に似たような症状の人がいるかといった情報、関節の状態などの身体所見を丁寧にとることが重要となります。

炎症の起こっている関節の状態をより詳しく調べるために、X線(レントゲン)やMRIなどの画像検査が用いられることもあります。血液検査では、炎症の指標である“赤沈”や“CRP”などの値の上昇が見られる場合があります。HLA-B27遺伝子の検査は診断の補助になりますが、この遺伝子を持っているからといって、必ずしも炎症性腸疾患関連関節炎と診断されるものではありません。

関節の症状が先に現れており、クローン病潰瘍性大腸炎などの診断がまだついていない場合は、炎症性腸疾患を診断するために、便検査や大腸内視鏡検査が行われる場合があります。

治療

炎症性腸疾患関連関節炎では、まず炎症性腸疾患の治療をすることが大切であるとされています。腸管の症状に対する治療によって、関節炎の症状もよくなる場合があることが知られています。

関節炎そのものに対する治療法はまだ確立されていません(2020年12月現在)。薬物療法としては、炎症性腸疾患の治療薬や抗リウマチ薬が用いられることがしばしばあります。生物学的製剤(体の中で作られるたんぱく質などを応用して作られた薬剤)のうち、TNF阻害薬は関節リウマチに効果があることが知られており、炎症性腸疾患関連関節炎の治療薬としても注目されています。なかでも、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなどは潰瘍性大腸炎クローン病ともに保険適用があり、効果が期待されています。IL-17阻害薬は、炎症性腸疾患を増悪させることがあり、注意が必要です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腸の症状を悪化させる可能性がありますが、鎮痛薬として用いられることがあります。

薬物治療のほかに、特に体軸性関節炎に対しては適切な運動療法が効果的な場合があります。また、関節炎が悪化した場合には、手術による治療が検討されることもあります。

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