せきついかんせつえん

脊椎関節炎

最終更新日:
2021年04月09日
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2021/04/09
更新しました
2021/03/15
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概要

脊椎関節炎は、脊椎や腕、脚などの関節に炎症がみられる病気の総称で、以前は血清反応陰性脊椎関節症(炎)と呼ばれていました。40歳以下の若年で発症することが多く、背中や腰の痛みが中心となる“体軸性脊椎関節炎(たいじくせいせきついかんせつえん)”と、主に手や足の関節に症状が現れる“末梢性脊椎関節炎(まっしょうせいせきついかんせつえん)”に大きく分類されています。関節の症状のほかに、目の炎症、炎症性腸疾患、皮膚病変などを合併することがしばしばあります。

脊椎関節炎には、強直性脊椎炎乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)反応性関節炎炎症性腸疾患関連関節炎ぶどう膜炎関連関節炎、その他の分類不能脊椎関節炎などが含まれます。原型となるのは強直性脊椎炎で、頻度として多くみられるのは乾癬性関節炎です。遺伝的要因としてHLA-B27遺伝子との関連性が高いことが知られていますが、発症には環境要因も関係していると考えられています。

脊椎関節炎は比較的若い年齢で発症することが多く、10歳代で症状が出ることもあります。45歳以降での発症はまれです。日本における男女比は約3~5:1といわれており、男性に多い病気です。HLA-B27の保有頻度から、欧米と比べて日本ではまれと考えられています。近年この病気が以前より広く知られるようになり、適切に診断・治療される例が増えてきています。

原因

脊椎関節炎は、免疫に関わる重要な分子である組織適合性抗原(白血球の血液型として発見されたヒト白血球抗原)のHLA-B27との関連が強く、なかでも強直性脊椎炎では多くの患者がこの遺伝子を持っていることが知られています。また、遺伝子のほかに環境の影響もあることが指摘されています。

一方で、全ての患者がHLA-B27遺伝子を持っているわけではなく、環境因子についても具体的には明らかにされていません。乾癬性関節炎は肥満や脂質異常症糖尿病などの影響を受けたメタボリックシンドロームの1つと考えられています。

脊椎関節炎は、ほかの病気に関連して起こる場合もあります。たとえば、炎症性腸炎関連関節炎潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)クローン病といった腸炎、乾癬性関節炎は皮膚の病気である乾癬に関連して起こることが知られています。また、反応性関節炎のように、消化管や泌尿生殖器の感染症がきっかけの1つとなって脊椎関節炎を発症することもあります。

症状

脊椎関節炎全体に共通する症状には、関節に出る症状と、そのほかの症状があります。また、脊椎関節炎は症状の特徴の違いから、“体軸性脊椎関節炎”と“末梢性脊椎関節炎”の2つに大きく分類されています。

関節の症状

関節に炎症が起こると、痛みやこわばりが現れます。背中や腰の痛みは運動すると改善し、安静にすると悪化して、特に夜間後半から早朝にかけて症状が強くなりやすいという特徴があります。足や手の関節炎、アキレス腱や足底など靱帯が骨につく部分の痛む“付着部炎”、手や足の指がソーセージのように腫れる“指趾炎”なども共通してみられる症状です。関節リウマチと比べて一度に症状の出る関節の数が少なく、股関節(こかんせつ)や肩関節、膝など大きな関節に症状が出やすいことや下肢に症状が出やすいことも特徴です。

関節以外の症状

脊椎関節炎では、しばしば合併症が見られます。多く見られるものには、結膜炎ぶどう膜炎などの目の症状、クローン病潰瘍性大腸炎など腸の症状、乾癬や爪の病変など皮膚の症状があります。乾癬とは、円形に赤みがかった皮膚が少し盛り上がり、その表面が銀白色にカサカサと剥がれるような症状を示すものです。脊椎関節炎の種類によって、現れやすい合併症には違いがあります。

体軸性脊椎関節炎と末梢性脊椎関節炎

近年、脊椎関節炎の中で“体軸性脊椎関節炎”と“末梢性脊椎関節炎”を分類するための基準が提唱されました。

体軸性脊椎関節炎

体軸性脊椎関節炎では、腰や背中の痛みが症状の中心となります。45歳未満で3か月以上続く背部痛があることが前提となり、さらに仙腸関節(腰にある骨盤の仙骨と腸骨の間の関節)の炎症(画像所見)やHLA-B27遺伝子を有すること、脊椎関節炎に共通するそのほかの症状が見られることなどによって分類されます。

末梢性脊椎関節炎

末梢性脊椎関節炎では、関節炎や腱の付着部炎、指趾炎など手足の症状が中心となって現れます。これらの症状のほかに、ぶどう膜炎や乾癬、腸炎、感染症などの特徴的な症状や、LA-B27遺伝子、画像所見などと合わせて分類されます。

症状に合わせてこれらの分類基準を用いることで、従来よりも早期に診断ができるようになりました。ただし、基準を満たしただけでは判断できず、似た症状を示すほかの病気の可能性を除く必要があるため、専門家による診断が必要となります。

検査・診断

脊椎関節炎は臨床症状の確認と問診、画像所見、血液検査などから診断されます。診断のためには、似たような症状を示す病気を除外することが大切で、専門医による判断が必要です。また、多彩な症状を示すことがあるため、膠原病(こうげんびょう)・リウマチ内科や皮膚科など、複数の診療科の協力が必要な場合があります。

近年はMRI検査の有用性が確認され、以前よりも早期の診断が行いやすくなりました。

画像検査

診断のポイントとなるのはX線検査(レントゲン検査)やMRI検査などの画像所見です。X線検査では、仙腸関節や脊椎、手足の関節で脊椎関節炎に特徴的な所見(関節の炎症、関節の隙間の狭小化、関節周囲の骨が壊れる“骨びらん”、壊れた脊椎同士が一体となって付着する“竹様脊椎”、骨の異常な増殖、靱帯が骨に付く部分の異常な骨化など)が見られるかを調べます。発症の初期にはX線で異常が見られないことも多く、より早期の診断にはMRI検査が有用となります。そのほかにも、手足の関節の検査に超音波(エコー)が用いられることがあります。

臨床症状・問診

臨床症状として、腰や背中の痛みの有無、背骨の曲がりにくさ、“腰痛が安静では改善せず、運動によって改善する”といった痛みの特徴、手足の関節所見の有無などを診察します。また、問診では発症年齢、症状が出るきっかけ、家族に同様の症状の人がいるか、目や皮膚や腸など関節以外に症状があるかなどが重要な情報となります。

血液検査

血液検査では、炎症反応を示す値(CRP、赤沈)の上昇がみられます。関節リウマチで陽性となるリウマトイド因子や抗CCP抗体は、脊椎関節炎では一般に陰性となります。また、脊椎関節炎と関連の大きいHLA-B27の検査が行われることもあります。

治療

脊椎関節炎を根本的に治療する方法は現在確立されていません(2021年2月時点)。しかし、治療により症状をコントロールし、進行を抑えることで生活の質を改善することができます。

脊椎関節炎は、強直性脊椎炎乾癬性関節炎反応性関節炎炎症性腸疾患関連関節炎などの総称です。個々の病気の病態は異なるため、病気の治療法もそれぞれ異なります。詳しく知りたい方は個々の病気の治療の項目をご参照ください。

脊椎関節炎の治療の中心は薬物療法です。腰背部痛は運動すると症状が軽減されることが多いため、薬物療法と平行して運動療法やリハビリテーションを行うことも重要です。股関節の症状が進行した場合は、人工関節に置き換える手術を検討することがあります。

薬物療法ではまず、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。脊椎関節炎が原因の腰痛は、ほかの原因の腰痛と比べてNSAIDsがよく効くのが特徴です。手足の関節炎に対しては抗リウマチ薬も有効です。仙腸関節炎や付着部炎(腱が骨に付く部分の炎症)で痛みが強い場合は、炎症の起こっている場所にステロイド注射が行われることがあります。NSAIDsや抗リウマチ薬があまり効かない場合には、生物学的製剤(体内でつくられるたんぱく質などを応用して作られた薬)の使用が検討されます。

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