概要
痙攣重積型(二相性)急性脳症とは、小児期(特に生後6ヶ月から1歳代)に好発する疾患であり、感染症が誘因となる急性脳症の中でも代表的な疾患です。一つの感染症のエピソードの中に2回けいれんの発症があり、2回目のけいれんの後に意識障害が強く障害され、長期的な神経学的な後遺症を残すことが典型的な臨床経過です。 日本から初めて報告された疾患であり、難病指定を受けている疾患です。痙攣重積型(二相性)急性脳症は、年間100〜200例ほどの発症例があると推定されている病気です。 インフルエンザや突発性発疹といった小児にありふれた感染症をきっかけとして発症することが多く、感染初期には痙攣重積型(二相性)急性脳症を発症するかどうかを予測することは困難です。しかし、一度発症した場合の長期的な神経学的予後は不良であり、病気の発症に際しては集学的な治療介入を行うことが重要になります。
原因
痙攣重積型(二相性)急性脳症は、インフルエンザや突発性発疹といった感染症をきっかけとして発症する急性脳症であり、特に生後6か月から1歳代に好発することが知られています。 しかしながら、インフルエンザや突発性発疹は、乳児期においてとてもありふれた疾患であり、感染症を発症した場合に急性脳症を起こすことはむしろ少数派です。ありふれた疾患であるインフルエンザや突発性発疹に罹患したお子さんの中で、何故痙攣重積型(二相性)急性脳症を発症するお子さんと、発症しないお子さんがいるのかについては完全には明らかになっていません。 ただし、感染症罹患後に痙攣重積型(二相性)急性脳症を発症しやすい個人の素因があることも報告されおり、いくつかの遺伝子が関係していることが推定されています。また、気管支喘息で使用されることのある「テオフィリン」と呼ばれる薬剤と、痙攣重積型(二相性)急性脳症の関連性を指摘する報告もあります。
症状
痙攣重積型(二相性)急性脳症の症状は、意識障害、けいれんがあります。意識障害とは意識が朦朧とし、話しかけたり、刺激したりしても応答がない状態を指します。 しかしこれらの症状を常時示す訳ではなく、痙攣重積型(二相性)急性脳症は、その発症様式から臨床経過が特徴的です。 典型的にはインフルエンザや突発性発疹などの感染症を誘因として発症します。したがって、病初期には発熱を認めます。発熱と同時に1回目のけいれんを発症しますが、15分から1時間以上におよぶけいれんであることが多いです。その後、一旦けいれんがおさまった後に意識障害が回復する時間帯があります。病状は数日の経過で改善傾向にあるように見えますが、1回目のけいれんから3〜4日経過して解熱期に差し掛かった際、再度けいれんを引き起こしてしまうことになります。 2回目のけいれん発作治まった後の意識障害の程度は、1回目のそれよりも強いです。この時期には口をもぐもぐさせる、手足を振り回すなどの無目的な運動を示すこともあります。神経学的な長期的合併症を起こすことも多く、精神運動発達遅滞やてんかんを続発します。
検査・診断
痙攣重積型(二相性)急性脳症では、2回目のけいれん発作時期に合わせての脳の画像変化が特徴的です。具体的には脳MRI(拡散強調画像)にて、大脳皮質下白質や大脳皮質に特徴的な変化を認めるようになります。急性期がおさまり、発熱2週間後頃になると、脳の組織が萎縮、血流が低下している所見を見るようになります。これらの変化は脳CTやMRI、SPECTと呼ばれる検査で確認することが可能です。 痙攣重積型(二相性)急性脳症は、インフルエンザや突発性発疹で引き起こされることが多いです。これらの誘因となる感染症を確認するために、インフルエンザの迅速検査、髄液や血液を用いたウイルス検査や抗体検査なども行われます。
治療
痙攣重積型(二相性)脳症の治療方法は、インフルエンザ脳症の標準治療に準じた形で行われ、具体的にはステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量投与、脳低体温療法といったものが選択されます。 ステロイドパルス療法とは、ステロイドを3日間大量投与する治療方法です。インフルエンザによる急性脳症ではガイドラインに掲載される、第一に行われる治療方法ですが、突発性発疹の際にも有効であるのかは定かでない部分もあります。しかし、現在行われている治療のなかでは最も有効とされている治療ですし、痙攣重積型(二相性)急性脳症の長期的な神経学的予後の事を考え、ステロイドパルス療法を行うことが多いです。 さらに痙攣重積型(二相性)急性脳症はステロイド以外に免疫グロブリンという薬剤の大量投与によって治療されることもあります。ステロイドパルス療法に関しての治療効果が確立されている訳ではないため、やはり後遺症のことを考慮してステロイドパルス療法に併用して行なうことがあります。
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