概要
睡眠相後退症候群とは、睡眠に入る時間が本来望ましい時間よりも遅くなり、その結果さまざまな生活の質の低下や不都合を伴っている状態を指します。
いわゆる「宵っ張り」といわれる方が発症しやすい状態です。
生体が持つ体内時計に乱れが生じていることから発症すると推定されています。
原因
原因はよくわかっていませんが、体内時計に乱れが関与していると推定されています。
一日の周期は24時間ですが、ヒトの体内時計は通常25時間に設定されており、この1時間の差を埋める必要があります。
この調節には、メラトニンと呼ばれる物質が関与しており、日中に光を浴びることで、メラトニンの分泌が調節され体内時計のリセットが行われます。
睡眠相後退症候群の発症が多い若年層は、そもそも体内時計のセットが25時間よりも長いため、この調整が難しいのではないかと推定されています。
また、昼夜の境がつきにくい環境や、光を浴びるタイミングなどが悪化につながると言われます。
症状
睡眠相後退症候群の患者さんは、睡眠時間が遅くにずれ込んでおり、午前1〜4時頃に就寝し、昼近くに起床する生活スタイルになっています。
布団に早く入っても入眠困難なため、必要な就寝時間を確保するために朝の起床時間がずれ込みます。起床時間がずれ込むことにより、時間通りに学校や仕事に行けないなど社会生活に影響を及ぼすこともあります。
また、無理に起きたとしても、充分な就寝時間が確保されていないので、睡眠不足から学業や仕事のパフォーマンスに悪影響が生じます。その結果、成績の低下や仕事の失敗などにつながり、うつ病などを発症するケースもあります。
検査・診断
睡眠相後退症候群は、睡眠に関する詳細な問診を行うことで診断されます。具体的には、就寝・起床時間、夜間就寝中の状況や学校生活や仕事に対しての影響などです。
睡眠の評価は一日では不充分であり、最低でも1週間の状況を確認します。
また、アクチグラフと呼ばれる腕に巻く装置(時計のようなもの)を用いて、睡眠状態を評価することもあります。その他にも、睡眠障害を除外する目的もかねて、ポリソムノグラフィと呼ばれる検査を行うこともあります。
治療
日常生活に支障を来している場合に治療介入を検討します。
具体的には、徐々に就寝時間を早めていきます。急に大幅な時間変更を行うのではなく、10分でもいいので少しずつ目標とする時間軸に戻すように調整をします。反対に就寝時間を大幅に遅らせることで、目標とする就寝時間に近づける場合もあります。
ベッドに入る時間が遅い場合は、少し早く寝室へ赴くようにします。就寝前にカフェインやアルコールを摂取しないことや、就寝の直前までスマートフォンを使用しないことも有効です。
こうした行動による治療以外にも、メラトニンに代表される薬物治療が選択されることもあります。
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