概要
筋強直症とは、筋肉が収縮した後に緩むのが遅れることで筋肉のこわばりが生じる“筋強直”と呼ばれる症状が出る病気のことです。筋強直症は、進行性の “筋強直性ジストロフィー”と、非進行性の“非ジストロフィー性ミオトニー症候群”の2つに分類されます。
両者とも遺伝性の病気とされていますが、2つの大きな違いは、骨格筋が変性し徐々に筋力が低下していく“ジストロフィー変化”と呼ばれる症状の有無です。筋強直があり筋力が徐々に低下していくものを“筋強直性ジストロフィー”、筋強直があるものの筋肉の量はほぼ正常、または発達するものを“非ジストロフィー性ミオトニー症候群”と呼びます。
筋強直性ジストロフィーでは、呼吸をする筋力が低下したり、心筋の変性が生じたりすることで、生命予後に関わる呼吸不全や致死性の不整脈を合併することがあります。筋強直性ジストロフィーは成人においてもっとも頻度が高い遺伝性筋疾患といわれています。
一方、非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、筋肉のこわばりはあるものの、症状は思春期に強く現れ中年期以降には軽くなる傾向があります。一般的には命に関わる病気ではありません。
現在のところ、筋強直症に確立した根本的治療法はなく、それぞれの症状を改善するための対症療法やリハビリテーションが治療の主体となります。
原因
筋強直症は遺伝子の変異によって生じる生まれつきの病気です。
筋強直性ジストロフィーは、DMPK遺伝子やCNBPP遺伝子の異常が原因であると指摘されています。
非ジストロフィー性ミオトニー症候群では、CLCN1遺伝子やSCN4A遺伝子といった、遺伝子の異常が深く関わることが分かっています。
通常、遺伝子は体内でタンパク質を作る役割を担っていますが、遺伝子の異常によってタンパク質の機能に異常をきたすことが原因と考えられています。
症状
筋強直症は原因となる遺伝子によってタイプが分かれ、病気のタイプによって症状は異なります。いずれも、一般的にみられる症状には“筋肉のこわばり”が挙げられます。具体的には、強く握った手が開きにくい、診察用のハンマーで手の付け根の筋肉などを叩くとこわばりが生じるといった症状です。
筋強直性ジストロフィー
筋強直性ジストロフィーの場合は、発症すると徐々に筋肉が萎縮して筋力が低下していきます。軽症な場合もありますが、呼吸に必要な筋肉や心臓の筋肉にも異常を引き起こし、呼吸不全や不整脈などの合併症が生じることもあります。
また、白内障や認知症状、糖尿病など、全身にさまざまな合併症を引き起こすのも特徴です。最終的には呼吸機能の著しい低下による呼吸不全や、嚥下を行う筋力が低下することによる誤嚥性肺炎、致死性不整脈などによって命に関わるケースもあります。
非ジストロフィー性ミオトニー症候群
非ジストロフィー性ミオトニー症候群の多くは、筋強直性ジストロフィーのように進行することはないと考えられています。しかし、筋力の低下がみられたり、寒冷や運動によって症状が悪化したりすることもあります。
検査・診断
筋強直症が疑われるときは、以下のような検査が必要になります。
血液検査
筋肉に異常が生じるほかの病気との鑑別を行うために、血液検査を行います。
筋電図検査
筋肉に異常がないかどうかを調べる検査です。筋肉に針を刺して筋肉が収縮する時に起こる活動電位を調べます。筋強直症は針を刺した時に筋強直放電という特徴的な筋肉の興奮を確認することができます。
遺伝子検査
原因となる遺伝子変異の有無を確認するために遺伝子検査を行うことで、確定診断に役立ちます。
治療
筋強直症にはさまざまなタイプがありますが、いずれの場合も基本的な治療は現れた症状を緩和するための対症療法と、筋力のさらなる低下を抑えるためのリハビリテーションが主体となります。
対症療法はそれぞれの症状に合わせて薬物療法を行い、不整脈がある場合にはペースメーカーの埋め込みなどを行います。筋強直性ジストロフィーの場合、呼吸筋の機能が低下して呼吸状態が悪化するようなケースでは、人工呼吸器の装着などが必要になることもあります。
予防
筋強直症は、遺伝子の変異による生まれつきの病気です。そのため、確立した予防法は現在のところありません(2024年12月時点)。しかし、筋強直症は進行すると命に関わる可能性があるため、強く握った手が開きにくいなど、何らかの症状がある場合はできるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
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