かんほうちゅうしょう

肝包虫症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

肝包虫症とは、エキノコックス属である条虫の幼虫がヒトに感染し、肝臓に寄生することでさまざまな症状を引き起こす寄生虫症の一種です。

条虫は、俗に「サナダムシ」といわれる、扁形動物門の条虫網に属する寄生虫の総称です。ヒトに感染すると、肝臓や肺、骨髄などに寄生しますが、もっとも多く寄生するのが肝臓です。条虫には単包条虫と多包条虫がおり、多包条虫では90%以上で肝臓への寄生がみられます。多包条虫は寒い地方に多く生息し、日本では北海道で生息が確認されています。単包条虫感染は日本では極めてまれで、大部分は多条虫感染です。

原因

条虫の卵が口から入り込むことで感染します。

多包条虫の成虫は、自然界のなかでは主にキツネや犬、幼虫は野ネズミに寄生しています。ヒトへの感染は、成虫に感染しているキツネや犬の便に含まれる虫卵を何らかの形で経口摂取することによりおこります。ただし、多包条虫がヒトに寄生しても成虫にはなりません。そのため、ヒトからヒトへの感染は成立しません。

多包条虫の卵が体内に取り込まれると、卵から孵った幼虫が腸壁に侵入し、血液やリンパ液の流れに乗って全身を移動します。そして、肝臓に定着し、長い時間をかけて嚢胞(のうほう)(袋のようになり中に液体が溜まった状態となる)を形成しながら増殖していきます。

症状

条虫の嚢胞は非常にゆっくりと成長するため、感染してから10年ほどは無症状の場合が多いです。しかし、嚢胞が大きくなると、肝臓や周りの臓器を圧迫してさまざまな症状が現れ、脾臓や肺、脳への転移も起こります。

嚢胞が大きくなると右上腹部に痛みを伴うしこりとして触れるようになります。また、肝臓が大きくなるため、腹部膨満感や上腹部の牽引痛(けんいんつう)を感じる場合もあります。

嚢胞がさらに大きくなり、胆管を圧迫すると胆石症に似た症状が現れ、胆管閉塞による黄疸(おうだん)(肝臓や血液の異常で皮膚や粘膜が黄色くなること)が生じます。肝不全の状態になると腹水や易出血性などの症状も現れます。脳転移をきたすと、意識障害やけいれんなどが生じます。

また、嚢胞の破裂などで中身の包虫液が漏れ出ると発熱や掻痒感(そうようかん)(皮膚をかきたくなるような感覚、かゆみ)、蕁麻疹(じんましん)などのアレルギー症状が現れ、一度に大量の包虫液が放出するとアナフィラキシーを生じることもあります。

検査・診断

腹部超音波検査やレントゲン、CT撮影などの画像検査、血清検査が主な検査方法です。確定診断は、肝生検や手術で摘出した病変から条虫を検出することによりおこなわれます。

画像検査

感染してから長期間、無症状なので健診などで偶然発見されることもあります。腹部レントゲン写真では、肝臓部位に石灰化がみられることが多いです。しかし、レントゲン写真だけでは見逃されることもあり、超音波検査やCT検査で嚢胞を確認する必要があります。

肝包虫症の特徴的な所見は、大きな嚢胞の内部に娘嚢胞が存在していることです。これは、肝がん肝膿瘍血管腫と鑑別する際に重要な所見です。この所見は超音波検査やCT検査で観察することができます。

血清検査

ELISA法とウエスタンブロット法の2種類があります。肝包虫症の流行地では、集団検診で血清検査が行われることもあります。

治療

外科的に嚢胞を摘出する方法が一般的です。術後には包虫駆除剤を内服し、再発の有無を画像検査などで注意深く観察する必要があります。進行した状態で発見され嚢胞をすべて摘出できない場合には、包虫駆除剤を内服し、経過を観察する方法がとられます。

また、嚢胞の形状によっては包虫液を細径のカテーテルを使用し経皮的に吸入し、包虫駆除剤を注入および再吸入するPAIRと呼ばれる治療がおこなわれることがあります。

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