はいきせいちゅうしょう

肺寄生虫症

肺

目次

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概要

肺寄生虫症とは、寄生虫が肺に寄生して引き起こされる病気です。肺に寄生する寄生虫はさまざまであり、原因となる寄生虫に応じて肺吸虫症、イヌ糸状虫症、イヌ回虫症、糞線虫症、包虫症(エキノコックス症)などの病気があります。すなわち、肺寄生虫症とはあくまでも総称名であるといえます。

一般的に、寄生虫は衛生環境の整っていない地域や予防の知識が充分でない場合に流行する傾向があります。そのため、戦前の日本では寄生虫に遭遇する機会も多かったのですが、衛生環境の向上や予防の普及とともに肺寄生虫症を発症するリスクも減少しています。しかし、全世界を見渡すとまだまだ寄生虫ではまれではなく、渡航先において寄生虫症に罹患することはありえます。さらに、肺寄生虫症のなかには、包虫症など、現在の日本でも発症するタイプのものがあります。

また、肺寄生虫症のなかには、治療に難渋するものや、重篤な症状で死亡に至るものもあります。そのため、肺寄生虫症の正確な知識を得ることで、肺寄生虫症を疑うときには迅速に対応することが重要です。

原因

肺寄生虫症は寄生虫を原因として発症する病気の総称で、肺吸虫症、イヌ糸状虫症、イヌ回虫症、糞線虫症、包虫症などが含まれます。それぞれ吸虫(宮崎肺吸虫やウェステルマン肺吸虫など)、イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)、イヌ回虫(Toxocara canis)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、包虫(エキノコックス)を原因として発症します。

肺寄生虫症は、寄生虫に人が暴露されることで発症しますが、発症のきっかけはさまざまです。吸虫はサワガニやイノシシに潜んでいることがあるため、これらを調理不十分な状況で摂取すると肺吸虫症に罹患するリスクがあります。また、イヌ糸状虫は蚊を媒介者として人へと寄生することがあります。イヌ回虫や糞線虫、包虫はある種の動物の糞(イヌやキツネなど、寄生虫によって異なります)に含まれていることがあり、周囲の環境が寄生虫によって汚染されます。主に口から摂取することで感染します。寄生虫によっては、汚染された土壌を裸足で歩いたりすることで直接皮膚を介して人に感染することもあります。

症状

肺寄生虫症は、呼吸器関連の症状として、咳や痰、胸の痛み、喘鳴、息苦しさなどを生じることがあります。なかには、気胸や腫瘤形成、胸水などが同時に発生することもあります。

肺寄生虫症によっては、肺以外の臓器に寄生虫が存在することに関連して、寄生先の臓器に伴う症状があらわれることがあります。たとえば脳が寄生を受けると、反復性のけいれんや意識障害、麻痺などの症状が出現することがあります。寄生虫が目に寄生すると、視力低下や失明に至ることもあります。包虫症では肝臓が第一の寄生先になることが多く、肝障害からの腹水、黄疸、腹部膨満などの症状も出現します。糞線虫は皮膚を貫通して寄生が成立しますが、皮膚の該当部位にかゆみを伴うことがあります。

検査・診断

肺寄生虫症は呼吸症状を呈するため、胸部単純レントゲン写真やCTなどの画像検査を行い、肺の状態を評価します。寄生虫によっては結核や悪性腫瘍を思わせる変化をもたらすこともあるため、これらを鑑別するための血液検査や培養検査、病理検査を行います。

肺寄生虫症では痰や便のなかに原因となる寄生虫の虫卵や虫体が混入することがあるため、これらを顕微鏡的に確認します。また血液中に、原因となる寄生虫に対しての抗体が産生されるため、血液検査で抗体を確認することもあります。

肺寄生虫症では、肝臓や脳、目など肺以外の臓器が問題になった場合、症状に応じて、対象臓器を対象とした血液検査や画像検査などを追加します。

治療

肺寄生虫症では、寄生虫の種類によって、プラジカンテルやアルベンダゾールなどの駆虫薬を使用します。日本に多い包虫症については駆虫薬のみでの治療は困難なことも多く、外科的な治療介入の位置付けが高いといえます。

肺寄生虫症は、原因となる寄生虫の生活環を知り、発症予防につなげることが可能です。地域によっては寄生虫の流行が広がっている場所もあるため、口に摂取するものに注意を払い、調理不十分な状況では摂食しないよう心がけることが大切です。また、土壌や水などの周囲環境が寄生虫で汚染されている地域もあるため、これらの地域には素手や素足などでは踏み込まないことも大切です。