ふんせんちゅうしょう

糞線虫症

目次

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概要

糞線虫症とは、糞線虫(Strongyloides stercoralis)と呼ばれる寄生虫によって引き起こされる疾患です。東南アジアを中心とする熱帯から亜熱帯地域にみられる疾患ですが、温暖地域にもみられます。日本では沖縄や鹿児島県南部に限局してみられます。

糞線虫は土壌の中に潜んでいて、皮膚を通して人へ寄生します。糞線虫に寄生された場合、無症状で経過することが多いです。一方、虫が侵入した部位の皮膚の発赤や痒みを生じることがあります。皮膚から侵入して幼虫は血流に乗って肺に入り、気管、食道、胃をへて小腸に達します。小腸で成熟し、成虫から生じた幼虫が再び腸壁、または肛門周囲の皮膚から自家感染を起こすことがあります。消化管の症状を反映した腹痛や下痢、気管や肺では咳、皮膚のかゆみなどをみることがあります。ステロイド使用中、HTLV-1ウイルス感染、白血病発症などの状況下で糞線虫症を発症すると、症状が重篤化し亡くなることもあります。

基本的には土壌からの感染経路が主で、人から人への感染はまれです。糞線虫症は駆虫薬を用いて治療を行います。治療をしないと生涯に渡って体内に留まることがありますし、なかには、重症化や死亡することもあります。そのため、流行地域では、積極的に診断、治療することが重要です。

原因

糞線虫症は、糞線虫(Strongyloides stercoralis)と呼ばれる寄生虫を原因として発症する病気です。糞線虫は土壌の中に潜んでいることがあり、特に熱帯・亜熱帯地域でみることが多いです。土壌中に潜む糞線虫に直接皮膚で触れると、皮膚を通過して人の体内に入り込みます。したがって、流行地域において裸足で歩くことは、糞線虫感染のリスクとなります。

皮膚を通して体内に入り込んだ糞線虫は、血流に乗り、肺から気管を介して消化管に入り、小腸で成虫となって卵を産み、消化管で孵化ます。また虫卵は糞便中に出ることがあり、環境中でも孵化することがあります。体内で孵化した幼虫は消化管壁に潜り込んだり、皮膚を再度貫通したりして、再寄生するようになります。このように人の体内で糞線虫のライフサイクルが確立することを自家感染といいます。

糞線虫症は直接臓器浸潤を起こしたり、血液の流れに乗じて消化管から離れた臓器に運ばれたりします。その結果、運ばれた先の臓器において何かしらの健康被害をもたらすことになります。

糞線虫症は、喘息やCOPD、膠原病などの治療におけるステロイド使用と関連して重症化するリスクが高まります。また、HTLV-1と呼ばれるウイルスの感染や、白血病、リンパ腫、移植後などにおいても病状が重篤化する可能性が高まります。

症状

皮膚を貫通することで糞線虫の寄生が始まりますが、貫通部位の発疹をみることがあります。体内に入り込んでから2〜4週間ほどの経過を持って消化器症状や呼吸器症状などが出現します。糞線虫は消化管内で増殖するため、腹痛や下痢、吐き気などをみることがあります。また肺に入り込むと慢性的な咳や喘鳴なども出現します。皮膚症状としてかゆみやじんましんなどが出現します。

糞線虫に寄生されたとしても、無症状に経過することもまれではありません。そのため、年単位に渡って寄生が持続することもあります。しかし、免役が低下したときなど重症化することがあります。播種性糞線虫症と呼ばれる、大量の糞線虫に感染した状態になります。この病態になると、大腸菌などの腸内細菌が糞線虫と一緒に大量に血液中に入り込み、重篤な肺炎や髄膜炎をきたすことがあります。複数菌種が血液、髄液などから検出された場合に疑います。また、その結果、重篤な呼吸障害、ショック、精神症状、意識障害などを生じることがあります。

検査・診断

糞線虫症の診断は、糞便や血液を用いた検査をもとにして行います。糞便中に排泄されている成虫を顕微鏡的に確認します。便を培地におくと、糞線虫が蛇行して移動している様子がみえて、診断できることもあります。抗体を検索するための血液検査なども行うことがあります。
 

治療

糞線虫症の治療は、イベルメクチンと呼ばれる駆虫薬を用います。糞線虫症では播種性糞線虫症とよばれる重篤な病態を起こす可能性があるため、症状の有無に関わらず治療を行うことが推奨されます。イベルメクチン2回の内服で駆虫を期待することができます。

予防

糞線虫に対してのワクチンは存在しないため、流行地域へ赴く際に土壌に注意することが重要です。糞線虫は皮膚に接触することで直接的に体内に入り込むため、靴を履くことが大切です。特に人の糞便に幼虫、虫卵がいるため、汚染が疑われるような土壌、肥料として使用している場合、畑などに注意が必要です。