概要
脱肛とは、本来、肛門の外にない物が肛門内から外に脱出する状態です。“内痔核”という肛門のふちから2cm以上口側にある直腸の粘膜下にできるいぼ痔や、“肛門ポリープ”と呼ばれる肛門のふちから2cmの距離にある肛門乳頭が肥大したもの(腫瘍ではなく良性)の脱出が多いです。また直腸が脱出することもあり、直腸の壁を構成する筋肉は脱出しない“直腸粘膜脱”や、直腸の壁全体(筋肉)が脱出してしまう“直腸脱”があります。
脱肛は肛門のふちの外痔核が膨れている(腫脹)状態とは異なりますが、自分で鑑別するのは困難です。
内痔核ができる組織は、痛みを感じる神経(知覚神経)がないため痛みはありません。しかし、内痔核の固定が緩み排便時に外に出るようになると、内痔核に炎症を生じたとき、周囲の上皮や粘膜が牽引されて裂けた(裂肛を生じた)とき、内肛門括約筋を刺激して血栓性外痔核(血液が固まる特殊ないぼ痔)を生じたときには痛みや出血などの症状が現れるようになります。
原因
内痔核が成長して、さらに固定が緩くなると脱肛を生じます。内痔核の成長には、便秘などで排便時に強くいきむ、排便後もまだ便が残っているように感じて長時間便器に座り続ける、下痢などで何回も便器に座る、便所以外における長時間の座位や出産時のいきみなど、局所のうっ血を生じることが影響します。これらの行為は内痔核の成長だけでなく、内痔核の固定が緩くなり脱肛することにも影響します。
また、加齢に伴って内痔核を固定している筋肉がやせることや筋力低下も、脱肛に関連するとされています。
症状
内痔核が脱肛すると、脱出した直腸の粘膜(内痔核は粘膜の1層下にあるので、表面にある直腸粘膜)が下着などにすれて出血することや、粘液によって下着が汚れることがあります。また、外に出た内痔核が中に戻らず嵌頓と呼ばれる状態を起こすこともあります。これによりうっ血が強くなって痔核が大きく腫れたり、周囲に血栓を多数伴ったりすると、とても強い痛みを生じることがあります。脱肛していると、肛門が完全には閉まらないため便汁や便が出ることもあります。
検査・診断
通常は肛門の外にないものが出ているため脱肛の診断は難しくありませんが、何が脱肛しているのかを診断するために肛門科のある病院や診療所を受診することが大切です。痛みが強いとすぐに受診することになりますが、痛みがないときに脱肛しているものを受診せずに放置していると、直腸や大きい痔核が脱肛している場合には肛門括約筋が引き延ばされて肛門が緩くなることがあります。緩くなると、手術をしても肛門の締りを元に戻すことはできません。また、まれですが、大腸(S状結腸)がんなど、命の危険がある病気が脱肛することもあります。痛みがない場合でも肛門科のある病院や診療所を受診するようにしましょう。
治療
脱肛する痔核の根本的な治療法には、内痔核を切除する手術と、内痔核を切除せずに固定を改善する、硬化剤を用いたALTA療法(四段階注射法)があります。最近では、痔核の切除手術と硬化療法が併用されています。診療所ではゴム輪を用いた内痔核の結紮療法も行われています。
上記の手術的な治療法を選択するかどうかは、患者が日常生活でどの程度困っているのかを考慮して決定します。医師が手術をしなくてもよいと判断しても、脱肛により下着の汚染や不快感、かゆみなど本人にしか分からない支障がある場合は手術の適応になります。患者の価値観や希望を主に、治療効果や合併症などを加味した治療方法を決定することが大切です。
予防
脱肛の予防には、内痔核の原因となるような排便習慣を改善することが重要です。トイレに長時間座り続ける、排便時に強くいきむ人は内痔核になりやすいことが報告されています。また、体を冷やす場所での作業や長時間座りっぱなしのデスクワークなどは肛門周囲の血流を悪くし、内痔核を引き起こす要因となります。重ね着やカイロなどで体を冷やさないようにし、休憩の合間に姿勢を変えるなどして体を動かすようにしましょう。
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