原因
出産を経験していない若い女性や女児の場合、排尿するときには尿道がゆるみ膀胱が収縮するという排尿反射の仕組みが機能しますが、強い腹圧がかかるときには排尿時とは異なり骨盤底筋をすぼめる力も加わるため、尿道は弛緩せず膀胱の収縮は抑制されます*。加わる腹圧は、たとえ大きくとも膀胱と尿道に対して同等の圧力を及ぼすため尿は流出しません。
分娩直後に多くの女性で膀胱は麻痺していて尿意や収縮力を失っていますが、それでも骨盤底の弱まった状態であれば、腹圧をかけて膀胱出口を開き腹圧で尿を排出することができます。時間が経つと、膀胱麻痺は解消し尿道弛緩と膀胱収縮による排尿に戻っていきますが、一部の女性では骨盤底の支持力が不足したり膀胱麻痺がなかなかよくならなかったりして、腹圧で排尿する習慣が続きます。こうして長く腹圧による排尿を繰り返していると腹圧排尿の仕組みが強化されていき、やがては腹圧をかけると尿が漏れるようになります。これが腹圧性尿失禁です。
出産に関連して、子宮口が開いてから長い時間がかかった分娩(分娩第2期の遷延)や、鉗子や吸引による分娩など骨盤底や膀胱・尿道に負担の大きい出産では、腹圧性尿失禁のリスクが高まります。硬膜外麻酔の併用について、直接の影響は明らかになっていませんが、結果的に鉗子や吸引が必要になる見込みが高くなることなどにより、腹圧性尿失禁のリスクが高まるとみられます。出産回数につれて腹圧性尿失禁の保有者が増えることが示されています。出産年齢の影響についてはクリアな統計結果は示されていませんが、高年初産では分娩第2期の遷延や鉗子や吸引による分娩が増えるため一定の影響があるとみられます。
閉経前後には膀胱収縮力が弱くなり排尿するとき腹圧をかけるくせがつきやすくなります。また、子宮筋腫で子宮がひどく大きくなると、子宮を膀胱に押しつけて腹圧で尿を排出をする傾向になります。このように、腹圧性尿失禁は膀胱・尿道が排尿反射によって尿を排出する能力の低下と骨盤底筋群や周辺の線維組織の弱体化、腹圧による尿排出の強化を背景として、腹圧による排尿の強化されることで成立します。腹圧性尿失禁は、女性の体に備わっている腹圧排尿の潜在能力が暴走した状態です。
*骨盤底筋をすぼめる動作は、排尿を我慢しようとして行う動作に相当します。この動作は排尿中枢を介する反射によって膀胱の収縮を抑制します。
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骨盤臓器脱
- 経腟メッシュ手術(TVM手術)・ロボット支援下仙骨腟固定術などを骨盤臓器脱の部位・重症度・患者背景によって、症例にあった術式を決める。
骨盤臓器脱には、膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤、膣断端脱などがある。
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腹圧性尿失禁
- 骨盤底筋訓練・薬物療法に加え、中部尿道スリング手術であるTVT手術やTOT手術でスポーツができるようになることを目指す。
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- 抗コリン薬やβ₃作動薬による薬物療法を行う。内服薬で効果不十分や副作用で継続できない難治性過活動膀胱には、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法を外来にて行う。
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間質性膀胱炎
- 原因不明の頻尿・膀胱痛を排尿日誌や膀胱鏡で診断をつけ、経尿道的に膀胱水圧拡張術やハンナ病変を焼灼するハンナ型間質性膀胱炎手術を行う。食事療法やDMSO膀胱内注入療法も併用する。
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