ふくまくがん

腹膜がん

最終更新日:
2020年05月20日
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2020/05/20
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概要

腹膜がんとは、大網や横隔膜、腸間膜を覆う腹膜や卵巣の表層から発生すると考えられているがんのことです。卵巣がんの一種“漿液性(しょうえきせい)腺がん”と極めて似た性質であることから、腹膜がんは卵巣がんの“仲間”とも考えられています。

腹膜がんは非常に珍しいがんであり、日本産科婦人科学会の調査によると2017年の1年間に新たに発症したのは約400人(10万人あたり6人未満なので希少がんに該当)です。しかし、早期の段階では症状がほとんどなく、がんが散らばるように広がると腹腔(腹膜で囲まれた空間)の中に水(腹水)がたまるようになり、さまざまな臓器やリンパ節などに転移を起こすことも少なくありません。このため、治療が難しいがんとされています。

また、腹膜がんは診断が難しいのも特徴のひとつです。がんが腹膜に転移して生じる“がん性腹膜炎”と診断され、その原発部位が不明な場合には腹膜がんであることが少なくないと考えられます。

原因

腹膜がんは腹膜の組織から発生するがんと考えられています。しかし、近年では卵管の組織から発生するとの見方もされており、はっきりとした発症メカニズムは解明されていません。

一方で、腹膜がんは“BRCA1遺伝子”の変異が発症に関与していることや人種によって発症頻度が異なることなども指摘されており、何らかの遺伝的な要因が背景にある可能性も否定できないと考えられています。

症状

腹膜がんの特徴は早期段階ではほとんど症状が現れないことです。しかし、腹膜は腹腔内臓器を覆う面積の広い組織であるため、進行すると広範囲に転移や浸潤(がんが周囲の組織を巻き込むように成長すること)を引き起こします。そして、腹水貯留・お腹の張り・お腹や腰の痛み・消化管機能の低下による吐き気・嘔吐や便秘などの症状が見られるようになります。

また、腹膜がんの約半数は子宮の表面に播種や転移を起こし、なかには不正出血が見られることもあります。

検査・診断

腹腔がんは進行してさまざまな症状が現れた段階で発見されることが多く、腹膜がんで起こりうる症状が現れた際には次のような検査が行われます。

画像検査

腹水の状態や原因を調べるため、超音波検査、腹部X線検査、CT検査、MRI検査などが行われます。

血液検査

各種の腫瘍マーカーを調べ、画像検査などで特定の臓器にがんが疑われる所見と照合します。

しかし、腹膜がんは画像検査や血液検査では最終診断を下すことができず、確定診断のためにはがんの組織を顕微鏡で詳しく調べる“病理検査”が必要となります。病理検査をして初めて腹膜がんであることが分かった、病理検査の結果腹膜がんではなかった、というケースもあります。

腹腔鏡検査

画像検査で腹膜に多数のしこりがあるような場合には、腹腔内に内視鏡を挿入して腹腔内の状態を観察する検査を行うことがあります。腹水の貯留が多いときは、小開腹手術を行います。全身麻酔をかけるため体への負担が大きいですが、腹膜の状態は画像検査ではっきりと描出されない腹膜の状態を評価するのに有用な検査です。

経皮的生検

腹腔鏡検査の代わりに腹壁に局所麻酔し、肥厚した大網を生検する方法もあります。このほうが体の負担も軽く、病理検査の結果が早く得られます。

一方で、手術をしない場合でも以下の条件がそろえば、腹膜がんを強く疑う“臨床診断”を下すことも可能です。

  • 女性
  • 腹水がたまっている、または、腹腔内にがんが存在する
  • 腹水や子宮から採取した細胞から“漿液性腺がん”が確認される
  • 卵巣や卵管に明らかな腫れがない
  • 胃がん大腸がんなどの消化器がん乳がんなど他部位のがんでないことが確認できる

治療

腹膜がんの基本的な治療は手術による切除と抗がん剤投与の組み合わせです。

手術は腹腔内のがんを完全に切除することを目的として、腹膜にできたがんだけでなく他部位に散らばったがんも同時に切除します。また、卵管の先端には腹膜がんの元凶が潜んでいることが多いこと、子宮への播種が多いことから子宮や卵管、卵巣も切除します。

一方で、腹膜がんは進行した状態で発見されることが多いため、全身状態が悪く手術に踏み切れないケースが多くあります。その場合には、手術前に抗がん剤を投与してがんの縮小や全身状態の向上を図った上で手術を行います。術後には再度抗がん剤を投与します。

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