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臍帯ヘルニア

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概要

臍帯ヘルニアとは、胎児のお腹の壁が子宮内でうまく形成されず、臍帯(いわゆるへその緒)の中に消化管などの腹部臓器が入り込んだままの状態で出生することで発生する病気を指します。

臍帯ヘルニアは、5,000〜10,000人に一人の割合で発生すると報告されている病気であり、生後早期の段階から集中的な治療が必要になる重症疾患の一つです。また、染色体異常や心奇形、腸回転異常などの合併奇形を有することも多く、治療方針の決定にはさまざまな要素を考慮することが求められます。

近年では、胎児期の超音波検査を通して生前から診断されることも稀ではありません。臍帯ヘルニアは集学的な治療介入が必要とされる病気であるため、臍帯ヘルニアが出生前に診断された場合には、小児外科医・新生児科医・産科医・麻酔科医などが揃った施設への母体搬送が検討され、出生後の治療をスムーズにする試みがなされます。

なお、似た病名に「臍ヘルニア」がありますが(いわゆるでべそ)、臍ヘルニアではヘルニアが皮膚で覆われており自然治癒する傾向が強い病気であり、臍帯ヘルニアとは重症度が全く異なる病気になります。

原因

赤ちゃんは子宮の中において、胎児期早期の段階(胎生3週の終わり頃)でお腹の壁が形成されることになります。お腹の壁の形成には「中胚葉」と呼ばれるグループに分類される細胞が重要です。中胚葉に由来する細胞が皮膚に沿って上下左右に伸びていき、臍の周囲で集まり癒合することで壁が形成されることになります。

しかし、こうした癒合過程に異常が生じると、お腹の壁がうまく形成されなくなってしまい、結果として臍帯ヘルニアが発生することになります。中胚葉由来細胞の上下左右の伸展・癒合過程の中でも、どの部分で形成異常が生じるかによって、「臍部型」、「臍上部型」、「臍下部型」にそれぞれ分類されます。

臍帯ヘルニアが生じる原因としては、完全に解明されている訳ではありません。臍帯ヘルニアには染色体異常(13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなど)が合併することもあり、遺伝子の関連性も疑われることもありますが、明確に同定されているものはありません。なお、妊娠期間中に母体がアルコールやタバコ、薬剤(SSRI)を摂取している場合、臍帯ヘルニアを有する赤ちゃんが産まれるリスクが高まるとの報告もあります。

症状

臍帯ヘルニアでは、へその緒の中に腹部内の臓器が入り込んでいる状態で指摘されます。へその緒の中に入り込む臓器としては、胃や小腸などの消化管のみならず、肝臓といった固形臓器も入り込むことがあります。こうした臓器は、腹膜や羊膜といった膜で包まれることもあれば(このように、飛び出ている臓器を包む膜のことをヘルニア嚢と呼びます)、ヘルニア嚢が破れてしまっており空気中に暴露されていることもあります。ヘルニア嚢が破れている場合は、飛びでている臓器に対して感染を来すリスクが高まります。

臍帯ヘルニアでは、ヘルニアが形成されていること以外に合併奇形を伴うことがあります。臍上部型であれば、心奇形(心室中隔欠損症やFallot四徴症など)、横隔膜欠損などを伴います。臍下部型では、鎖肛や仙骨奇形、脊髄髄膜瘤、膀胱異常などを見ることがあります。臍部型では、Beckwith-Wiedemann症候群の一症状として臍帯ヘルニアを呈していることがあります。この場合は、内臓肥大、片身肥大、低血糖、巨舌症、悪性腫瘍などといった症状・合併症を呈することがあります。また、臍帯ヘルニアでは染色体異常を伴うこともあり、染色体異常に応じた症状を呈することもあります。

 

検査・診断

臍帯ヘルニアは、へその緒の中への臓器脱出を指摘することから診断されます。すなわち、特徴的な外観から臍帯ヘルニアは診断されることになります。また、妊娠中の超音波検査で出生前の段階で事前に診断されていることも稀ではありません。

臍帯ヘルニアでは、心奇形を始めとした合併奇形や染色体異常などを併発することも多いです。こうしたことを評価するために、心臓の超音波エコーや血液を用いた染色体検査などを行うこともあります。

治療

臍帯ヘルニアでは、へその緒の中に脱出している臓器を元の位置に戻すための手術介入が必要となります。

臍帯ヘルニアでは、ヘルニア部位からの体温喪失、水分喪失が進行するリスクがあり、低体温や脱水などが進行する危険性が高いです。また、ヘルニアに対して感染を併発することも懸念されます。そのため、清潔な状態でヘルニア部位を保護し、赤ちゃんをクベースに収容しての管理が必要になります。

臍帯ヘルニアでは、脱出している臓器の量や種類に応じて、一回の手術で治癒を目指すか(一期的修復術)、複数回に分けて治療するか(多期的修復術)の方針を決定します。手術の時期としては出生後早期に行うことがされ、多期的修復術の場合でも通常は1〜2週間で臓器を戻すことが可能です。

しかし、重症心疾患などの合併奇形のために手術に耐えることができない場合もあります。この場合は生後早期の手術介入はせずに、保存的に経過を見ていく「保存的療法」の治療方針が選択されます。

臍帯ヘルニアは、治療方針の決定や全身管理に際して集学的な介入が必要な疾患です。そのため、母体内で診断が付いた時には、治療を行うことができる施設への母体搬送が必要とされます。

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