概要
良性石綿胸水とは、アスベストが原因で胸膜(肺の外側と肋骨の内側などを包む膜)に炎症が起こり、胸水*がたまる病気です。
この病気によってたまる胸水は、自然に消滅することがほとんどです。症状は現れないことが多く、治療を必要としないケースもあります。しかし、良性石綿胸水が生じた後に、胸膜中皮腫や、びまん性胸膜肥厚など治療を必要とする病気を発症することがあります。
*胸水…肺の外側を包んでいる2枚の膜の間の胸腔にたまる体液のこと
原因
良性石綿胸水の原因は、アスベストと呼ばれる物質の吸入です。アスベストとは、天然の繊維状けい酸塩鉱物の総称です。石綿と呼ばれることもあります。
日本では、アスベストが、建材(保温・断熱材など)などさまざまな工業製品に使用されていました。しかし、健康被害を考慮し、日本では2006年よりアスベストの製造・使用等が全面的に禁止されています。
アスベストを原因とする病気には、潜伏期間を経て発症するという特徴があります。良性石綿胸水は、アスベストの吸入から数年〜数十年後に発症するといわれています。
症状
多くは無症状
良性石綿胸水の多くは、症状が現れません。無症状のまま胸水がたまり、自然に消滅することが多いです。胸水がたまっている期間は、3〜10か月程度といわれています。
息切れ・咳・胸の痛みなど
なかには症状が現れるケースもあります。胸水がたまることによって肺が圧迫されると、呼吸が苦しくなります。そのため、息切れしたり咳が出たりといった症状が現れることがあります。
また、胸水は胸膜に炎症が起こるために生じるのですが、胸膜炎が起こると呼吸したときに胸の痛みが現れることが多いです。まれではありますが、強い炎症のために発熱する方もいます。
検査・診断
アスベストにさらされた経験を確認
良性石綿胸水の診断では、アスベストにさらされた経験を確認します。たとえば、過去に建築現場などで仕事をしていた経験があれば、診断の参考になります。
他の原因の可能性を調べる
胸水は、アスベスト以外のさまざまな原因でたまります。胸水がたまる主な原因には、次のようなものがあります。
診断では、胸水の性質を調べる検査によって、他の原因の可能性を調べます。また、悪性腫瘍を早期に発見するために、胸腔鏡(先端に小型のカメラを装着した内視鏡)による検査が行われることもあります。この検査では、胸腔鏡で採取した組織から悪性腫瘍の可能性を調べます。
治療
基本は経過観察
良性石綿胸水では、基本的に経過観察が行われます。良性石綿胸水の多くは自然に胸水が消滅するため、治療を必要としないケースもあるからです。
また、胸水が消滅した後も、発症から1年程度は悪性腫瘍の可能性を確認するため、経過観察を続けることが多いです。
たまった胸水を抜く治療
自然に胸水が消滅しない場合には、胸水を抜く治療が行われることがあります。
胸水を抜く治療では、注射針によって胸水を抜きとります。胸水を抜いたぶんだけ肺が広がり、呼吸しやすくなる効果が期待できます。
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