概要
色素性乾皮症(XP)とは、日光に過敏に反応してしまうために、しみや皮膚の乾燥が起こる病気です。また、高い確率で皮膚がんを引き起こすようになります。皮膚症状のみならず、ときに転びやすいなどの神経系症状を呈することもあります。
色素性乾皮症は、難病指定を受けている疾患のひとつです。日本では22,000人に1人の割合で発症し、現在(2018年現在)では約500人の患者さんがいると考えられています。男女差はありませんが、地域差は存在し、海外と比較すると日本では発症頻度が高いことが分かっています。
色素性乾皮症は、A-G群およびV型の8群にタイプ分けがされていますが、日本の色素性乾皮症はA群とV型が多く、約55%がA群、約25%がV型といわれています。
色素性乾皮症は、遺伝子の傷を修復する仕組みに異常があることで発症します。根本的な治療法は確立されておらず、日光を避けるなどの予防策や、皮膚がんなどの病気が発症したときの治療が中心となります。色素性乾皮症は遺伝性疾患としての側面を持つため、遺伝カウンセリングも必要となり、長期的・多面的な介入が必要とされます。
原因
人の遺伝子情報は、ヌクレオチドと呼ばれる物質がいくつも連なって構成されたDNAに含まれています。DNAが日光にさらされた場合、ヌクレオチドの構造に変化が生じます。変化したDNAは正しい遺伝子情報を有しておらず、遺伝子に傷が入った状態であるといえます。しかし、人にはDNAの傷を修復するための機構が備わっています。そのため、たとえ日光の影響を受けても、もとの正しいヌクレオチドへと置き換えられます。色素性乾皮症は、このDNAの傷の修復がうまくいかずに傷が残ることで発症すると考えられています。
色素性乾皮症は遺伝性の疾患で、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝します。色素性乾皮症にはA-G群およびV型の8種類がありますが、すべての原因遺伝子が解明されており、たとえばA群の遺伝子は22対の常染色体のうち9番目にあります。
常染色体劣性遺伝では、少なくとも両親が病気の保因者であることから、その子どもに病気が発症します。日本人はA群の保因者が100人に1人という高い割合で存在するため、XPA群の頻度が高くなってきます。
症状
色素性乾皮症では、日光に当たると皮膚にさまざまな症状が現れます。症状の重症度は病気のタイプにもよりますが、皮膚が赤くなったりしみができたりします。また、皮膚がんを生じるようになります。耳の聞こえがはっきりしない、体のバランスが取れずに転倒しやすいといった神経症状を呈する方もいらっしゃいます。
日本人に多いA群の患者さんは光線過敏症状が重く、生まれてすぐから激しい日焼け症状が現れます。ほんの少しの外出でも顔が真っ赤に腫れてきて、白目部分まで充血してしまうほどです。A群では、言葉が不明瞭になる、体のバランスが取れなくなる、といった神経症状も出現し、10歳を過ぎたころから神経、知能、身体とあらゆる面で症状が悪化していきます。
同様に日本人にみられることの多いV型については、日焼け反応はA群のようにはっきりしませんが、10代のころからシミが多く現れます。また、V型は他のタイプと同様皮膚がんを発生しやすいことが特徴です。
検査・診断
色素性乾皮症は、日光に対しての過敏性から病気が疑われることになります。診断には、光を実際に負荷することで皮膚がどのように反応するかを確認する「光線照射試験」が行われます。
また、患者さん由来の細胞を用いて、実験室レベルでのさまざまな特殊検査が行われます。最終的には遺伝子検査で確定診断を行います。
治療
色素性乾皮症の根本的な治療方法は確立されていません。色素性乾皮症の症状は日光にさらされることで悪化するため、遮光を確実に行い、紫外線を防ぐことが重要になります。日焼け止めはもちろん、日傘、すだれ、カーテンといった道具を用いることや、長袖や長ズボン、ハイソックスを着用するなど服装に注意することが有効であると考えられます。
経過中に皮膚がんを発症することもあるため、早期発見・早期治療が大切です。治療方法としては、手術に加えてイミキモドという外用剤やインターフェロン(ウイルスに対抗できるように体内で作り出される物質の一つ)を使った局注療法を用いることもあります。
色素性乾皮症では神経症状も出現することがありますが、同じく症状にあわせた対症療法が中心になります。
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