せきがいせんしょうがい

赤外線障害

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概要

赤外線は電磁波の一種であり、電磁波には波長の短いものから順に、100 nm未満の放射線(γ線、X線)、100~400 nmの紫外線、400~780 nmの可視光、780 nm~1 mmの赤外線、1 mmより長い電波(micro波、radio波)があります。

さらに赤外線は、その波長から大きく近赤外線(780~3,000 nm)、中赤外線(3,000~5,000 nm)、遠赤外線(5,000 nm~1 mm)に分類されます。赤外線は自然環境下で太陽光に含まれるだけでなく、人工的にも電化製品や照明器具、暖房器具、調理器具など、日常生活のなかで多岐にわたり使用されています。赤外線は角膜や虹彩、水晶体、網膜、眼瞼などすべての眼組織に影響を及ぼします。

原因

電磁波による障害機序は、熱作用、光化学作用、物理作用であり、障害程度は波長、照射強度、照射時間に応じて決まります。紫外線は光化学作用、赤外線は光熱作用を主に生じるとされています。

太陽光に含まれるさまざまな波長の電磁波が地上にふりそそぎますが、ヒトが受ける太陽光は、可視光や赤外線が主体で、紫外線はオゾン層でそのほとんどが吸収されます。赤外線は分子を振動させたり回転させたりすることができますが、電子を励起させることはできません。一方、紫外線は量的には少ないですが、生体構成分子において電子励起作用が強いため、紫外線のような短波長光のほうが生体において組織障害が強く発生します。

眼は透過光量の調節機能や黄斑色素などによる光防御機構を備えていますが、その防御能を超えて電磁波に暴露されると障害を生じます。重度の赤外線障害では、角膜、虹彩、水晶体、網膜に組織温度上昇に起因する蛋白の非可逆(治すことができない)的変性などの熱障害をきたしますが、実際には目を開けていられないために赤外線による目の急性外傷は少ないとされます。ただし、長期間にわたり暴露されると、障害が発生する可能性は高くなります。

眼球の透光体は可視光~近赤外線の波長の光をよく透過し、光は集光して網膜に達します。網膜火傷は近赤外線によるものが多いとされます。

水晶体は光の吸収が大きく、有害紫外線の多くと可視光のなかでも光毒性が指摘される短波長光を適度に制限し、網膜への透過を防止しています。水晶体が混濁する機序としては、角膜、虹彩、毛様体、網膜に赤外線が吸収されて発生する温度上昇が、二次的に水晶体に伝達されることが関与すると考えられています。

症状

白内障や網膜障害に伴う視力低下、角膜炎に伴う疼痛、虹彩変色、眼瞼浮腫などがあります。白内障は、特に溶鉱炉労働者や硝子工作業者に確認されることが多く、赤外線白内障あるいはガラス工白内障ともいいます。
 

検査・診断

視力検査・細隙灯顕微鏡検査などの一般的眼科検査を行います。また、従事している職業の種類や、赤外線に暴露されたエピソードはないかを確認するために問診が必要です。
 

治療

白内障に伴い視力低下が進行した際には、進行程度に応じて白内障手術が適応になります。

予防には保護レンズの使用が有効です。日食観測など太陽光を観測する際には、専用の日食観察グラスを使用することが眼障害を予防するために必要です。