概要
起立性低血圧とは、急に立ち上がったときや長時間立ち続けていると、立ちくらみ・めまいなどを起こす状態を指します。原因不明で立ちくらみを起こすこともあれば、糖尿病や出血など何かしらの原因をもとにして生じることもあります。
起立性低血圧では、学校の朝礼など長時間立つことで生じるような大きな問題のない立ちくらみの可能性もある一方、原因を明確にすることが重要とされる場合もあります。たとえば出血が原因で生じる起立性低血圧では、身体の中のどこで出血しているのかをしらべることが重要です。
原因
あおむけに寝ている状態から立ち上がったときに、重力の関係から多くの血液が下肢などに集まることになり、心臓に戻る血液が少なくなります。すると、心臓から送り出される血液の量が減るため低血圧となり、起立性低血圧が発症します。
通常であれば血液の減少を代償する形で神経が働きますが、神経の働きが鈍っている場合には代償機構がうまく働かずに起立性低血圧が発症します。こうした機序から起立性低血圧を発症する病気は糖尿病が代表的であり、糖尿病性ニューロパチーの一環として神経の働きが悪くなり起立性低血圧が発症します。その他、パーキンソン病や多系統萎縮なども原因となります。
また、血管内の血液量が正常よりも少ない状況であっても起立性低血圧が発症しやすくなります。具体的には、大血管破裂(大きな血管の破裂)・異所性(子宮外)妊娠(子宮の外で妊娠してしまうことを指し、破裂してしまうと大出血をきたす)・消化管出血(胃や腸の血管から出血すること)などが存在すると起立性低血圧の原因となります。その他、薬剤性の起立性低血圧もあります。利尿剤、α遮断薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗うつ薬など原因となる薬剤は多岐に渡ります。しかし、こうした明らかな原因を同定できない起立性低血圧症も存在します。
症状
起立性低血圧症は、突然立ち上がった際などに体内における血液分布が大きく変動し血圧が低下することになります。その結果、ふらつきやめまい、気が遠くなる感じなどを自覚します。
なかには日常生活に支障を来すほどの症状を呈することもあり、失神につながることもあります。失神をすることで転倒、外傷につながる危険性もあります。なお、貧血症状を訴えて、医療機関を受診される方もいます。
検査・診断
起立性低血圧の診断に際しては、起立時の血圧を測定することが重要です。起立後3分間のあいだでの血圧低下を観察し、その程度に応じて起立性低血圧の診断をします。これらは、ヘッドアップティルト試験という検査によって、自律神経の働きを検査することができます。起立性低血圧では、体内のどこかで出血がみられたり、糖尿病、多系統萎縮、パーキンソン病などの基礎疾患が原因となっていたりすることもあります。出血の除外のためにエコー検査が行われたり、糖尿病をしらべるための生理学的検査や血液検査などが行われたりします。
また、起立性低血圧でみるような失神やふらつき、めまいは不整脈が原因となっている場合もあります。なかには致死的な不整脈が原因となっていることもあるため、こうしたことを否定するための心エコーや心電図検査、ホルター心電図なども行われます。
治療
起立性低血圧は何かしらの原因が陰に隠れていることがあるため、除去可能なものであれば原因の除去を行います。出血源があれば止血、原因となる薬剤がある場合には薬剤の中止も検討します。
また起立性低血圧では、生活習慣の見直しも重要といえます。規則正しい生活スタイルを確立し、睡眠不足やストレス、過度の飲酒を極力避けることが大切です。充分量の水分と食塩を摂取することで、血管内の血液量を保てるようにすることも有効です。突然の体位変換によって生じることがあるので、ゆっくりと体勢を変えることも大切でしょう。そのほか、弾性ストッキングを使用して、下肢への血液貯留を避けることもあります。
起立性低血圧では、薬物療法が選択されることもあります。血液量増加を期待してフルドロコルチゾンが検討されます。症状を繰り返すことで生活の質が著しく低下する可能性がある起立性低血圧ですが、適切な対処方法を身につけ対処することがとても重要です。
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