概要
遺伝性脊髄小脳変性症とは、歩行の際にふらつく、ろれつが回らない、手が震えて文字が書けないなどの症状が現れる遺伝性疾患を指します。
脊髄や小脳の細胞が変性(通常のものとは変わった性質に変化すること)し、機能しなくなる病気を脊髄小脳変性症と呼びますが、その中でも遺伝性のあるタイプです。脊髄小脳変性症の3分の1は遺伝性といわれ、大きく2つに分類することができます。それぞれ原因となる遺伝子異常が異なります。
原因
遺伝性脊髄小脳変性症は、遺伝子の異常が原因で発症します。大きく分けて、常染色体優性遺伝性と常染色体劣性遺伝性の2つに分類されます。
優性遺伝性
脊髄小脳失調症1型・2型・3型・6型、31型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症などを挙げることができます。このタイプの遺伝子異常では、親御さんが病気を有しており、理論上50%の確立でお子さんに遺伝子異常がみられます。
劣性遺伝性
フリードライヒ失調症やビタミンE単独欠乏症失調症などを挙げることができます。ただし、日本においてはまれです。このタイプでは、ご両親には病気はみられませんが、ご兄弟が同じ病気を有することがあります。
遺伝性脊髄小脳変性症では、病気のタイプによって遺伝子異常の性質も異なります。
たとえば、脊髄小脳失調症3型、6型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症では、特定の遺伝子領域に特徴的な繰り返し配列があり、これの異常な伸長が病気の発症に関与していることが知られています。
症状
脊髄や小脳が障害を受ける遺伝性脊髄小脳変性症では、以下のような症状が現れることがあります。
など
誤嚥をきたしやすくなることから、誤嚥性肺炎を発症し、発熱や咳、痰、息苦しさなどの症状につながることもあります。
また、遺伝性脊髄小脳変性症では病型に応じて、てんかんや発達障害などの症状がみられることもあり、病気の発症時期や重症度も異なる場合があります。
検査・診断
遺伝性脊髄小脳変性症では、神経学的な身体診察に加えて、ご家族の中で同じ病気を有している方がいるかを確認することが重要です。
脊髄や小脳の異常が疑われる場合には、CT検査やMRI検査、脳血流シンチグラフィーなどの画像検査が行われます。
また、遺伝性の病気であるため、確定診断のために遺伝子検査を行うことも検討されます。
治療
遺伝性脊髄小脳変性症では、症状に応じた対症療法が行われます。具体的には、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)や、その誘導体などの薬物療法やリハビリテーションが検討されます。
残存している機能を保持するためにも、また病気の進行を遅らせるためにもリハビリテーションを治療に取り入れることは重要です。
そのほかにも、病気が進行すると寝たきりになる可能性もあり、誤嚥性肺炎を起こすこともあるため、その際には抗生物質による治療も行われます。
また、遺伝性に生じる病気であるため、遺伝カウンセリングが検討されることもあります。
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