概要
那須・ハコラ病とは、遺伝子の異常により、20歳ごろまでの無症状期を経て、それ以降に多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による若年性認知症を主徴として発症する骨や神経系の病気です。成人以降に骨折を繰り返し、性格の変化などを来し、寝たきりとなる難病指定疾患で、日本での患者数は200人ほどと報告されています。
現在(2018年時点)、病気を根本的に治す方法は確立されていないため、年齢と共に変化する症状に応じた対症療法を講じます。また、遺伝性を有する病気であるため、遺伝カウンセリングも考慮されます。
原因
那須・ハコラ病は、DAP12遺伝子もしくはTREM2遺伝子の異常により発症すると考えられています。これらの遺伝子は協調して、破骨細胞(骨の細胞の一種)やミクログリア(神経系の免疫を司る細胞)のはたらきを調整しています。
DAP12遺伝子もしくはTREM2遺伝子に異常があると、破骨細胞やミクログリアのはたらきが障害され、全身にさまざまな症状が引き起こされると考えられています。
遺伝子異常により発症する那須・ハコラ病は、常染色体劣性遺伝と呼ばれる形式で遺伝します。この遺伝形式では、原因遺伝子を1つ持つのみでは病気の発症には至らず保因者となり、2つ有する場合に発症します。そのため、両親が1つずつ原因遺伝子を有する場合、理論的には25%の確率で発症します。
症状
那須・ハコラ病の症状は、20代以降に生じることが多いです。初期には長管骨(四肢の骨)に関連した症状が見られることが多く、骨痛を伴い、病的骨折を反復します。
骨の障害は年数を経るにつれて徐々に進行し、骨の強度が低下する骨粗しょう症を発症します。この場合、軽微な外力でも骨折するようになり、骨が変形することもあります。
30代になると、神経に関連した症状も見られるようになります。具体的には、性格の変化、判断力や集中力の低下などが挙げられます。物事を論理的に考える力や記憶力にも障害が生じ、対人関係に問題を引き起こすこともあります。また、けいれん発作を起こすこともあります。
さらに病気が進行すると、歩くことができない、食事や排泄などを自分ですることができない、といった状態になり、日常生活が困難になります。40~50代頃になると寝たきりになり、誤嚥性肺炎をきたすこともあります。
検査・診断
レントゲン検査や、骨の一部を採取する検査により、20歳以降に出現する特徴的な骨の変化を評価します。
また、頭部CTや頭部MRIなどの画像検査により、脳細胞に生じている変化を評価します。てんかんの症状が見られる場合には、脳波検査が行われることもあります。
遺伝子検査にて原因遺伝子を検索し、診断につなげることもあります。
治療
現在、病気を根本的に治す方法は確立されていません。そのため、年齢と共に変化する症状に応じて、適宜対症療法を講じることになります。
骨がもろくなるため、転倒しないように環境を整備したり、日常生活で注意を払ったりすることが必要です。骨折を起こした場合には、外科的な治療が検討されます。てんかん発作を生じた場合には、抗けいれん薬により症状のコントロールを図ることがあります。
徐々に認知症が進行するため、介護体制を整えることも必要です。誤嚥性肺炎を発症した場合には、抗生物質の使用や酸素投与などが検討されます。
那須・ハコラ病は、難病指定を受けた病気であり、状況に合わせた公的サポートを受けながら診療を受けることが可能です。また、遺伝性を有する病気であるため、遺伝カウンセリングを考慮することも重要です。
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