関節リウマチの診療で大切にしていること――患者さんの全身状態をしっかり診て適切な治療を

関節リウマチとは、関節に炎症が起こり痛みや腫れなどが現れ、進行すると関節が変形したり全身の臓器に炎症が及んだりする病気です。しかし、早期に診断を受けて早期に治療を開始することで、症状をコントロールできる可能性が期待できます。

今回は、宇治徳洲会病院 膠原病(こうげんびょう)・リウマチ内科（非常勤）の中窪 悠登(なかくぼ ゆうと)先生に、関節リウマチの検査や治療、診療において大切にされていることなどを伺いました。

関節リウマチとはどのような病気？

関節リウマチは、関節をはじめ全身の臓器に炎症をきたす病気です。原因はまだはっきりと分かっていませんが、本来体を防御する免疫システムに異常が起こり、自分自身の組織に過剰に反応してしまうことが関係しています。

患者さんの男女比はおよそ1対4で、女性に多い病気です。従来は30～50歳代の比較的若い方に多い病気とされてきました。近年では高齢で発症する患者さんも増えてきており、高齢で発症する方では男女比にあまり差がない傾向があります。

関節リウマチの症状

発症初期は、手足の指などの比較的小さい関節に腫れや痛み、朝目覚めたときに手や足の指などの関節が動かしにくく感じる（朝のこわばり）などの症状が現れます。進行すると、肩や膝などの大きな関節に腫れや痛みが出てくることがあります。発症から長期に経過している患者さんでは、まれに首の関節に炎症がみられる場合もあります。

関節以外で比較的多くみられるのは、間質性肺疾患や気道炎症など呼吸器の症状です。進行すると慢性的な咳や痰、呼吸困難などが現れます。そのほか、手首や肘の関節部分の皮膚の下に“リウマチ結節”と呼ばれるしこりが生じたり、目や心臓など全身の臓器に影響が及んだりすることもあります。

 

関節リウマチが疑われるときに行う検査

関節リウマチの疑いがある場合は、以下のような検査を行います。

血液検査・尿検査

血液検査では、関節リウマチの患者さんによくみられるリウマトイド因子と抗CCP抗体を測定します。関節の症状は関節リウマチ以外の自己免疫疾患が原因で生じることもあるため、それらの病気でよくみられる抗核抗体などの自己抗体も併せて確認します。

また、関節リウマチの診断確定後は基本的には薬物療法を開始するため、治療を選択するうえで重要な肝機能や腎機能、貧血の有無を確認します。また、腎機能に関しては尿検査も行います。

画像検査

画像検査では、X線検査で関節の状態を確認します。診察ではっきりと関節の腫れや痛みのある部位が確認できなくても関節リウマチの可能性が高いと思われる方には、超音波（エコー）検査や造影剤を用いたMRI検査で関節内部の状態を詳しく検査します。

また、肺などの呼吸器に症状が現れる頻度が高いため、当院では特に気になることがなくても胸部X線検査は行うようにしています。より詳しく調べる必要がある場合は胸部CT検査も実施することがあります。

関節リウマチの治療法

関節リウマチの治療には、基礎療法、薬物療法、リハビリテーション、手術があります。

基礎療法

基礎療法とは生活習慣の改善で、たとえば喫煙は明らかに関節リウマチの病勢を悪化させるため、必ず禁煙していただくようお伝えしています。また、関節リウマチは慢性的な炎症が生じる病気なので、心臓や血管の病気が起こるリスクが高くなります。これらの病気の予防のために運動不足や食べ過ぎを避けていただくことも大切です。

薬物療法

薬物療法では、関節の炎症を抑えて変形を防ぐはたらきのある抗リウマチ薬を使用します。治療の中心となるのはメトトレキサートという薬です。ただ、メトトレキサートは効果が現れるまでにおよそ1か月、長い方では3か月ほどの時間がかかります。効き目が現れるまでの間、関節の痛みや腫れといった症状を緩和するために、痛み止めのNSAIDsや少量の副腎皮質ステロイドを併用します。

一般的にはメトトレキサートを十分に使用することで、多くの方は症状が改善します。6か月程度治療を継続しても関節の炎症がコントロールできない場合は、次のステップとして生物学的製剤^*やJAK阻害薬^**といった薬の使用を検討します。

^*生物学的製剤：バイオテクノロジーによって作られた薬で、免疫異常を改善する作用、炎症や関節破壊を抑制する作用がある。点滴か皮下注射で投与する。

^** JAK阻害薬：細胞の内側にあるヤヌスキナーゼ（JAK）という酵素を阻害することで炎症や関節破壊を抑制する内服薬。

 

リハビリテーション

発症してから早期に薬物療法を開始している患者さんでは、ご自身で可能な範囲で運動をしていただければ十分かと思います。一方、関節の変形がみられる患者さんでは、理学療法士や作業療法士など専門家の指導のもと、リハビリテーションを行うことがすすめられます。関節の状態によっては、変形を矯正するための装具の作成を検討する場合もあります。

手術

残念ながら薬物療法では変形した関節を元に戻すことはできません。そのため、関節の変形が進行して痛みがあったり日常生活に不自由を感じていたりする場合は、手術が選択肢となります。たとえば、膝の関節が変形し強い痛みがある患者さんでは、膝関節(しつかんせつ)を人工関節に置き替える人工関節置換術という手術が選択肢になります。薬物療法が進歩した現代においても、手術はとても大切な治療の1つだと思います。

治療を続けるなかで患者さんが注意すべきこと

関節リウマチの薬物療法では、免疫機能をコントロールする免疫抑制薬が治療の中心になります。そのため、治療中は感染症に十分注意していただく必要があります。発熱や咳、痰、呼吸困難などの症状がみられたら、すぐに受診してください。

手洗いやうがい、マスクを着用するなどの基本的な感染対策に加えて、感染症を予防するワクチン接種について積極的に検討することも大切だと考えています。関節リウマチを治療中の患者さんでも接種可能な呼吸器感染症の不活化ワクチンには、インフルエンザや肺炎球菌などがあります。

 

関節リウマチの診療で大切にしていること

近年、関節リウマチの薬物治療は著しく進歩してきました。そのため、一般的な治療を行ってもなかなか症状が改善しない患者さんには、新たな治療薬を提案することが可能になっています。しかし、関節リウマチ以外の病気を抱えている患者さんもいます。期待できる効果だけでなく、起こり得る副作用、他の病気との兼ね合いなどを考慮し、患者さんと話し合いながら、それぞれの方にとって適切な治療を考えていくことを大切にしていきたいと思っています。

また、当院の近隣には関節リウマチの診療に熱心に取り組んでいる整形外科の先生がたくさんいらっしゃいます。そのため、当院で生物学的製剤やJAK阻害薬を開始した後、症状が安定した患者さんは、地域の整形外科のクリニックへご紹介し、地域全体で関節リウマチの患者さんを見守っていけるように積極的な連携を行っています。

 

中窪先生からのメッセージ

関節リウマチは早期に診断し、早期に治療を開始することで、症状をコントロールできる可能性が高い病気です。関節の腫れや痛み、朝のこわばりなど気になる症状がある方は、医療機関を受診して相談されることをおすすめします。

近年、関節リウマチの治療はとても進歩してきています。これからも患者さんの全身状態をしっかり診ながら、適切な治療ができるように取り組んでいきたいと考えています。

提供：大正製薬株式会社